「あんたみたいな雑魚が彼氏で恥ずかしい」と振られましたが、才色兼備な彼女ができて魔法師としても覚醒したので生活は順調です〜ヨリ?戻せないよ〜

桜 偉村

文字の大きさ
13 / 132
第一章

第13話 シャーロットの拒絶

しおりを挟む
「ただの……? それって……会長が僕に話しかけてくれる前の関係に戻るってこと?」
「はい」

 会長はあっさりとうなずいた。
 もう、彼女の中で答えは出ているということだ。
 何で、どうして。疑問符ばかりが浮かぶ。

「どうして? 僕、何かしちゃった?」
「あっ、いえ、そういうことではありません。先程も申し上げた通り、私もノアさんと一緒にいるのは楽しかったです。でも、これはノアさんのためなんです」
「僕のため? どういうこと?」

 会長は何を言いたいのだろう。

「今回の一件、悪いのは誰だと思いますか?」
「えっ? そりゃもちろん、レヴィ——」

 反射的に答えかけて、僕は口を閉ざした。
 会長の問いの意図するところに気づいてしまったからだ。

「相変わらず察しが良いですね。そう、一番の悪者がレヴィである事に疑いの余地はありません。しかし、それと同時に私が大きな要因である事もまた、明白です」

 僕は唇を噛んだ。
 否定できなかった。

 断じて会長に責任はないが、僕が会長と仲良くしていなければ、今回の一件は起きなかった。
 少なくとも、レヴィが僕を殺そうとする事はなかっただろう。

「ノアさんは以前、私が人気だとおっしゃっていましたね。実際、レヴィ以外にもアプローチを受けた事は幾度かあります。その中から第二、第三のレヴィが現れない保証もない。ノアさんの安全のためには、私はこれ以上あなたに関わってはいけないんです」

 会長の口調は相変わらず淡々としていた。
 それが、無性に悔しかった。

「言っている事はわかるけど……でも、もうこんな事は起こらないよ。今回は油断してたし、僕の対応も悪かったし……そもそもおかしいよっ。そんな奴らのために我慢する必要なんて——」
「そういう問題じゃありませんっ!」

 会長が叫んだ。
 うつむき加減だった彼女と目が合った瞬間、僕は絶句した。

 会長の目には、涙が溜まっていた。
 淡々としていたわけではなかった。
 溢れ出る感情を必死に押さえ込んでいただけだっのだ。

「私は、怖いんですっ……」

 会長の白い頬を、透明な滴が滑り落ちていく。

「私のせいでノアさんにもしもの事があったら……私はきっと耐えられない。だから……申し訳ありません」

 もう、あなたと関わることはできません——。
 会長は深々と頭を下げた。
 僕が思っている以上に、今回の一件は彼女にとって精神的な負担になっていたのだ。

 エリアが会長の肩を抱いた。
 会長はその肩に顔を埋め、静かに嗚咽おえつを漏らした。

 胸が苦しくなった。
 僕はレヴィに「会長自身が関わりたくないと言わない限りは、僕から離れるつもりはない」と言った。
 嫌われる事を想定した言葉だったが、彼女は今、僕と関わりたくないと明言した。

 精神的負担を強いてまで一緒にいたいとは思わない。
 会長の事を考えるなら、受け入れるべきだ。

 だが、ここで頷いてしまったら、もう会長との関わりはなくなる。
 その現実を、どうしても受け入れられない。

 感情じゃない。理屈で考えろ。
 僕と彼女。どちらにとっても離れるべきじゃないか。

 頭では理解しているのに、言葉が出てこない。
 まるで、喉が何かで塞がってしまっているみたいに。

「——私は反対だな」
「……えっ?」

 僕は驚きをもって発言者——エリアを見た。
 会長もまた、目を見開いて妹を見つめていた。
 涙は止まっていた。

「……エリア、どうしてですか?」

 エリアは、質問者である会長ではなく僕に目を向けてきた。

「ノア。これからあなたにとって無神経な事を言っちゃうかもしれないけど、いい?」
「もちろん」

 双子の姉と、最近知り合った異性の同級生。
 前者を優先するのは当然の事だ。

「ありがと」

 ウインクをして、エリアが会長に向き直る。

「お姉ちゃんの言いたい事はつまり、自分とノアが仲良くしているとまたノアが狙われる可能性があるから距離を置いた方がいい、って事だよね?」
「はい、その通りです」
「一理あるとは思うけど、今更離れたところでノアが狙われない確証はないんじゃない? 突然距離を置いたら、それはそれでそういう奴らの格好の餌じゃん」
「それはそうかもしれませんが……今回のような事態には発展し得ないはずです」
「まあね。けど、お姉ちゃんはノアと距離を置いて耐えられるの?」
「へっ……? あ、当たり前です! ノアさんなしでは生きていけないほどゾッコンなわけではありません!」

 会長が頬を染めて叫んだ。
 エリアがポリポリと頬をかいた。

「あぁ、いや、ごめん。そうじゃなくて……ノアと距離を取るって事は、ノアが色々言われたり攻撃されたりするのを見て見ぬふりしなきゃいけないって事だよ? お姉ちゃんっていう盾がなくなる以上、苛烈になっていく可能性も十分にある。その状況、耐えられるの?」

 会長がハッと息を呑んだ。
 その顔から赤みはすっかりと消え去っていた。

「もっと言えばさ——」

 エリアが会長の顔を覗き込んだ。

「——そういうのを間近で見て、暴走しないでいられるの?」
「そ、それはっ……」

 会長が体を震わせた。
 顔は青ざめ、唇は白くなっている。

「エリア、それ以上は——」
「ノアは黙ってて」

 厳しい口調でさえぎられた。

「ノアには悪いけど、お姉ちゃんの暴走リスクを減らす事は、私にとっては何よりも大事だから」

 そう言われてしまえば、反論できない。
 それに、会長の暴走リスクを減らしたいのは僕も同じだ。

「どうなの? お姉ちゃん。別に急いで答えなくてもいいから」

 エリアが優しく語りかけた。

「わ、私はっ……」
「うん。何?」
「多分、耐えられない……と思います」

 会長は絞り出すように言った。
 こんな状況なのに、僕は嬉しくなってしまった。
 ニヤけてしまわないように歯を食いしばる。

「そうだよね。じゃあ、お姉ちゃんとノアが距離を置くっていう案はなしじゃない?」
「でも、それだとノアさんがっ」
「いい案があるよ」

 エリアがニヤリと笑った。
 まるで、待ってましたとばかりの笑みだ。

「いい案……?」
「うん。ノアが攻撃されるリスクとお姉ちゃんが暴走するリスク、どっちも減らせる方法」
「そんなものがあるんですかっ?」
「そんなものがあるのっ?」

 会長と僕は同時にエリアに詰め寄った。

「ちょ、ちょい、二人ともがっつきすぎ! お互いそんなに離れたくなかったの?」
「あっ……」

 僕と会長は思わず目を合わせた。
 それから同時に顔を背ける。
 会長の頬は桜色に染まっていた。

 きっと僕もそうなのだろう。
 頬が熱をもっているのがわかる。

「ま、仲が良いのはいい事だよ~」
「うるさいですっ!」

 ニマニマと笑いながら僕らの肩を叩いたエリアの頭を、会長の平手が襲った。
 スパーンという、すごくいい音がした。

「いったぁ!」

 エリアが思わずといった様子で頭を抑えた。

「馬鹿な事を言っていないで、さっさとそのいい案を教えてくださいっ」
「えー、今の衝撃で忘れ……わかった! 言う! 言うから叩かないで!」

 会長が腕を振り上げたのを見て、エリアが慌てた様子で手のひらを突き出した。
 涙目になっていた。

「でも、また叩かれそうな内容なんだけど……」
「私とノアさん、双方にメリットのある案なのでしょう?」
「それはもう、お任せくださいな」
「なら、殴りませんよ。検討するだけならタダですし、とりあえず話してみてください」

 エリアが視線を向けてくる。
 僕はお願い、と頷いた。
 彼女は、僕と会長の顔を見比べながら言った。

「その、二人が恋仲になったらどうかなって」
「……えっ?」
「……はっ?」

 僕と会長は、揃って絶句した。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...