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告白のブルース
しおりを挟む私が中学生の頃の話──。
いきなり、同じクラスのOさんから声をかけられた。
「Jくんを、ゲタ箱まで呼んできてくれる?」と。
私は直感した。「ああ、これは今からJくんに告るんだな」と。
当時は、携帯電話を持っている中学生なんて、いなかったものだから、ケータイメールで、
「大好きだから、付き合って下さい(はぁと)」
なんてことは、不可能に近かった。なので告白というのは、呼び出して手紙を渡すか、直接告るという手段しかなかったのである。
そして、その呼び出し場所の定番とされるものが、校舎裏だったり、ゲタ箱だったりした。だから女子から、その定番の場所に呼び出された男子は、必然的に「告られる」と思ってしまうのである。
これから告られるJくんというのは、私の友達である。中学生にしては背が高く、ルックスも良い。だが、女子と付き合った経験はナッスィングであった。
私はOさんから言われた通り、Jくんをゲタ箱まで呼び出した。最初はOさんが告るのかと思っていたのだが、この時Oさんの隣でモジモジしている女子がいるのを、私は発見した。
彼女はOさんの友達のKさん。
実はKさんは、中学生のわりには、乳がデカいので評判の女子だった。我々が陰でこっそりとKさんのことを、巨乳ホルスタイン女と呼んでいたのは、内緒の話である。
そして私が、ゲタ箱の陰で見守る中、Jくんに告白を果たした、巨乳ホルスタイン女は、めでたくJくんと付き合うこととなったのだ。
実はJくんは、普段から巨乳ホルスタイン女と仲が良かったのである。そう、もともと付き合う可能性があったのだ。
今回は、巨乳ホルスタイン女の方から告ってきたので、Jくんは付き合うことを決めたのだ。
では、私がなぜ、このような話をしたかというと、理想的な告白の仕方の良い例であるからだ。
Jくんと巨乳ホルスタイン女が、そんなに仲が良くない。または、あまり面識すらなかった場合、Jくんは、巨乳ホルスタイン女と「付き合おう」と、思っただろうか。
「巨乳だから付き合うんじゃねえの?」という、巨乳フェチの意見は、度外視して考えて貰いたい。
答えは“NO”だ。
普通、よく知らない人から、いきなり告られて「うん! 俺も好きだよ。付き合おう(はぁと)」なんてことにはならない。
告白というのは、その相手との、ある程度の交流を経てから、するものである。
告白するには勇気がいる。いくら仲が良いからといっても、相手が自分のことを、異性として意識してくれてるかどうかまでは、わからないからである。それをはっきりさせる為に、人は勇気を振り絞って告白するのだ。
反対に、ろくに話したこともなく、彼氏彼女がいるかどうかも確認せずに、告白するというのは、いかがなものかと私は思う。
「フラれるのは分かっている。でも、好きだから告白するんだ!」
と、無謀にも、付き合える可能性がゼロに等しいにもかかわらず、当たって砕けろの精神で、見事に粉砕してしまう人も、少なからず存在するのだ。
そんなアナタにはっきり言おう。告白される身にもなってくれ。
アナタの周りでは「すげぇな!」とか「よく告白した!」とか、アナタの勇気を讃える声が聞かれるだろう。だが、告白された側からしてみれば、迷惑極まりない話なのである。
もしかしたら、アナタが愛して止まない人が、どうやってアナタを傷つけないように断ろうかと、眠れぬ夜を過ごしているかもしれないのだ。
「でも、ひょっとしたら、付き合えるかもしれないじゃない?」とか、
「自分からみすみす、チャンスを潰してるじゃん!」との意見もあるだろう。
確かに、可能性がゼロでない以上、諦めてはいけないのかもしれない。
では、そう思うアナタは、今から好きな芸能人に「好きです。付き合って下さい」と、言ってみてはどうだろう。
え……言えない? なぜだ。
可能性はゼロではない。
少しでも可能性があれば、それに賭けてみる方がいいのではなかったのか。
もしかしたら、その好きな芸能人も、アナタのことを気に入って、付き合ってくれるかもしれない。
今度は私が「自分からみすみす、チャンスを潰してはいけないぞ!」とのエールを送ろうではないか。
私は、告白するのが素晴らしいとは思わない。告白するために、絶え間無い努力を惜しまずに、その相手との交流を深めていくことが、素晴らしいと思っている。
もし仮にだ、私の好きな芸能人が、突然、私の元を訪ねてきて、
「好きです。付き合って下さい」
と、言ってたとしても、私は一晩、寝ずに悩んで、丁重にお断りさせて頂くだろう。
だが、その芸能人が、
「アナタのことが知りたいから、とりあえずお友達になって下さい」
と、言ってきたとしたら、私は喜んでお友達になろう。
そして、それがきっかけで、お付き合いすることになったら、それで良いのではないか。
だってその芸能人は、絶え間無い努力を惜しまずに、その相手との交流を深めていくことをしようと頑張ったのだから。
「芸能人が訪ねてくるなんて、ありえない」などとは、言わないで貰いたい。
可能性はゼロではないのだから。
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