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第二十九話 第一王女ペルーサ
しおりを挟むマツダの説明が終わりサンドイッチでお腹を満たしたびす子と美留來は、リクライニングを倒し到着するまで少し仮眠を取る事にした。
ユイ:びす子様、もう少しで着陸準備に入りますのでシートベルトの着用をお願いします。
かなり深く眠ったしまったようだがユイがびす子の肩を優しく叩きながら耳元でちょうど良い声の大きさで起こしてくれた。
びす子:ふぁー、よく寝た。
美留來:うん、もう着くの?
びす子:そろそろ着陸準備だってさ。
そこへ眠気眼の梅男がヨタヨタ歩きでやって来た。
梅男:ちょっと寝過ぎちゃった。
美留來:お父さんまったく緊張感ないんだから!
梅男:ごめんごめん。
カイ:梅男様はこちらに。シートベルト着用をお願いします。
梅男:はい。
ユイ:びす子様のご要望で派手なお迎えは不必要との事でしたので、ペルーサ様が何人かの警護とお迎えする予定です。
びす子:ありがとう。名前もびす子って呼んでくれて嬉しいよ。
びす子の言葉にユイとカイが光栄ですとばかりににっこりと笑った。
ユイ:では、到着するまでしばらくお待ち下さい。
美留來:どんな国なんだろ。
美留來は早やる気持ちでいっぱいなのか窓ガラスにへばりつき外を見だした。
びす子:ペルーサの話だと馬を神格化してるとは聞いたよ。
美留來:へぇ。じゃ乗ったりしたらダメなのかな?
びす子:建国記念日に各国から集められた馬でレースが開催されるからその時だけは許されるみたい。
梅男:そのレースって見れるのかな?
びす子:どうだろ?今は予選とか言ってたような。爺ちゃんの誕生日に本レースとは聞いたよ?
梅男:予選でも良いから見てみたいな。マツダさんに後で聞いてみよ。
梅男は頭の中が競馬でいっぱいなのかぶつぶつと言いながらメモを取っていた。
美留來:私は館のお庭でのんびりお茶してみたい!
びす子:それは余裕っしょ。
そんな他愛も無い会話をしてる間に機体が地面に着陸し、少し滑走した後に停止するとポーンと音と共にマツダとユイとカイがやって来た。
マツダ:無事に到着しました。お荷物はこちらで館に運んでおきます。シートベルトを外しましたらあちらの出口からお降り下さい。
美留來:はーい。びす子、早くいこいこ。
びす子:うん。
美留來と手を繋ぎ外に出ると一気に空気が変わった。
今まで嗅いだ事のない異国の香りが一気に鼻から入って来た。
美留來も同じ事を思ったのか鼻をひくひくさせていた。
階段を降りる途中でペルーサが声かけて来た。
ペルーサ:ビスケット!やっと来たわね。ようこそ!パヨペウン国へ!
いつもびす子に会いに来てくれるペルーサはカジュアルな装いだったが、パヨペウン国では第一王女というのもあり華やかなドレスに身を包んでいた。
びす子:ペルーサ!会いたかった!出迎えてくれてありがと!
びす子は階段を駆け降りてペルーサに抱きつくと、ペルーサは優しく抱きしめ返して来た。
ペルーサ:可愛いビスケット。それでこちらの方は?
ペルーサはビスケットを抱きしめながら美留來と梅男に微笑んだ。
美留來:はじめまして。びす子の幼馴染で谷藤美留來と言います。
梅男:私は美留來の父で梅男といいます。蒔絵さんから頼まれて二人の付き添いで来ました。
ペルーサ:ようこそパヨペウン国へ。滞在期間は楽しんで下さいね。
美留來:はい。
びす子:そういえばペルーサは館に来ないの?
ペルーサ:行きたいのは山々なんだけど・・次々と来賓の方が来ていて相手をしなくてはならないの。次に会う時は式典の時になるかもしれないわ。
びす子:そっか・・。
びす子が寂しそうに下を向くとペルーサがびす子の顎に手を取り顔を上に向けた。
ペルーサ:そんな悲しい顔をしないで。マツダ達が観光案内してくれるわ。私も時間を見つけて館に会いに行くわ。
びす子:本当か?楽しみに待ってる。爺ちゃんにもよろしく伝えてな!
ペルーサ:分かったわ。それじゃマツダ、後は頼みましたよ。ビスケットまたね。
びす子:うん。
マツダ:ペルーサ様、かしこまりました。では、皆様こちらへ。
ペルーサが迎えの車に乗り込むとすぐに走り去ってしまった。
梅男:あのマツダさん、今やってるレースって見れますか?
マツダ:レース?ああ、式典で走る馬の予選会の事でしょうか?
梅男:そ、それです!
マツダ:見れなくもないですよ。ただ、館からレース場は遠いのでいつ行けるかは今日はお返事が出来ませんが。
梅男:そうですか・・。
梅男が残念そうにしているとカイが歩み寄って来た。
カイ:私で良ければ館に行く前にレース場にお連れしますが。
梅男:ほんとですか?!
マツダ:カイ、頼めるか。
カイ:はい、お任せ下さい。梅男様、私とあちらの車で参りましょう。
美留來:お父さん早く戻って来てよね。
美留來の言葉に「大丈夫、大丈夫」と梅男は言うと軽い足取りでカイとレース場へと移動してしまった。
びす子:おじさん楽しそうだな。ま、うちらはとりあえず館に行って休むか。
美留來:うん!
観光は後日でも楽しめるとびす子は思い、その日は美留來と一緒にそのまま館へ向かったのであった。
つづく
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