学芸院凰雅の華麗なる日常

枕返し

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学芸院凰雅は全てを理解する

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無事、依頼を果たした学芸院凰雅達。

「このフロッピーとやらをあの姉妹に届ければ任務完了ってやつだな。」
「でもゴミ袋から見つかったってことはデータが既に流出しているのかも知れないよね。そのことも合わせて報告しないと。」
「そんなことは俺の知ったことじゃないな。頼まれたのはこれの回収。それさえ終えればOKだぜ。」
一仕事終えて意気揚々と帰路に着く4人。
だが六大四天王三人衆はそんなに甘くはなかった。
「ふっふっふっふっふ、あーーーはっはっはっは!!」
どこからともなく聞こえてくるわざとらしい笑い声。
能丸は無視したかったが、凰雅の正義感はその声を無視できなかった。
「誰だ!何がおかしい!姿を見せろ!」
その声は自分たちとは関係のないものかも知れない。キョロキョロしながら大声を上げている凰雅は何も知らない人が見たら頭のオカシイ人に見えるかも知れない。そう思うと能丸は他人の振りをしたいとすら思った。
「泳がせていたのは正解だったな。お前達ならフロッピーを見つけてくれると思っていたぞ。」
物陰から姿を現したのは一人の男、その男こそ三築姉妹から要注意人物と言われていた男だった。
「誰だ!お前は。」
「オー!なんということでショー。彼は六大四天王三人衆の一人、本八幡元哉その人デース。」
「何っ!では奴が六大四天王三人衆の中でも最弱と呼ばれる男、本八幡元哉か。」
「本八幡元哉、か・・・。ふっふっふ、はーはっはっは。」
「何度でも言うぞ!なにがおかしい!」
「笑い上戸なんじゃない?そっとしておいてあげなよ。」
「六大四天王三人衆最弱の男、本八幡元哉は既に死んだ。今の俺は!本八幡元哉ではなぁい!母ちゃんの再婚により山本山元哉やまもとやまもとやとして生まれ変わったのだぁ!」
「そういう問題じゃないんじゃないかな。」
「さあ!そのフロッピーを渡してもらおうか。」
「断る。大体お前はなんでこんなものを欲しがる。これで何をしようと言うんだ。」
「知れたことよ。通信機器の情報を元に物理的に攻撃する能力を持つ衛生兵器、その力が欲しいからだ。」
「質問に答えろ!こんなものを手に入れてお前は何がしたいと言うんだ。」
「簡単なことだ。情報端末に対する抑止力よ。」
「全然簡単じゃないぞ。もっとわかりやすく言え。はっきりとだ。遠回しなわかりにくい言い方は許さんぞ。」
「では教えてやろう。この兵器の最も正しい使い方を。それは、情報端末へ自制を促す抑止力!現在、情報端末を用いて人々は多くの情報を入手している。自分の能力以上にだ。自分の能力以上に知識ばかり手に入れた先にあるのは満たされることのない欲望だ。分不相応に求め、不満を募らせる、それが不幸を呼ぶのだ。聞きかじった知識だけの人間がまた情報を発信し、大衆はそれを多数派の正義を信じ込み、心を惑わす。その連鎖。人々が時間と空間を超え繋がるという夢は人間が持つには早すぎたのだ。それを使いこなすには我々はまだ未熟!だが人々はもう情報を手放すことはできまい。だから私は情報を抑止する!この衛生兵器を使って恐怖と共に!」
「・・・ご立派な演説は終わったか?」
山本山元哉の言葉を一語一句逃さず耳を傾けた凰雅が、ゆっくりと、力強く語り出した。
「随分長々とご説明して下さったようだがな、お前の話を聞いて、俺はたった一つだがよーくわかったことがあるぜ。それは、・・・てめぇの言っていることは何だかよく解らねぇってことが、よーくわかったぜ!!」
凰雅は拳を振りかぶる。
この男は危険だ。一発殴ってやらないといけない。凰雅の中の本能がそう告げているのだ。
「ちょ、タンマタンマ、暴力反対、話せばわかる・・・」
学芸院凰雅は悪の言葉に傾ける耳は持たない。
「問答無用!」
凰雅は悪の権化のハラワタに正義の鉄拳をぶちかました。
「うぷげぇ。」
正義の鉄拳により口から悪が吐き出され、魂が浄化された山本山元哉はその場に倒れこみ、今までの己の行いを悔いた。ここに悪がまた一つ潰えたのだ。
「やれやれ。どいつもこいつも独善的だぜ。独りよがりの正義を振りかざす奴ほど口数が多い。本当の正義っていうのは筋肉のように静かに、だが確かにそこに力強く存在するものだぜ。」


一先ずの脅威は去った。だがこの世にはまだ邪悪な番長が数多存在して虎視眈々と世界の覇権を取ろうと窺っている。凰雅の強大な力と存在感は、六大四天王三人衆の一人を倒したことによってより世間に認知されることになってしまった。
凰雅の平和な学園生活は図らずもまた遠のいてしまったのだった。

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