だって私は、真の悪役なのだから。

wawa

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   互いに目を合わす事はない。黒の礼装を纏うステイ大公と白の礼装を身に纏うハーツ大公は、謁見の間に現れた王に同時に頭を下げた。
   
   「此度の登城の遅れは、セントーラ王国からの進軍に対する我が国の防衛戦、左右の大臣がスクラローサへの援軍を、快く思わないものと見る」

   「「?」」

   「建国当初からスクラローサを支える二柱、このような事になって残念だ」

   「何を?」
   「…!?」

   王の隣に現れた赤い外套の祭司が片手を上げると、衛兵が二人の大臣を取り囲む。

   「捕らえろ!」

   薄ら笑いに衛兵に命じた老いた祭司。国王は、大人しく連行される白と黒の大公の姿に安堵した。
   

 **


   「馬鹿な、何かの間違いだろう」

   北方の防衛戦会議の途中、不敬罪でリリーが軟禁を言い渡された事を知ったグランディアは、会議の終わりに国王の元へ急いだ。

   (リリーが奴隷に関する事で、国王陛下に直接意見するなんて…)

   突如起こった友好国セントーラの進撃の気配。それと同時に左右の領地が攻撃されるという領地戦争。その最中、思ってもいなかった内容で軟禁されたリリーの事を、放置して戦線に向かう事は出来なかった。

   「国王陛下に、取り次ぎを」

   衛兵に告げたが、「今はお会いになれません」と断られ、厳しく理由を問い質すと、そこで更に、謁見の間で行われた左右の大臣の更迭を知り驚愕した。

   「国王陛下に、お目通り願います!」

   初めて許可なく飛び込んだ謁見の間には、スクラローサ国王が一人で玉座に座っている。周囲には、従者も護衛も誰もいない。その違和感に、グランディアは一瞬立ち止まった。

   「北への準備は出来たか?」

   「お聞きしたい事がございます。アトワ、ダナー、左右の大臣を更迭したと聞きました」

   王族特有の金色の髪、グランディアによく似た優しげな眼差しの国王は、微笑みそれに頷いた。

   「彼らは、国家存亡の危機に遅刻した。我がスクラローサ王国の危機、北のセントーラからの進軍に対する支援を渋り、我が国を危機に陥れたのだ」

   危機と繰り返されたまだ開戦されていない北方戦は、緊急会議が始まった段階で他に到着していない遠方貴族も多くいる。聞いて直ぐに分かる言い掛かりに、グランディアは微笑む王の顔を怪訝に見た。

   「陛下、どういう事ですか? そんな事をすれば、各方面の貴族が、王家に不審を抱きます! 左右かれらは、建国から我が国を支えているのですよ? なのに何故、」

   「王太子グランディア」

   玉座から立ち上がった国王は、スッと両手を軽く広げた。

   「光は左手、闇は右手に。間違えてはいけない。善悪すべては、常にわたしの手の中にあるということを」

   「??」

   「だがどうだ? 実際、建国以前からエルローサ王家の両隣に位置し、我らが先祖グロードライトがエルローサ王家を倒し左右を従え和平を平定しても、左右かれらは、王と同じ立場でものを言う」

   「……陛下、我がスクラローサの周囲三ヵ国が、同時に動いているのです。左右の領土は、既に狼煙が上がっている。大公を拘束している場合ではありません」

   「臣下は、口を挟まず、王に頭を下げる事のみが仕事なのだ」

   「?」

   「王太子よ、歴代の王の情けない姿を歴史で学んできたであろう? 常に天秤の傾きのみを注視して、雁字搦めに動けない天秤そのもののものたちの姿を」

   「父上、」

   「だからほんの少しだけ、左右かれらの力を削ぐ事にした」

   「!?」

   「そうすれば、もう天秤になる事はないのだ」

   「戦争下に両大公の拘束は、ほんの少しではすみません! この様な事を行えば、左右の勢力をただ弱め、それはスクラローサ国の国力を下げる事に他なりません!」

   広げられたままの両手、それは何も掴むことなく下ろされた。

   「王太子、疾く北の戦線へ行き、役目を果たしてくるがよい」

   「国王陛下!!」

   それ以上の言葉は無い。グランディアに背をむけた王は、玉座を残して退出した。  

   
 **


   「父上が、城で拘束された」

   グレインフェルドが王都を発って直ぐに、その報せはメルヴィウスの元に届いた。

   「三国同時領地戦、それに姫様の不敬罪に続く閣下の更迭ですか。これは確実に、王家の策略ですね」

   「そして境会アンセーマのな。だがダナーで地中の触媒を破壊した事で、奴らの頭上の三叉、その一つの刃は消えた」

   スクラローサ王国を覆う結界とされる魔法陣は、護りではなく不自然な魔力の滞留であるとファンは言った。

   「何を企んでいるのか分からない、境会アンセーマが溜め込む不自然な魔力。その発動元になる物は、これで上手くつかえないだろう」

   境会の大聖堂上空、赤く輝く三叉の矛の魔法紋の一刃は、今は完全に欠けている。

   「パイオドとデオローダはどうなってる?」

   「第一陣は東国境線で衝突し、膠着状態のまま」

   セセンティアはパイオドの戦線に加わったが、ナーラはデオローダに戻らずリリーの守護として残っている。十枝はそれぞれの役割に、王都に残る者と領地に戻る者がいた。

   グレインフェルドに代わり王都を任されたメルヴィウス。会議場で飛び交う連絡鳥に、地上でも各地から伝令がやって来る。そこに、ファンが飛び込んできた。

   「メルヴィウス様! あの音です!!」

   蒼白に、血相を変えている。何事かとメルヴィウスを始め騎士たちは少年を迎え入れたが、ファンは窓の外、空を指差した。
   
   
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