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リリー 6 (十四歳)
しおりを挟むこれといった悪事も行わず、平和で平凡な日々が過ぎ去っている。
相変わらず、過保護な両親は私をあまり外に出したがらない。それはきっと、両親の強権力によりお外は敵だらけなのだろうと推測する。なので勉学や運動もマンツーマンの専門の教師だったのだが、なぜかたまに、教師よりも緊張感のあるお兄さまーズのお貴族試験もあったりした。
作法、社交ダンス、乗馬、歴史などなど、数学的な計算が全く手付かずなのが不安だが、とりあえず超クールな兄と思春期にグレてしまった兄の試験をクリアしてるので、この世界の人としては何とかなるのではないかと考えている。
そうなのだ。
大きめお兄さまはそのまま超クールに成長し、小さめお兄さまはめんどくさい感じにグレてしまった。
ヤンデレ、いや、ヤングレ。
病んでるではなくの、ヤンキーがグレているという、正にそのまんまのヤングレるだ。
昔は可愛かったのに、今は首からアゴにかけておしゃれタトゥーが入っている。私のあざといぶりっこにでれたこともあるお兄さまだが、今はヤンキーブロックされている。さすがだね、悪役の血筋に染まっているね。
そして彼らは地味に暇なのか、大人の階段を昇るごとに、直接的にも間接的にも、私のやることなすことケチをつけるようになってしまった。
まあそのきっかけは、きっと木登り大事件から今に至るところかもしれないが。初めての木登りチャレンジで登頂制覇した六歳児への、身内からの風当たりが強くなったのが残念だ。
あれから行動制限が厳しくなったのは言うまでもない。私を優しく見守るだけの係員を遠ざけて、厳しい目をした兄達が近辺をうろつき始めたのも、そういえばこの頃からだった。
悪の中枢であるマイファミリー。彼らの仕事の大半は、おおよそ血と暴力にまみれたバイオレンスな世界だと想像する。彼らと敵対する派閥を白色とするのなら、こちらは真っ黒くろの漆黒をシンボルカラーに定着している。お世話になっている警備の面々も、もれなくみんな黒系衣装。
そんな中、お兄さまたちはアクセントに青や赤を取り入れて、銀色ラインで襟元を縁取っているパピーと差別化を図ろうとしている。
私はというと?
実はマミーと私は黒ではない。特に決まりはないので、毎日自由気ままにカラフルな装いで家の中をうろついている。
ふわふわー、フワフワー、
頭にお花も咲いてるよ!
泥に咲くたくましく美しい蓮ではない。
庭師のおじちゃんが植えたコスモスもどき。花壇のお花を頭に刺して、ふわふわワー。
何も考えてなさそうでしょ?
だけどこの私。心の中では毎日しっかり悪事を自主トレ鍛練している。
転生というチャンスを無駄にしたくはないからねっ。
さてヒロインでもなく、主要人物をまったり眺めるモブでもない。見た目に悪役、しかも強権力の令嬢である私だが、きっとこのまま我がままに健やかに育てば、いつか現れるヒロインやモブに取り囲まれてやられるに違いない。
だがこの転生先が、なんの物語なのかゲームなのかも分からない。
記憶では、私は高一で数限りなく恋愛ゲームをしていた。テレビを見ながらスマホで周回スキップをしつつ、片手に漫画を読んでいた。スチル回収を目的にしていたので、よほど好みのゲームや漫画以外はストーリーは頭に残っていない。
その中に、もしかするとこの世界があったのか、なかったのか。
だが一つ言えるのは、この手の見た目の強権力は、確実に悪役に間違いない。そして私にも思い当たるふしがあるからだ。
過去世の記憶で、私は悪役だったから。
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