ウォルヴァンシアの王兄姫~淡き蕾は愛しき人の想いと共に花ひらく~

古都助(幸織)

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第二章『恋蕾』~黒竜と銀狼・その想いの名は~

揺れ動く想い

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※最初と最後に、ヒロイン幸希視点。
 途中に、ウォルヴァンシア王宮医師、ルイヴェルの視点が入ります。

 ――Side 幸希

「「「かい~ん!! あれ、みた~い!!」」」

 カインさん達と一緒にやって来たウォルヴァンシアの城下町。
 時折訪れる事はあったけれど、まだその道筋や、どこに何があるのかは覚えきれていない。
 けれど、私よりも後にウォルヴァンシアへと訪れたはずのカインさんは、いつの間に城下町の道筋を覚えてしまったのか、説明の言葉まで交えて案内をしてくれている。
 だけど、城下町の賑わいに気分が湧き立っているのか、三つ子ちゃん達は私達の足元を駆け抜けて、先に行こうとしてしまう。

「だから勝手に行くなって言ってんだろ。もし迷子になっても、迎えに行ってやらねぇからな?」

「「「かい~ん!! ゆきちゃ~ん!! おかしおかし~!!」」」

「って、お前ら本当に自由すぎんだろ!! こら!! ちょっと待てぇえええ!!」」」

 視線の先にある、美味しそうな匂いの漂ってくるお店らしき建物に駆け出して行った三つ子ちゃん達を、カインさんが肩を怒らせてドスドスと追いかけて行く。
 なんてことはない、平穏で微笑ましい光景。
 だけど、禁呪の件があったからか、私にはその光景が、とても愛おしく大切なものに思えた。
 城下町を満たす人々の楽しげな笑い声、他愛のない談笑の気配、遠くの方から聞こえてくる、少し興奮したような賑わいの漣(さざなみ)。
 もし、禁呪を野放しにしていたら、あそこで皆死んでしまうような事があったら……、今私が感じているこの平和な光景は、ありえないものになっていたのだろう。
 それを思うと、何だか胸の奥が……。

「おい!! 何やってんだよ!! 三つ子よりも先に迷子になる気か!?」

「え? あ、カインさん。ごめんなさい、ちょっと、ぼーっとしてました。三つ子ちゃん達は?」

「はぁ……。こんな人の多い真っ只中で考え事なんかすんな。それと、三つ子達はとっくに店ん中だ。お前もさっさと来いよ」

 くいっと右手の親指で背後のお店を示したカインさんは、わざわざ心配して戻って来てくれたらしい。謝る私に呆れの溜息を吐いて、三つ子ちゃん達を叱る時と同じように私の頭を軽くポンと叩いたかと思うと、その後に腕を痛くない程度に掴み、カインさんは前を歩き出した。
 やっぱり、面倒見が良い。前を行く広い背中の頼もしさに、何だか三つ子ちゃん達と同じように、自分がカインさんの妹にでもなったかのような錯覚を覚えてしまう。
 私達は真っ直ぐに道を歩き、やがて一軒のお店に足を踏み入れると、すでに店内ではしゃぎまわっていた三つ子ちゃん達の姿を見つけた。
 甘い香りの漂う店内は、カラフルな色合いで彩られており、真ん中辺りの天井から細い鎖で吊るされた大きな丸形のカゴの中には、山のように沢山のクッキーが盛られている。
 それは、何カ所かに同じ鎖で別のお菓子がカゴの中に盛られており、その真下では、クッキー以外のキャンディーやビスケット、ケーキにタルトと、数多くの甘いお菓子が勢ぞろいしていた。
 まさに、お菓子の楽園。三つ子ちゃん達がはしゃぐのも納得出来る。
 
「「「おいしそう~!! かい~ん!! おかし、ほしい~!!」」」

 ハートや星型のクッキーの盛られたカゴを指さして、おねだりポーズと愛らしい眼差しで、三つ子ちゃん達はカインさんに振り向いた。
 しかし……、どうにも店内に入ってからカインさんの様子がおかしい。
 口元を押さえて、お菓子の方を見ないように下を向いている。
 
「う……、お前ら、こんな甘ぇモン、よく買おうと思うよな」

「カインさん……、甘い物、嫌い、なんですか?」

「いや、単品や甘すぎねぇモンなら問題ねぇんだが……、この店、ヤバすぎだろ」

 確かに……、甘い匂いが充満している上、このお菓子の楽園過ぎる光景は、好きでない人には辛いかもしれない。
 私はカインさんの傍により、前に倒れそうになっている身体を支えると、一度外に出ませんかと提案した。けれど、それを引き止めるように三つ子ちゃん達が寄ってきて……。

「「「かい~ん!! おかしぃ~……」」」

「うぅっ……、わ、わかった。か、買ってやる。買ってやるから、さっさと選んで来いっ」

「「「わ~い!! かいん、ありがとう~!!」」」

 今にも限界を迎えてしまいそうなカインさんが涙目になってそう言い放つと、三つ子ちゃん達は購入するお菓子を専用の小さなカゴに入れ始めに走った。
 あぁ……、カゴいっぱいに甘い物を。王宮に戻ったらレイフィード叔父さんに怒られるんじゃないかなぁ。叔父さん、結構教育や食生活にも厳しいみたいだし。

「ユキ、お前も好きなモン選べ。会計は俺がやっとくからよ」

「いえ、私は……」

「甘いモン、嫌いなのか? 王宮じゃ結構食べてたような記憶があるが」

「結構、って……。私はそんなに大食いじゃありませんよ? 甘い物は確かに好きですけど、この光景を見ているだけでお腹いっぱいというか」

 城下町には何軒も同じ系統のお店がある事は聞いていたけれど、このお店は想像以上にお菓子の楽園過ぎた。胸の奥まで鷲掴んできそうな甘い匂いと、カラフル過ぎる目の前の光景。
 もうそれを見ているだけで、私はお腹いっぱいになってしまったのだ。
 というか、……カインさんと同じように、胸やけを起こしそうになっているのが本音だ。

「ふぅん……。じゃあ、他の店に行ったら、欲しいモン、考えとけよ」

「え?」

「なんか……、ひとつくらいあんだろ?」

 カインさん? 買い物を終えてその横を通ろうとした女性を避け、カインさんがまたこちらを向いた。お菓子が欲しくないなら、装飾品の類や服なんかどうだ? と、小声で問いかけてくる。
 急にどうしたのだろうか? 不思議がる私の手を借りて、少しだけ背筋を正すカインさんに目を瞬いていると、再度促す声が。

「今日は俺が誘ったわけだしな。欲しいモンがあったら遠慮くなく言えよ」

「いえ、そこまでして貰う理由は……」

「俺が良いって言ってんだから、遠慮なんかすんな。それに、出掛けた記念にもなるだろ?」

「カインさん……」

 それでも嫌か? と、少しだけ寂しそうな声音で問いかけられた私は、ゆっくりと首を横に振って応える。

「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きますね」

「おう。俺の懐の広さ、舐めんなよ」

「ふふ、はい」

 私が承諾の音を伝えるのと同時に、カインさんが少年のように微笑んだ。
 暇潰しに付き合えと言っていたけれど、私にとって想い出のひとつとなるように、カインさんなりに色々と気を遣ってくれているらしい。
 心の奥底が、ほんのりと温かくなるのを感じた私は、また倒れそうになっているその身体を支えて、同じように微笑みを返すのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ――Side ルイヴェル

「皇子さあああああん!! 姫ちゃんに支えられてオイシイ思いしてんじゃねぇえええ!!」

「落ち着いてください、団長。そんな大声を出しては、ユキ姫様達に気付かれてしまいます」

 ――まったくだ。
 胸やけを起こす光景を窓の向こうに見せている菓子店を少し離れた場所に見据え、俺達は近くの路地に潜んでいた。
 騎士団の団長であるルディーが前へと身を乗り出し、今にも駆け出して行きそうな勢いを醸し出しているが、それを副団長補佐官であるロゼリアが冷静な顔で押し留めている。
 本来であれば、普通に仕事の時間なんだがな……。
 この二人は、王宮内に残っている部隊長の一部に命じて、見事に仕事を放り出してきた。
 重要事があるのなら、レイフィード陛下も目を瞑るだろうが……、バレない事を祈るばかりだな。
 俺とセレス姉さんは、その背後から菓子店を静かに見つめた。

「なかなかに、打ち解けている雰囲気がするわよね」

「アレクとは違い、カインはユキとの間に余計な壁がないからな……。友人的な感覚で親しみやすいんだろう」

「ぬぉおおおっ、だからっ、姫ちゃんも何で皇子さんにあんな可愛い笑顔向けてんだよ!! アレクが見たら、マジで死ぬっ、絶対死ぬっ!!」

「落ち着け……」

 本当に、普段の冷静さはどこにいったんだろうな? この騎士団長は……。
 まぁ、アレクが暴走した際の危険性を心配しての大げさな反応なんだろうが、確かに、近いな。
 見たところ、菓子店の迫力に胸やけを起こしたカインが体調を崩しかけているといった様子なんだろうが、それにしては、ユキとの距離が、近い。

「ルイヴェル……、お店に変なもの撃ち込んじゃ駄目よ? 被害の賠償がレイフィード陛下に行ってしまうわ」

「わかっている。昔の俺なら迷わず撃ち込んだだろうが、今の俺にその心配はない。保護者として、最後までしっかりと見守ってやろう」

「本当に信用出来るのかしら? ……はぁ」

 セレス姉さんは本当に心配性だな。
 ロゼリアの方は、ルディーを押さえつつ、俺の方に期待の眼差しを向けているというのに。
 大体、こんな人目のある大通りの只中で術を撃ち込めば、すぐにでもレイフィード陛下の知るところとなってしまうだろう。菓子店とその周囲の被害を考えても、馬鹿な真似をする気はない。
 それに、あからさまな真似をしなければ、俺も大目に見る気ではいるしな。

「あ~、姫ちゃんと皇子さんが楽しそうにっ。はぁ、アレクを騎士団に縛り付けといて正解だったな」

「本当に。部隊長達が外に出ないように見張っているはずですが、こうしてユキ姫様達の様子を見ていると……、一日で色々な事が進んでしまいそうで、正直胃が痛く感じます」

「お前達二人は心配のし過ぎだ。確かにカインは自身の感情に素直な奴だが、一気に事を押し進める真似はしないだろう。やれば、ユキが困るだろうからな」

 成熟期を迎えて大人の姿をしているカインとは違い、ユキは少女期だ。
 育った世界では、成人を迎えているとは言っても、このエリュセードでは違う。
 その身体も、そして、その心も、幼い部分を強く抱くが故に、迷いやすく悩みやすい。
 
(同時に、少女期の娘は……、恋心の開花が酷く遅い)

 個人差はあるが、異性から向けられる恋情に、酷く臆病だとも言えるだろう。
 もし、カインがその想いを伝えても、すぐに答えが出る事はない。
 さらに言えば、二人……、アレクとカインに想いを向けられていると知ったら、ユキは間違いなく、不安定な状態に入る。
 
「出来れば……、成熟期を迎えるまでやめておけと言いたいところなんだがな」

 呟いた独り言は、あまりに小さく吐息交じりのものだった為か、三人の許に確かな音となって届く事はなかった。
 視線を前に戻せば、セレス姉さんまで、飛び出しそうになっているルディーを後ろから引き止めにかかっている。
 恐らく、ルディーとしては、ユキが少女期であろうとも、万が一の危惧を抱いているのだろう。
 少女期の娘に有効なアプローチのひとつとして、性的な接触を仕掛けられでもしたら、アレクにとって不利になると、そう案じている事が丸わかりだ。
 人間の娘相手にも、性的な接触はある意味有効だろうが、一部の他種族の少女期は違う。
 その影響が色濃く出てしまうのだ。勿論、誰にでも、という訳ではないが……。
 嫌悪している相手からであれば、相当の憎悪の情を抱く。
 しかし、嫌悪の情がなく、親しみのある相手だった場合は……。

(まぁ、ハーフであるユキに、それがどこまで有効かはわからないがな)

 以前に、カインとの出会いの際に負った心の傷は、王宮の者達の気遣いと、カイン自身との交流により、今では心配する必要もないみたいだが……。
 堅物のアレクと、自由奔放なカイン……、二人の想いを知った時、あれはどんな顔をするんだろうな。

「あ!! 姫ちゃんが出て来たぞ!!」

「どうやら、大広場の方に向かうご様子ですね。追いかけましょう」

「ルディー、ロゼリア……、もうそっとしておいた方がいいんじゃないかしら?」

 菓子店から出て来たユキ達の姿を視界に映し、その後を追って行くルディー達に、俺とセレス姉さんはそれぞれに違う意味を含んだ息を吐く。
 どう考えても、三つ子が傍にいる限り、何の進展もないような気がするぞ。
 だが、馬鹿真面目なアレクの心を大切にしようと思って行動する騎士団の二人の姿を見ていると、知らず俺の心は和んでしまう。
 自分の為に心を尽くしてくれる者達がいるというのは、幸せな事だな? アレク。
 
「セレス姉さん、言っても無駄だ。俺達も最後まで付き合うとしよう」

「もう……。本当にエルヴァナの鳥の翼で打ち据えられても知らないわよ」

「大切な幼馴染の為らしいからな。俺達も心を尽くすとしよう」

 路地から抜け出し、先を走っていくルディー達の後ろ姿を見つめる。
 セレス姉さんとしては、色々と真面目に考えすぎているんだろうが、こんな一日も悪くはない。
 あれが、……ユキが、俺達の許に戻って来た大切な愛し子が、早足でどこかに旅立ってしまわないように。遥か頭上で微笑む光が、夕闇に染まる……、その時まで、見守ってみるのも、悪くない。
 俺はセレス姉さんの手を引いて、大通りの先へと歩みを進める事にした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ――Side 幸希

「カインさん、ちょっと混雑しているようなので、三つ子ちゃん達を抱っこして行きましょう」

「おう、そうだな。ほら、お前ら、こっち来い」

「「「は~い!!」」」

 私の腕には、クルクルとした巻き毛の愛らしいアシェル君。
 カインさんの腕には、エルディム君とユゼル君。
 三つ子ちゃん達をしっかりと抱え、大広場の中を歩き始める。
 中央の方では、何か催し物が開かれているようだけど、あちらに行くと、流石に人の波が濃すぎる。私達は人混みを潜り抜け、大広場の片隅へと辿り着いた。
 
「にゃぁ~」

 ふぅ、と、落ち着けるスペースにやって来た私達の耳に届いた、可愛らしい声。
 そちらに視線を流してみると、柵を作った向こう側に、見た事もない小さな動物達がちょこんと座っていた。その中でも、私達に向かって嬉しそうに鳴いているのは、猫に似た動物。
 他の子達とは違って、一匹だけライオンの子供サイズをしている。
 くりっとした大きな丸い青の瞳。真っ白な体躯の後ろには、尻尾が三本。
 前足にはシャランと綺麗な音が零れる装飾品が着けられてある。
 
「「「にゃんにゃん~!!」」」

 その姿に瞳を輝かせた三つ子ちゃん達が、腕の中で暴れ出してしまう。
 そっと地面に下ろしてあげると、迷わずに猫ちゃんに似た動物の前に隔たっている柵へと駆け寄って行った。その横には、木の椅子に腰かけて笑顔を浮かべている店主らしき男性がいる。

「いらっしゃ~い!! 可愛い子がいっぱいだよ~!! 噛んだりしないよ~!! 気に入ったら飼い主になってくれると嬉しいな~!!」

「ニャーフィンか」

「カインさん、この動物の事、知ってるんですか?」

 愛想の良い男性と挨拶を交わしていると、私の後ろに立ったカインさんが呟いた。
 その真紅の瞳は、柵の向こうで愛らしく鳴き声をあげる猫ちゃんに似た動物に向いている。
 動物達を管理している男性が真ん中の柵を開き、三つ子ちゃん達を中に通す。

「ニャーフィンってのは、今はこんなモンだが、大切に育てれば、もっとでっかくなる。そうなれば、馬の代わりに使う事も出来るんだぜ」

「へぇ……、馬の代わりに」

 三つ子ちゃん達とじゃれ合っているニャーフィンは、大きくなると、人をその背に乗せて旅をする事も可能らしく、他にも特殊な能力を兼ね備えているらしい。

「にゃぁ~ん、にゃぁっ」

「「「にゃんにゃん~!!」」」

 店主の男性が言っていた通り、ニャーフィンは三つ子ちゃん達を警戒したり噛んだりする様子は見せず、他の動物達までじゃれ合いに参加してしまっている。
 あぁ……、今ここに撮影用の何かがあれば、ばっちり素敵な想い出のひとつとして形に残すというのに。生憎と、私の手元には何もない。
 残念過ぎる思いと共に項垂れていると、その時、私の横にやって来た影が、不思議な音を鳴らした。

「カインさん……、何をやってるんですか」

「ん~? 『記録』を残そうと思ってな。こんなに楽しそうにしてんだ。勿体ねぇだろ?」

 三つ子ちゃん達の方を向いて腰を屈めているカインさんの周りには、幾つかの紋様が浮かんでいる魔術の陣が表れていた。
 素早く浮遊しながら、三つ子ちゃん達の周りへと飛んでいく。何、これ?
 カインさんが手元に浮かんだ長方形の映像らしき物に指先を添え、何かをやっている。

「あの、記録、って……」

「あぁ、記録(シャルフォニア)って言ってな。術の一種なんだが、これを発動させると、自分の目と連動して、見ているモンを文字通り、記録に残せる便利な術なんだよ」

 つまり、役割的には撮影用の機械と同じもの、って事、かな?
 さらに聞いてみると、今発動させている術は、目の前の光景を写真のような存在として残せるけれど、他にも、動画として残せる術もあるらしい。
 
「術者の魔力領域って所に記録しとく事が出来るんだが、それを紙とかそういう物に移して、形として残す事も出来るんだぜ」

「便利ですね……。あとで私にも三つ子ちゃん達の、えーと、記録(シャルフォニア)を何枚か貰えますか?」

「おう、いいぜ。よっと、俺達も中に入らせて貰おうぜ」

「え?」

 中で楽しんでいる三つ子ちゃん達の許に柵を越えて入り込んだカインさんが、私の手を引いて中に入らせようとしてくる。
 確かに、スペース的には広いけれど、いいのかな?
 ちらりと店主さんに視線を向けると、にこっと承諾の笑みが向けられた。
 どうぞうどうぞと柵が開き、私はゆっくりとその中に入っていく。

「「「ゆきちゃ~ん、にゃんにゃんかわいいよ~!!」」」

「にゃぁ~!」

 膝を着いた私の許に、もふもふのニャーフィンちゃんが歩み寄ってくる。
 むにっと肉球のある前足を膝にかけ、乗りあがってきたので、その身体をしっかりと受け止めた。
 綺麗な青の瞳。心を鷲掴んでくるかのような、この柔らかで、もっふもふの感触。

「可愛い~っ」

「にゃあ~っ。にゃうんっ」

 あぁ、異世界にきて、本当に良かった!!
 アレクさんの毛並みの感触も素晴らしいけれど、ニャーフィンちゃんの柔らかさも堪らない。
 私はもふもふの感触を肌に感じながら、少しザラリとした分厚い舌に頬を舐められる。

「にゃうぅぅっ」

「はぁ……、連れて帰っちゃ駄目ですかね。って、ん? カイン、さん?」

 夢のような心地と共にニャーフィンちゃんと戯れていると、何故か前方から視線が……。
 カインさんが、私の方をニヤリとした表情で見つめながら、あの術を向けている。
 記録(シャルフィニア)だ。今度は三つ子ちゃんじゃなくて、私の姿を映し撮っている。

「か、カインさん、何やってるんですか!!」

「俺の事は気にせず好きにしてろよ。俺がしっかりと、記録に残してやるからよ」

「い、いいです!! 私のは撮らないでいいですから!!」

 ニャーフィンちゃんを前に、緩み切った私の表情を焼き付けるように、鈴のような音が鳴り響く。
 術がその効果を発揮している音だ。
恥ずかしくて、カインさんにやめてほしいと頼んでも、意地悪な笑みと共に続行されてしまう。
 
「や、やめてくださいっ」

「いいじゃねぇか。意外に可愛く撮れてるぜ?」

「うぅっ、カインさんの馬鹿~!!」

 逃げたいけれど、私の頬に心地よい肉球をぐにっと押し付けてくるニャーフィンちゃんが、あまりに可愛すぎてっ。
 傍に寄ってくる他の動物達や三つ子ちゃん達に囲まれてしまった私は、それから暫くの間、カインさんの記録作業に付き合わされる羽目になったのだった。
 うぅ……、変な風に映ってなければいいんだけどっ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 可愛い動物達の許を後にした私達は、大広場の賑わいと共に立ち並んでいる出店を一通り見てまわった後、隅にある木造りのベンチに腰を下ろした。
 大変な事もあったけれど、とても楽しい時間を過ごせたように思う。
 少し疲れてしまった私とは真逆に、三つ子ちゃん達はカインさんの傍に座ってはしゃいでいる。

「カインさん、今日はありがとうございました」

「ん? 別に礼なんかいらねぇよ。俺が好きで連れ出したんだからな」

「でも、色々と気遣ってくれていたでしょう? 私や三つ子ちゃん達が楽しめるように、いっぱい案内をしてくれたじゃないですか」

「それも、どうって事ねぇよ。……俺が、お前の喜ぶ顔を見たかっただけなんだしな」

「え?」

 三つ子ちゃん達の頭を撫でながら、出店で買ったキャンディーを与えてベンチに座らせると、カインさんは大人しくなった子供達に背を向けて、私に向き直った。
 その真紅の双眸には、私に対する申し訳なさと、別の何かが揺れているような気がする。
 カインさんは、膝の上においていた私の両手に、そっと温もりを重ねてきた。

「他の奴らにもだが、禁呪の件では、お前にも色々と迷惑をかけちまったしな……。その礼ってわけでもねぇが、お前が楽しんでくれたようで良かった」

「そんな……。禁呪の件で大変な思いをしたのはカインさんの方じゃありませんかっ。私なんて、苦しんでいるカインさんを、見ているだけしか出来なくて……」

 それに、禁呪の縛めからカインさんを解き放とうとしたのは、私以外の皆さんだ。
 私に対して申し訳なさを感じる必要なんて……。
 
「無自覚、ってのが、お前らしいんだけどな。けどよ、俺は、お前に助けられた、ってそう思ってる。禁呪の件だけでなく、色々と、な」

「色々と、ですか?」

「あぁ。色々と、だ。本当に有難うな」

 いつもの余裕と意地悪な雰囲気が交じった笑みではなく、素直な感謝の気持ちが表れたものだった。カインさんは私の手に左手のひらを重ねたまま、右手を持ち上げて私の黒い髪をひと房手に取ってみせると……。

「か、カイン、さんっ?」

 瞼を閉じたカインさんが、そっと私の髪に口づける。
 それは、ただ触れているだけではなく、どこか、神聖な行為のようにも思えて……。
 ゆっくりと真紅の瞳を現したカインさんが私を上目遣いに見上げ、くすりと微笑む。

「この国で得られた……、俺の、俺だけの、光」

「え?」

「見つけちまったら……、もう、あとは掴むしかねぇよな?」

 私の視線を捉え、意味深に熱を湛えた真紅の双眸が徐々に……、近づいてくる。
 ぐっと距離を詰められて、唇が触れ合ってしまうのではないかと思うくらいの位置で、カインさんが動きを止めた。
 切なげに揺れる眼差しが、私の顎を捉える。

「なぁ……、お前にとって俺は、どんな存在だ?」

「ど、どんな、と言われても……。さ、最初は大嫌いでしたけど、今は、大切な友人のような存在だと、そう、感じています」

「つまり、俺の事は嫌いじゃねぇ、って事、だよな?」

「は、はい」

 ただでさえ、男女を問わず強く惹きつけそうな魔性の美貌の持ち主だというのに、この至近距離は心臓に悪すぎる。ドクドクと加速していく鼓動の音に戸惑いながら、私はこくりと頷いた。
 出会いは最悪だったけれど、今は違う。
 意地悪な物言いで私をからかう事もあるけれど、カインさんは、悪い人じゃない。
 本当は、心の優しい、不器用な人……。
 それを知ってしまったから、カインさんという存在に触れてしまったから、私の心は徐々に彼を受け入れるようになっていった。
 アレクさんやレイル君、ルディーさんやロゼリアさん達に感じるのと同じように、今ではカインさんも、私の大切な友人の一人だ。
 
「じゃあ……、もうひとつ、聞くぞ」

「は、はい」

「お前が、俺の事を友人だって、嫌いじゃねぇって……、そう、言ってくれるなら、その先を求めても、いいか?」

「え……」

 少しだけ掠れた、色香の滲む低い声音に……、その、言葉に……、私の思考が真っ白に染まる。
 今……、カインさんは、なんて言ったの? 
 友人のその先、それは、えっと……、ある予感を胸に抱いた私は、その場を誤魔化すように口を開いた。

「私の……、親友になりたいって事、ですか?」

「現実逃避すんな。いいか? 俺がお前に伝えたいのは、叶えて貰いたい、唯ひとつの願いは」

 視線を逸らして逃げ場を探そうとする私の頬を両手に包み込んできたカインさんが、真紅の双眸に間違えようのない意志を揺らめかせ、視線と共に私の存在を抱き締めようとしてくる。
 こんな風に見つめられたら、どんなに鈍感な女の子だって、気付いてしまうだろう。
 だけど、私の心は酷く臆病になって、絶えず逃げ場を探し続けている。

「あ、あの……」

「ユキ……、俺はな」

「「「かい~ん!! のどかわいた~!!」」」

「「……」」

 あまりの急展開に慄いていると、カインさんの行く手を阻むように、それまで大人しくキャンディーを舐めていた三つ子ちゃん達が、同時に声を上げた。
 暢気な明るい声音に、がくっとカインさんが目の前で項垂れてしまう。

「くそっ……、お前ら……、わざとじゃねぇよな?」

「「「のど、かわいた~!! ジュース飲みた~い!!」」」

 足をバタバタさせて飲み物コールをする三つ子ちゃん達にカインさんがバッと振り返った瞬間、私はベンチから立ち上がり、その場を逃げ出すように早口で言い訳を述べた。

「あ、あのっ、わ、私、何か、飲み物、買って、きますねっ」

 きゅぅぅっと締め付けられる鼓動の気配を胸に感じながら、私は大広場の人混みへと向かって走り出す。けれど、背後から伸びてきたカインさんの腕に引き止められ、私は後ろを振り返った事を後悔した。腕に感じる力強い感触、私を見上げる深い想いを秘めた眼差し……。

「今日のところは、……逃がしてやる」

「カインさん……」

「今日だけは、な。……次は、覚悟しとけよ」

「――っ」

 わざと緩められた拘束から、私はその場を全力で駆け出した。
 カインさんが、私に何を求めているのか……、友人の先にある、特別な関係を望まれている事を知った私は、それをどう受け止めていいかもわからずにいた。
 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はぁ、……はぁ」

 一度大広場を抜け、階段を下りた先にある路地へと駆け込んだ。
 賑わいの声が絶える事はないけれど、私の心の中では……、カインさんの言葉の方が、繰り返し、大きく響いている。
 あのカインさんが……、私の事を、なんて。何かの間違いじゃないだろうか。
 まだ出会って、そんなには経っていない。お互いの存在を知って、少しずつ慣れてきた間柄だったはず。それなのに……、どうして?
 
「どうしよう……っ」

 男性からそういう想いを向けられるのは初めてで、初恋さえまだのこの心は、酷く臆病な迷路の中へと入りこんでしまう。
 カインさんの事は、嫌いじゃない……。だけど、異性として好きかと問われれば……。
 震える自分の身体を両腕に抱き締めてしゃがみ込んだ私は、乱れる鼓動の音を感じながら頭を振る。今日は見逃して貰えたけれど、次は覚悟をしておくようにと宣告された。
 つまり、次にカインさんから確かな想いを伝えられてしまったら……、もう逃げる事は出来ない、という事だ。その想いにどう応えるのか、私は心を定めなくてはならない。
 だけど、急にそんな事を言われても……。

「と、とりあえず、落ち着かなきゃ……」

 初めての事態に怖がっている場合ではない。
 この後、私はカインさんや三つ子ちゃん達の許に戻らなくてはならないのだ。
 こんなどうしようもない状態で戻るわけにはいかない。どうにか、心を冷静な状態に戻さないと。
 深呼吸を繰り返し、突き付けられた事実をゆっくりと心に受け止められるように、私は胸の辺りを押さえた。

「ふぅ……」

「ユキ……」

「え?」

 突然、瞼を閉じて深呼吸を繰り返していた私の耳に、心の底まで凍り付くような低い音が響いた。
 それが誰であるのか、一瞬わからないほどに……。
 それと同時に、瞼を開いて見上げた私の瞳に、ゾッとするような光景が映り込んだ。
 騎士団の団服を纏ったアレクさんが、私のすぐ傍に立っている。
 何故ここにいるのか、疑問はあったけれど……、問題は、その表情。
 いつも穏やかな気配を纏っているはずの蒼の双眸が、感情を失ってしまったかのように……、私を冷たく見下ろしていて。
 美しい面差しは温もりを失い、冷酷な気配さえ感じさせるかのように変わり果てていた。

「ユキ……」

「あ、アレク……、さん」

 僅かに腰を屈めたアレクさんが、私の頬へと右手を伸ばしてくる。
 いつものアレクさんじゃない。この人が私の事をこんな冷たい目で見る事なんて……。
 ひんやりとした感触が頬に触れた瞬間、私は恐怖のような感覚と共に身体を震わせた。
 さわりと頬を撫でられ、その指先が首筋にゆっくりと伝っていく。
 カインさんとの事で熱を抱いていた私の鼓動が、今度は別の意味で不安の音を打ち鳴らす。
 
「渡さない……」

「え……、きゃあっ」

 瞬間、憎悪にも似た呻くような声音が聞こえたかと思うと、私はアレクさんの腕に抱き上げられてしまった。苦痛にも似た感触が、私の服越しに肌へと食い込んでくる。
 アレクさんは路地を出ると、大広場の方を一瞥し、私が辿って来た道を戻るように歩き出した。
 何度制止の声をかけても、その歩みが止まることはなく、さらに強まった拘束の感触に、小さく声を上げる。

「い、痛っ……、あ、アレク、さんっ、離してくださいっ!!」

「あの男の許に戻りたいのか?」

「えっ」

 歩みを止め、私の顔を覗き込むように蒼の双眸が迫る。
 そこに浮かんでいるのは、いつも私の事を見守ってくれている優しい気配ではなく、……まるで、私に対して強い怒りを抱いているかのような、苛烈なまでに恐ろしい熱の揺らめきだった。
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