39 / 85
第38話 二人のグリフォン兵
しおりを挟む
グリフォン兵の一人、ガルマハザードは発見された首の回収部隊において、副隊長に任命された。
ガルマハザードはグリフォンの兵の中でも一番大きい。単に力だけなら、殺されたワルエルドを超えていたかもしれない程だった。
ただ、副長に任命された。
理由は単純だ。ガルマハザードには人望が無かった。
いつもイライラして周囲のグリフォンや獣族の下位種や中位種に八つ当たりしていた。何かと戦いたいが、それができる場所が無い。力があるのに生かせないのにいつも腹が立っていた。
しかし、今回は面白い事件が起こった。ワルエルドが殺されたのだ。
正直、〝ざまぁみろ〟と思った。
自分より弱いかもしれないような奴が何故か国民から慕われ、龍種と直に会ったことがあるのも気に食わなかった。
ワルエルドが死んで、これで俺がグリフォン軍のトップになれる。そう思った。何者か知らないが、今回ワルエルドを殺してくれたものに、感謝しなければいけないのかもしれない。
是非ともと思い、回収部隊に志願した。しかし、一度目は回収部隊の選別から落とされた。
激怒して、情報局主任シェルドミルの部屋に怒鳴り込むと、シェルドミルは涼しい顔をしてこう答えた。
「今回の作戦は隠密作戦になります。敵の目的についてですが、グリフォン軍の戦力の分離にあると思われます。あなたのその力は、もし万が一、本国が襲われた場合に備えて温存しておきたいのです」
「バカな! 七体のグリフォンが殺されているような敵なら、五十体の部隊を送っても襲われれば、何人かは死ぬことになるだろう。俺の戦力があれば、その死者を減らせるかもしれないではないか!!」
そう言って、怒鳴る。
この時二人はお互いに嘘を付いていた。
情報局主任シェルドミルは〝温存しておきたい〟という表現を使ったが、これは嘘で、協調性が無く問題行動を起こすガルマハザードは、今回の任務から外すべきだと思ったのが理由だった。
また、ガルマハザードの〝死者を減らせる〟とはただの出まかせで、敵からの奇襲があった場合、そこで活躍して自分の武功を立てたいと思っていただけであった。
二人は睨み合う。
「今回の任務は極めて重要な任務になります。失敗は許されません。はっきり言いましょう。あなたのこれまでの軍部での行為から、今回の作戦にあなたは適していないと思い、作戦部隊から外させていただきました」
「何?」
「あなた自身、思い当たる節はあるでしょう。これまでの問題行動を。あなたの起こした不始末は軍法会議ものばかりですよ。私がどれだけ苦労したと思っています?」
「……」
さすがにガルマハザードも言い返せない。
それなりのことはしてしまっている。
しかし、どうしても作戦に参加したい――。
ガルマハザードなりにしばらく考えていた。
そして、結論を出す。
「――済まなかった。これまでのことは謝罪しよう。今後、軍規をを乱すようなことはしないことを、ここに誓う。だからどうか、今回の回収作戦に参加させてくれ」
情報局主任シェルドミルは少し驚く。
あのガルマハザードが、これほど素直に謝るとは思わなかったのだ。
少し考え直してみる。
確かに、あの五十体の中にこのガルマハザードがいれば、万が一戦闘になっても死者が減らせる可能性は高い。協調性は無いが、単騎での戦力は相当のものだ。
それに敵の目的が軍事力の分散であるならば、小さい方を狙ってくることは予想できる。その点を考慮すると、ガルマハザードを部隊に加えるのはメリットがあることはあった。
そう判断して、もう一度ガルマハーザドに問いかける。
「今回の作戦は隠密行動が求められます。あなた一人が仮に先走ってしまうと、全滅の可能性もあります。本当に問題行動を起こしませんか?」
ガルマハザードは目を閉じながら返答した。
「ああ、その点に関しては誓おう。俺は敵が出てきたら戦いたいだけだ、兵士同士で戦いたいわけじゃない。作戦に同行させてくれ」
情報局主任シェルドミルはじっとガルマハザードを見ていて、やや時間を置いてから、こう返答した。
「分かりました。今回の作戦にはあなたも同行してもらいます。ただ、あなたは隊長ではなく、副隊長として隊長命令に従って行動してもらいます。もし、今回勝手な行動が見られた場合には、内容次第では極刑に処せられる場合があると思ってください」
「分かった。隊長に従う。兵士の足並みは乱さない」
そういってガルマハザードはシェルドミルのいる部屋を出て行った。
情報局主任シェルドミルはガルマハザードの素直な態度に驚いた。
――やはり戦闘種は戦闘種か――
そう思った。
ガルマハザードはグリフォンの兵の中でも一番大きい。単に力だけなら、殺されたワルエルドを超えていたかもしれない程だった。
ただ、副長に任命された。
理由は単純だ。ガルマハザードには人望が無かった。
いつもイライラして周囲のグリフォンや獣族の下位種や中位種に八つ当たりしていた。何かと戦いたいが、それができる場所が無い。力があるのに生かせないのにいつも腹が立っていた。
しかし、今回は面白い事件が起こった。ワルエルドが殺されたのだ。
正直、〝ざまぁみろ〟と思った。
自分より弱いかもしれないような奴が何故か国民から慕われ、龍種と直に会ったことがあるのも気に食わなかった。
ワルエルドが死んで、これで俺がグリフォン軍のトップになれる。そう思った。何者か知らないが、今回ワルエルドを殺してくれたものに、感謝しなければいけないのかもしれない。
是非ともと思い、回収部隊に志願した。しかし、一度目は回収部隊の選別から落とされた。
激怒して、情報局主任シェルドミルの部屋に怒鳴り込むと、シェルドミルは涼しい顔をしてこう答えた。
「今回の作戦は隠密作戦になります。敵の目的についてですが、グリフォン軍の戦力の分離にあると思われます。あなたのその力は、もし万が一、本国が襲われた場合に備えて温存しておきたいのです」
「バカな! 七体のグリフォンが殺されているような敵なら、五十体の部隊を送っても襲われれば、何人かは死ぬことになるだろう。俺の戦力があれば、その死者を減らせるかもしれないではないか!!」
そう言って、怒鳴る。
この時二人はお互いに嘘を付いていた。
情報局主任シェルドミルは〝温存しておきたい〟という表現を使ったが、これは嘘で、協調性が無く問題行動を起こすガルマハザードは、今回の任務から外すべきだと思ったのが理由だった。
また、ガルマハザードの〝死者を減らせる〟とはただの出まかせで、敵からの奇襲があった場合、そこで活躍して自分の武功を立てたいと思っていただけであった。
二人は睨み合う。
「今回の任務は極めて重要な任務になります。失敗は許されません。はっきり言いましょう。あなたのこれまでの軍部での行為から、今回の作戦にあなたは適していないと思い、作戦部隊から外させていただきました」
「何?」
「あなた自身、思い当たる節はあるでしょう。これまでの問題行動を。あなたの起こした不始末は軍法会議ものばかりですよ。私がどれだけ苦労したと思っています?」
「……」
さすがにガルマハザードも言い返せない。
それなりのことはしてしまっている。
しかし、どうしても作戦に参加したい――。
ガルマハザードなりにしばらく考えていた。
そして、結論を出す。
「――済まなかった。これまでのことは謝罪しよう。今後、軍規をを乱すようなことはしないことを、ここに誓う。だからどうか、今回の回収作戦に参加させてくれ」
情報局主任シェルドミルは少し驚く。
あのガルマハザードが、これほど素直に謝るとは思わなかったのだ。
少し考え直してみる。
確かに、あの五十体の中にこのガルマハザードがいれば、万が一戦闘になっても死者が減らせる可能性は高い。協調性は無いが、単騎での戦力は相当のものだ。
それに敵の目的が軍事力の分散であるならば、小さい方を狙ってくることは予想できる。その点を考慮すると、ガルマハザードを部隊に加えるのはメリットがあることはあった。
そう判断して、もう一度ガルマハーザドに問いかける。
「今回の作戦は隠密行動が求められます。あなた一人が仮に先走ってしまうと、全滅の可能性もあります。本当に問題行動を起こしませんか?」
ガルマハザードは目を閉じながら返答した。
「ああ、その点に関しては誓おう。俺は敵が出てきたら戦いたいだけだ、兵士同士で戦いたいわけじゃない。作戦に同行させてくれ」
情報局主任シェルドミルはじっとガルマハザードを見ていて、やや時間を置いてから、こう返答した。
「分かりました。今回の作戦にはあなたも同行してもらいます。ただ、あなたは隊長ではなく、副隊長として隊長命令に従って行動してもらいます。もし、今回勝手な行動が見られた場合には、内容次第では極刑に処せられる場合があると思ってください」
「分かった。隊長に従う。兵士の足並みは乱さない」
そういってガルマハザードはシェルドミルのいる部屋を出て行った。
情報局主任シェルドミルはガルマハザードの素直な態度に驚いた。
――やはり戦闘種は戦闘種か――
そう思った。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】
てんてんどんどん
ファンタジー
ベビーベッドの上からこんにちは。
私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。
私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。
何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。
闇の女神の力も、転生した記憶も。
本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。
とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。
--これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語--
※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています)
※27話あたりからが新規です
※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ)
※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け
※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。
※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ!
※他Webサイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる