千文字小説

レン太郎

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ゆるしてちょんまげ

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 ちょんまげにしてみた。
 広く剃り上がった前額。頭頂部で折り返し、すっと前に伸びたまげ。完璧だ。
 どっからどう見ても立派なちょんまげが、俺の髪をかたどっている。時代劇で見られるようなかつらとは違い、超リアルである。
 俺がなぜ、ちょんまげにしたかというと、それには訳がある。
 実は俺はハゲているのだ。
 二十代前半の頃より、前額の毛根が徐々に後退を始め、三十代を迎える頃には、もう自毛じゃカバーしきれない程のハゲになってしまっていた。
 このハゲのお陰で、当然のことながら結婚はおろか彼女もできず。
 俺は、隔世遺伝という名の迷宮に放り出された自分の運命を呪っていた。
 だが、いつまでもクヨクヨ悩んでたってしょうがない。ハゲているのなら、この忌ま忌ましいハゲをフルに活用できる髪型にしようと考えたのだ。我ながらポジティブだと思う。
 そしてたどり着いた答えが、この『ザ・ちょんまげ』である。
 問題のハゲてる部分をきれいに剃り落とし、豊かな部分の毛をひとまとめにして、ちょこんとデコレーション。するとあら不思議。ちょんまげの完成である。
 これでもう、誰も俺のことを「ハゲ」などと指差したりはしないし「ハゲの横」などと目印にされることもない。それどころか、
「あ、お侍さんだ」
 と尊敬の眼差しを向られることだろう。

 今日は日曜日。会社は休みなので、とりあえず俺はこの髪型で出掛けることにした。
 多少の躊躇はあったが、ハゲを克服したという自尊心が俺を後押し。
 服は、成人式の時に着た羽織り袴を着用。刀の代わりに傘を差し、気分はまるで江戸時代。
 そして俺は、ちょんまげで都内を練り歩いた。渋谷、新宿、秋葉原。当然のことながら、みんな俺のちょんまげにくぎづけになっている。
 だが、ハゲてる時に寄せられていた視線とは違う。誰も、俺の事をハゲだなんて思ってやしない。きっと、お侍さんだと思っている。

 突然、女子高生らに声を掛けられ、一緒に写メを撮った。実にいい気分だ。
 さらにはテレビの街頭インタビューで、
「日本人ならばちょんまげにしなさい」
 と、カメラに向かって叫んできた。
 政治に関するインタビューだったようだが、そんなことはどうでもいい。
 もし、インタビュー映像が日本全国に流れることになれば、俺は一躍時の人。人気者になり、テレビやCMに引っ張り凧。
 それを考えたら、このままちょんまげを続けるべきだと思った。

 明日、会社に行ったら上司から怒られるだろう。テレビを見た田舎の両親は泣きはしないだろうか。
 そうなったら素直に謝罪しよう。

 その時の言葉はもちろん、
「ゆるして……
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