最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

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第二章

第64話 エスカの本心

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 エスカはあれからゼムドの命令通りマンションの一室へ帰っていた。

 ソファーに座って考える。

 〝標的は二つ〟

 エルフとガルドロストだ。両者を殺さなければいけない。

 ――ゼムドは異常だ。異常過ぎる。

 魔族でいくら強いと言えど、龍種に単独で勝てることはない。
 
 にも拘らず、生後一万数千年程度で、古龍の一体を足蹴にできる程の高みへ到達するなど荒唐無稽と言っていい。

 魔族の中でもあれほど短期間で、頂点に上り詰めた者は過去にもいないだろう。

 何故、あんなものがこの世に産み落とされている?

 ゼムドには何か秘密があるのだろうか?

 けれども……

 それがいい。

 一度目にゼムドに敗北した時は、次は絶対に殺してやろうと思ったが、負け続けるにつれて理解した。

 ――この私はゼムドを所望する――

 私は気に入ったモノを手中に収めないと気が済まない。

 何が何でも、ゼムドを手に入れる。

 障害となるモノは全て消す。

〝エルフを殺すのは当然だ〟

 これについて考えたいが、それよりも、まさかガルドロストの中身が女だとは思わなかった。
 あの女はゼムドに好意があるような言動をしていたが、本当はゼムドを油断させて、殺すつもりなのかもしれない。四千年も姿を隠していたのは普通に考えれば、ゼムドの警戒心を解くのが目的なはずだ。もしかすると、シヴィは異性を誘惑して喰い殺すタイプの種かもしれない。
 あのアザドムドがシヴィに好意を持ったされたようだ。シヴィは何か誘惑系の特殊な魔法を使えるのだろうか?

 ゼムドは、ここ千年は別だが、以前のゼムドは尋常ではなかった。
 近づくだけで、相手を瀕死にする程に闘いを求めたし、他者に心を許すこともなかった。
 シヴィが再訪したら即座に殺し掛かることはあり得た。
 それを警戒して鎧を被ったのか。

 ただ、シヴィが、本当にゼムドが好きだとするなら、これも殺さねばならない。エルフと同じで邪魔だ。どちらにしても殺す以外の選択肢が無い。

 ゼムドとエルフの警戒を緩和させるために、ゼムドの一番になれるなら、他の女はどうでもいいと嘘の発言したが、そんなつもりはなかった。二年前からあのエルフは殺すつもりだった。

 これまでゼムドに近づこうとする魔族の女は全て殺してきた。時にはゼムドを見ただけの女も殺してきた。私以外の女がゼムドを見る必要はない。
 ミホだけは例外だが、あれは種自体の問題で、そもそも同種以外とは子を為すことができない。放置していても問題はない。

 この二年間、人族の国に侵入して、エルフを殺そうかと思っていたが、ゼムドは人族の国に魔力探査の魔法陣を設置していたようだった。下手に自分が侵入しようとして、それが発覚すると面倒だったので、人族の国へは近寄れなかった。

 が、今回やっと人族の国へ侵入することができた。人族は貧弱すぎて、自分たちの魔力にちょっと触れるだけでもダメージがあるらしい。その辺の魔力コントロールの調整には時間が掛かった。というか、私の場合は特に感情のブレで戦闘能力が変化しやすいのでコントロールが難しかった。

 手元に会ったグラスに赤ワインを注いで飲む。

 そして、思い出す。

 ゼムドがあの場であのエルフを抱きかかえていた情景を。

 見た瞬間に何があったのか理解した。

 ゼムドはあのエルフに入れ込んでいる。実際に恋愛感情があるかどうかは不明だが、少なくともあのエルフに関しては相当優遇しているのは間違いない。ゼムドがあんな鳥程度の相手に、あれほどの魔力を放出する必要はない。あの場にいた魔族達にしても龍にしてもあのレベルの鳥種を滅ぼすことなど誰でもできる。何もあそこまで魔力を放出して威嚇する必要などないはずだ。
 
 ……。

 ゼムドは自分に対してあれほど入れ込んでいないだろう。

 ゼムドはこの数千年間感情が無かった。厳密には無いわけではないのだろうが、ただ、それを表に見せることはなかった。しかし、あのエルフには感情を見せているようだ。

 一方、ゼムドとの会話からすると、自分が警戒されていることが自覚された。現状を変える必要がある。

 しかし――失敗した。あの場でエルフが嫁だと言われて、気づいた時はその場であのエルフを殺そうとしていた。あの場では絶対に抑えねばいけないことは分かっていたが、どうしようもなかった。自分の悪い癖だと思う……。
 ゼムドはあれで私への警戒レベルを引き上げただろう。ゼムドにやられてしまった。 

 ゼムドはおそらくあのエルフと定期的に会うはずだが、ただ、ゼムドからすると、あの娘に惚れているとは思えない気もする。当面はあのエルフとゼムドが会うのは放っておくしかない……。というか、二人で会話している場面を見たら、反射的にエルフを殺しにかかるのが目に見えるので近づけない。

 ただ、時間が無いのも事実だ。
 自分の性格を考えると、理性的でいられる期間はそれほど長くないはずだ。気づいた時はあのエルフを狩っているかもしれない。
 それは流石にまずい。

 なんとか理性が保たれているうちに、あのエルフを自然死に見せかけて殺す方法を模索するしかない。

 そう思って、チラッと魔力板を見る。

「人族の知識ね。せいぜい利用させてもらいましょう」

 そう言って、魔力板に魔力を通し始めた。
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