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リリー25 (十六歳)
しおりを挟むそういえば、セオさんの姿を見かけていない。
私が休学して直ぐに、彼も長期休暇に入ったそうだ。そしてまだ、冬季になっても出勤出来ずにいる。
心配。
彼は今、教会に住んでいるそうなのだが、お見舞いに行くのは強く止められている。
(あれ……?)
昼食後に仲間たちとぼんやりしていたら、中庭にピアンちゃんの姿を発見した。
全然顔を見ていないし、護衛の皆様に尋ねても知らないって言われるだけだったピアンちゃん。
怪我で療養中に会えなかったのは寂しかったけど、お家の事で忙しいだけかと思っていたけれど…。
少し遠くてよく見えないが、彼女は深緑色の別の友人とお喋りしている。
そうだよね、友達は私だけじゃないよね。
ピアンちゃんの当たり前の交遊関係に、学院での友達が彼女しかいない私はちょっと落ち込んだ。
**
あれから数日経ったけど、主人公の姿は全く見ていない。
彼女とグーさんの噂話も聞かないし、どうなっているのだろう。
(ヒロインと婚約したとか進展あれば、もう少し騒がれたっていいはずなのに)
前と変わった事といえば、左側の白ウサギと出逢うたびにメンチ斬り合っている事と、お昼になると中庭で、ピアンちゃんがお友達と二人でいる姿をよく見かける様になった事。
ピアンちゃんは相変わらず私に会いに来てくれないし、こっちから深緑色の教室に乗り込む事は、仲間たちに駄目だと言われて行っていない。
なんか黒制服の私が深緑制服の教室に乗り込むと、ピアンちゃんの方が困るから、止めときなさいってセセンティア先輩に説明された。
別に規則とかではないけれど、ピアンちゃんに迷惑になるよって言われたら、お友達親密度が安定していない今、何だかんだ余計に行きづらい。
「こんな所で昼食を?」
また出た。お喋りな白ウサギ。
「はぁ!?」って雰囲気の仲間達をまぁまぁと落ち着かせて、奴が現れたら私が全面にしゃしゃり出る。
だってこいつ、左側の跡取りだって、エレクトくんが教えてくれてたの、後で思い出したんだよね。
てことは、うちの上の兄貴と同じ立場。
ならここは、同等権力を持つ、私が仲間たちを護らなければならないのよ。
「よければご一緒されます?」
うらやましければどうぞって、ご招待して差し上げた。
左側がお貴族様専用の個室でしか食事をしない事はわかっているの。大衆食堂というざわついたフードコートには簡単に馴染めない。注文の仕方もわからない、超初心者だってお見通しなんだからね。
「…………」
ウサギ、くるりと背を向け立ち去った。
勝利に内心でガッツポーズした私。
そうだよね、白ウサギが現れてからは、仲間たちもピリピリしているし、私も会う度にメンチ対決しているし、あいつにピアンちゃんが目をつけられない様に、やっぱり少し距離を置かないとね…。
再び中庭を見下ろすと、もうピアンちゃんとお友達の姿はなかった。
カタン。
「?」
「それで? 私を招待したからには、どんな持て成しをしてくれるんだ?」
マジかよ。セルフオーダー突破して、自分でドリンク注文出来たのかよ…。
まさかの白ウサギのカウンターに少しだけよろめいたけれど、持ち直した私は、なんとか引き分けでこのステージは終わらせたの。
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