57 / 328
第二章
第57話 美少女後輩マネージャーが妹になった?
しおりを挟む
おそらく学校に置きっぱなしのものがあるとはいえ、他にも宿題は残っている。
それらを取りに家に帰った香奈は、
「うぁ~……!」
玄関先で頭を抱えて転げ回っていた。
(だ、抱きついちゃった! 抱きついちゃったんだけど⁉︎)
これまでにも抱きついたことはあったが、それらはどちらかといえば泣きついたというべきものだった。
今回のような、心が弱っていたからという言い訳もできないケースは初めてだ。
巧はアキと華子の誘惑に負けなかった——どころか揺らぎもしなかった——理由として、香奈の謂れのない悪口を言っていたから、そして彼女の体調を崩させる原因になったからだと言っていた。
それがどうしようもなく嬉しくて、自分でも気がつかないうちに背後から抱きしめてしまっていた。
(巧先輩もいつもと少し反応違ったし、さすがにバレかけてはいるのかな)
「うわっ、恥ずかしっ……!」
香奈の顔は発火するのではないかと思うほど赤くなった。
「ん、でも待てよ……?」
もし彼女の気持ちに気づいているにも関わらず、巧が宿題を手伝ってもいいと言ってくれているのなら、逆に可能性はあるのではないだろうか。
(だってさ、ナシな相手から抱きつかれたら、普通はもうその後の接触は拒否るよね。も、もしかして巧先輩もちょっとは意識してくれてるのかなっ? 前に不可抗力でお尻押し付けちゃったときは勃起してたし、もしかするとさっきもおっぱい押し当てちゃってたし……って、ダメダメそんなこと考えちゃ!)
香奈はブンブンと首を振って、邪念を追い出そうとした。
「ダメだよ、香奈。今から宿題を手伝ってもらうんだから。そんな妄想してたら巧先輩に失礼だからねっ」
香奈は鏡の自分にビシッと指を突きつけた。
「……」
一人でそんなことをしている恥ずかしさも相まって、少しは落ち着いた——はずだった。
「どこがわからないの?」
(ムリムリムリ! 巧先輩の顔がこんな近くに……!)
ワークを覗き込んでくる巧に対して、香奈は最高潮にテンパっていた。
ちょうど顔の距離感が先程抱きついたときのそれと似通っていたため、どうしても脳内をよぎってしまうのだ。
(横顔も綺麗だったし、めっちゃいい匂いだった——)
「香奈?」
「は、はひっ! ……あっ」
(はひってなんだ、私のバカ!)
「はひ……? えっと、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですっ!」
——そんなわけがなかった。
巧が懇切丁寧に教えてくれても、意識の半分以上が彼の発する内容より、彼自身にいってしまう。
そんな状態で理解できるはずもなく、さすがに申し訳なくなって自ら中断を申し出ようかとも考えていたが、意外なところに突破口はあった。
「解き方を簡単にまとめると、こんな感じかな」
「はい、ありがとうございます……あの、巧先輩。非常に申し訳ないんですけど……」
「何?」
「これ、なんて書いてあるんですか……?」
そう。巧は意外に文字が汚かったのだ。
特に走り書きをした部分はひどく、香奈には解読不可能だった。
実は、何が書いてあるのか聞くのはこれが初めてではなかった。
だから香奈もとても申し訳なく感じているのだ。
そして、そう何度も聞かれれば、直接言われなくとも自分の字が汚いのだということには誰でも気づく。
もちろん巧も例外ではなかった。
「よしっ、香奈。これからは僕の言ったこと全部メモして。僕もう絶対に字書かないから」
「あっ、でもそんなにめっちゃ汚いわけじゃ——」
「うるさい。もう決めたの」
「……ぷっ、あはははは!」
すっかり拗ねてしまっている様子の巧を見て、香奈は笑いを堪えられなかった。
彼は不機嫌そうに、そして恥ずかしそうに目を逸らす。
それすらも、香奈には笑いの着火剤にしかならなかった。
一度笑ったのが気分転換になったのか、それ以降、香奈は集中して勉強に取り組むことができた。
◇ ◇ ◇
翌日、アキと華子が退部したと、二軍監督から通達があった。
何も知らない部員たちは当然驚いていたが、巧はまあそうだろうな、という程度の感想しか抱かなかった。
彼女たちのような無駄にプライドの高い者たちが、弱みを握られたまま居残るとは思えなかった。
その日の部活終わり、例のごとくシャワーを浴びた後に巧の家にやってきた香奈は、いつも以上に疲れている様子だった。
「あ~……」
「お疲れ。マネージャーが一気に半数になったら、そりゃ大変だよね」
「はい……でも、精神的にはすごい楽になりましたよ」
香奈が机に突っ伏しつつ、笑みを見せた。
「ありがとうございます、巧先輩」
「あの二人がただ自爆しただけだけどね」
「いえいえ、先輩が録音という機転を効かせたおかげですよ。まさに巧妙な手口でしたね」
「犯罪者みたいに言わないでもらっていい?」
「はーい……」
香奈が弱々しく両手を上げた。
「まあそんなわけで、肉体的な疲労はたしかに増しましたけど、今日は今までよりも充実した時間を過ごせました。楓先輩はいっぱい褒めてくれるし」
「香奈が頑張ってるから褒めてくれるんだよ」
「えっ、私ちゃんと頑張ってるように見えます?」
「見える見える。いつもすごいしありがたいなーって思ってるよ」
「えへへ~、ありがとうございます!」
香奈は目元をへにゃりと緩ませて笑った後、巧を手で示して、
「褒めてくれたお礼に、巧先輩にはいい子な私の頭を撫でる権利を贈呈しましょう」
「意訳すると?」
「……ちょ、直接言うのは恥ずかしいです! びしょハラですっ、びしょハラ!」
「おっ、久しぶりのびしょハラだ」
「感動してないで、そのっ、あのっ……」
「わかったよ」
巧が近づくと、香奈が上体を起こした。
「別にいいよ? 突っ伏してても」
「いえ、さすがにそれは私のズキがムネムネしますから」
「変なところでいい子だよね」
「だって私、おちゃらけているように見せて礼儀正しさも持ち合わせていますから!」
香奈が親指を立ててニンマリと笑った。
「やめよっか。あのときの僕の言葉を復唱するの」
あのときとは、香奈が熱を出して弱っていたときのことだ。
「えっ……もしかしてあの言葉、全部嘘だったんですか……?」
「へぇ、僕がああいう場面で嘘つくような男だと思ってたんだ?」
「ぐっ」
香奈が言葉を詰まらせた。
彼女はふっと笑った。
「……負けを認めましょう。今の返しはうまかったです」
「素直な子は嫌いじゃないよ」
「巧先輩こそ素直じゃないですね。楓先輩はそういうとき『素直な子は好きですよ』って言ってくれるのに」
香奈が不満そうに唇を尖らせた。
巧は苦笑した。
「好きだね、篠塚先輩」
「だってめっちゃいい人なんですもん。あー、あんな人が姉に欲しい人生でした……先輩もそう思いません?」
「そうだね。相談とかすごく真面目に聞いてくれそう」
「わかります! えっ、先輩は上と下、どっちがいいですか? あっ、エッチな意味じゃありませんよ?」
「考えもしなかったよ。うーん……下かな」
「えっ、下香奈? それはつまり、私みたいな妹がほしいってことですか⁉︎」
鼻息を荒くする香奈を、巧はじっと見つめた。
彼女の頬が徐々に赤くなっていく。
「あ、あのっ、せめて何か言ってほしいんですけどっ……」
「いや……そう思うと、僕たちの関係ってちょうど兄妹っぽいんじゃないかなって思ってさ」
今だって頭を撫でているし、一緒にゲームをしたりサッカーの映像を見たり、くすぐられたり勉強を教えたりと、どちらかといえば先輩後輩よりも兄妹に近い気がした。
香奈も同感だったらしい。
「い、言われてみればっ……じゃ、じゃあ巧先輩っ、これから私のお兄ちゃんになってください!」
「えっ? うん?」
「なんで疑問系なんですか」
香奈が吹き出した。
「だって、後輩にお兄ちゃんになってくださいって言われるとか意味わかんないじゃん」
「まあまあまあ細かいことは気にしないでって」
香奈がyeah、と決めポーズをした。
「それはSnow Manでしょ。今、真夏だけどね」
「いいんですよ——お兄ちゃん」
「……あっ、呼び方も変えるんだ?」
「いえ、可愛い女の子にお兄ちゃん呼びされるのが男のロマンだって聞いたことがあったので。どうでした?」
「うーん、違和感すごいから今まで通りでいいかな」
「わかりました!」
香奈が突っ込んでこないことに、巧は安堵した。
正直、一人っ子で兄姉よりは弟妹がほしいタイプの彼としては、香奈からの「お兄ちゃん」呼びは少しだけクるものがあった。
ただ、それを悟られるわけにはいかない。
(だって多分、香奈は僕に「好きに甘えられる存在」を求めているんだろうから)
香奈の突然の兄妹提案を、巧はそう解釈していた。
彼女はずっと、兄のように甘えられる存在を求めていたのだろう。
そう考えれば、昨日抱きついてきたのも納得がいく。
(よかったー……変な勘違いしなくて)
巧は気恥ずかしさを覚えつつ、「香奈がもしかしたら自分のことを異性として好きなのかも」という選択肢を脳内から消去した。
そして新たに「香奈は自分に兄のように甘えられる存在を求めている説」を登録した。
——ピコン。
巧の携帯が鳴った。
「巧先輩、女の人からラインです~」
「それはわかんないでしょ」
巧はラインを開いた。女性——玲子からだった。
明日、一緒に映画を見に行くことについてだ。
「女の人でした?」
「女の人だった」
「えっ、まさかエッチな画像を送らせてたり……⁉︎」
「僕をなんだと思ってるの」
「でも、前に友達が巧先輩のことを『ああいう人が裏では女の子を調教してエッチな自撮りを送らせてるんだ』って言ってましたよ?」
「えっ、嘘でしょ?」
巧は愕然とした。
「嘘です——」
「よかった」
「——半分は」
「えっ」
巧は口を半開きにして香奈を見た。
「……半分は?」
「はい。ああいう人が女の子を調教して、までは本当に言ってました」
香奈がクスクス笑った。
「ちゃんと否定しといてね」
「大丈夫ですっ、どもりながら否定しておきましたよ!」
「おい」
巧がいつもより荒々しくツッコミを入れると、香奈が「やっぱり巧先輩は面白いです」と、くつくつと笑った。
それらを取りに家に帰った香奈は、
「うぁ~……!」
玄関先で頭を抱えて転げ回っていた。
(だ、抱きついちゃった! 抱きついちゃったんだけど⁉︎)
これまでにも抱きついたことはあったが、それらはどちらかといえば泣きついたというべきものだった。
今回のような、心が弱っていたからという言い訳もできないケースは初めてだ。
巧はアキと華子の誘惑に負けなかった——どころか揺らぎもしなかった——理由として、香奈の謂れのない悪口を言っていたから、そして彼女の体調を崩させる原因になったからだと言っていた。
それがどうしようもなく嬉しくて、自分でも気がつかないうちに背後から抱きしめてしまっていた。
(巧先輩もいつもと少し反応違ったし、さすがにバレかけてはいるのかな)
「うわっ、恥ずかしっ……!」
香奈の顔は発火するのではないかと思うほど赤くなった。
「ん、でも待てよ……?」
もし彼女の気持ちに気づいているにも関わらず、巧が宿題を手伝ってもいいと言ってくれているのなら、逆に可能性はあるのではないだろうか。
(だってさ、ナシな相手から抱きつかれたら、普通はもうその後の接触は拒否るよね。も、もしかして巧先輩もちょっとは意識してくれてるのかなっ? 前に不可抗力でお尻押し付けちゃったときは勃起してたし、もしかするとさっきもおっぱい押し当てちゃってたし……って、ダメダメそんなこと考えちゃ!)
香奈はブンブンと首を振って、邪念を追い出そうとした。
「ダメだよ、香奈。今から宿題を手伝ってもらうんだから。そんな妄想してたら巧先輩に失礼だからねっ」
香奈は鏡の自分にビシッと指を突きつけた。
「……」
一人でそんなことをしている恥ずかしさも相まって、少しは落ち着いた——はずだった。
「どこがわからないの?」
(ムリムリムリ! 巧先輩の顔がこんな近くに……!)
ワークを覗き込んでくる巧に対して、香奈は最高潮にテンパっていた。
ちょうど顔の距離感が先程抱きついたときのそれと似通っていたため、どうしても脳内をよぎってしまうのだ。
(横顔も綺麗だったし、めっちゃいい匂いだった——)
「香奈?」
「は、はひっ! ……あっ」
(はひってなんだ、私のバカ!)
「はひ……? えっと、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですっ!」
——そんなわけがなかった。
巧が懇切丁寧に教えてくれても、意識の半分以上が彼の発する内容より、彼自身にいってしまう。
そんな状態で理解できるはずもなく、さすがに申し訳なくなって自ら中断を申し出ようかとも考えていたが、意外なところに突破口はあった。
「解き方を簡単にまとめると、こんな感じかな」
「はい、ありがとうございます……あの、巧先輩。非常に申し訳ないんですけど……」
「何?」
「これ、なんて書いてあるんですか……?」
そう。巧は意外に文字が汚かったのだ。
特に走り書きをした部分はひどく、香奈には解読不可能だった。
実は、何が書いてあるのか聞くのはこれが初めてではなかった。
だから香奈もとても申し訳なく感じているのだ。
そして、そう何度も聞かれれば、直接言われなくとも自分の字が汚いのだということには誰でも気づく。
もちろん巧も例外ではなかった。
「よしっ、香奈。これからは僕の言ったこと全部メモして。僕もう絶対に字書かないから」
「あっ、でもそんなにめっちゃ汚いわけじゃ——」
「うるさい。もう決めたの」
「……ぷっ、あはははは!」
すっかり拗ねてしまっている様子の巧を見て、香奈は笑いを堪えられなかった。
彼は不機嫌そうに、そして恥ずかしそうに目を逸らす。
それすらも、香奈には笑いの着火剤にしかならなかった。
一度笑ったのが気分転換になったのか、それ以降、香奈は集中して勉強に取り組むことができた。
◇ ◇ ◇
翌日、アキと華子が退部したと、二軍監督から通達があった。
何も知らない部員たちは当然驚いていたが、巧はまあそうだろうな、という程度の感想しか抱かなかった。
彼女たちのような無駄にプライドの高い者たちが、弱みを握られたまま居残るとは思えなかった。
その日の部活終わり、例のごとくシャワーを浴びた後に巧の家にやってきた香奈は、いつも以上に疲れている様子だった。
「あ~……」
「お疲れ。マネージャーが一気に半数になったら、そりゃ大変だよね」
「はい……でも、精神的にはすごい楽になりましたよ」
香奈が机に突っ伏しつつ、笑みを見せた。
「ありがとうございます、巧先輩」
「あの二人がただ自爆しただけだけどね」
「いえいえ、先輩が録音という機転を効かせたおかげですよ。まさに巧妙な手口でしたね」
「犯罪者みたいに言わないでもらっていい?」
「はーい……」
香奈が弱々しく両手を上げた。
「まあそんなわけで、肉体的な疲労はたしかに増しましたけど、今日は今までよりも充実した時間を過ごせました。楓先輩はいっぱい褒めてくれるし」
「香奈が頑張ってるから褒めてくれるんだよ」
「えっ、私ちゃんと頑張ってるように見えます?」
「見える見える。いつもすごいしありがたいなーって思ってるよ」
「えへへ~、ありがとうございます!」
香奈は目元をへにゃりと緩ませて笑った後、巧を手で示して、
「褒めてくれたお礼に、巧先輩にはいい子な私の頭を撫でる権利を贈呈しましょう」
「意訳すると?」
「……ちょ、直接言うのは恥ずかしいです! びしょハラですっ、びしょハラ!」
「おっ、久しぶりのびしょハラだ」
「感動してないで、そのっ、あのっ……」
「わかったよ」
巧が近づくと、香奈が上体を起こした。
「別にいいよ? 突っ伏してても」
「いえ、さすがにそれは私のズキがムネムネしますから」
「変なところでいい子だよね」
「だって私、おちゃらけているように見せて礼儀正しさも持ち合わせていますから!」
香奈が親指を立ててニンマリと笑った。
「やめよっか。あのときの僕の言葉を復唱するの」
あのときとは、香奈が熱を出して弱っていたときのことだ。
「えっ……もしかしてあの言葉、全部嘘だったんですか……?」
「へぇ、僕がああいう場面で嘘つくような男だと思ってたんだ?」
「ぐっ」
香奈が言葉を詰まらせた。
彼女はふっと笑った。
「……負けを認めましょう。今の返しはうまかったです」
「素直な子は嫌いじゃないよ」
「巧先輩こそ素直じゃないですね。楓先輩はそういうとき『素直な子は好きですよ』って言ってくれるのに」
香奈が不満そうに唇を尖らせた。
巧は苦笑した。
「好きだね、篠塚先輩」
「だってめっちゃいい人なんですもん。あー、あんな人が姉に欲しい人生でした……先輩もそう思いません?」
「そうだね。相談とかすごく真面目に聞いてくれそう」
「わかります! えっ、先輩は上と下、どっちがいいですか? あっ、エッチな意味じゃありませんよ?」
「考えもしなかったよ。うーん……下かな」
「えっ、下香奈? それはつまり、私みたいな妹がほしいってことですか⁉︎」
鼻息を荒くする香奈を、巧はじっと見つめた。
彼女の頬が徐々に赤くなっていく。
「あ、あのっ、せめて何か言ってほしいんですけどっ……」
「いや……そう思うと、僕たちの関係ってちょうど兄妹っぽいんじゃないかなって思ってさ」
今だって頭を撫でているし、一緒にゲームをしたりサッカーの映像を見たり、くすぐられたり勉強を教えたりと、どちらかといえば先輩後輩よりも兄妹に近い気がした。
香奈も同感だったらしい。
「い、言われてみればっ……じゃ、じゃあ巧先輩っ、これから私のお兄ちゃんになってください!」
「えっ? うん?」
「なんで疑問系なんですか」
香奈が吹き出した。
「だって、後輩にお兄ちゃんになってくださいって言われるとか意味わかんないじゃん」
「まあまあまあ細かいことは気にしないでって」
香奈がyeah、と決めポーズをした。
「それはSnow Manでしょ。今、真夏だけどね」
「いいんですよ——お兄ちゃん」
「……あっ、呼び方も変えるんだ?」
「いえ、可愛い女の子にお兄ちゃん呼びされるのが男のロマンだって聞いたことがあったので。どうでした?」
「うーん、違和感すごいから今まで通りでいいかな」
「わかりました!」
香奈が突っ込んでこないことに、巧は安堵した。
正直、一人っ子で兄姉よりは弟妹がほしいタイプの彼としては、香奈からの「お兄ちゃん」呼びは少しだけクるものがあった。
ただ、それを悟られるわけにはいかない。
(だって多分、香奈は僕に「好きに甘えられる存在」を求めているんだろうから)
香奈の突然の兄妹提案を、巧はそう解釈していた。
彼女はずっと、兄のように甘えられる存在を求めていたのだろう。
そう考えれば、昨日抱きついてきたのも納得がいく。
(よかったー……変な勘違いしなくて)
巧は気恥ずかしさを覚えつつ、「香奈がもしかしたら自分のことを異性として好きなのかも」という選択肢を脳内から消去した。
そして新たに「香奈は自分に兄のように甘えられる存在を求めている説」を登録した。
——ピコン。
巧の携帯が鳴った。
「巧先輩、女の人からラインです~」
「それはわかんないでしょ」
巧はラインを開いた。女性——玲子からだった。
明日、一緒に映画を見に行くことについてだ。
「女の人でした?」
「女の人だった」
「えっ、まさかエッチな画像を送らせてたり……⁉︎」
「僕をなんだと思ってるの」
「でも、前に友達が巧先輩のことを『ああいう人が裏では女の子を調教してエッチな自撮りを送らせてるんだ』って言ってましたよ?」
「えっ、嘘でしょ?」
巧は愕然とした。
「嘘です——」
「よかった」
「——半分は」
「えっ」
巧は口を半開きにして香奈を見た。
「……半分は?」
「はい。ああいう人が女の子を調教して、までは本当に言ってました」
香奈がクスクス笑った。
「ちゃんと否定しといてね」
「大丈夫ですっ、どもりながら否定しておきましたよ!」
「おい」
巧がいつもより荒々しくツッコミを入れると、香奈が「やっぱり巧先輩は面白いです」と、くつくつと笑った。
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる