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幕間 その13 天ぷら
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リーシャに天ぷらの作り方を教えていく。
氷魔法で良く冷やしたボールに卵や小麦粉を混ぜていく。衣には塩やお酢を入れるのがミソだ。僕は野草よりも魚や肉の方がいいので、適当にアレンジした天ぷらを作ることにする。戦闘メンバー四人もそういう物の方が好みだろう。
二人で揚がった天ぷらを少しずつ味見していく。
が、時々ヒドイ食材がある。マンドラゴラだけじゃなくて、ヒトデの形をした草があった。セリサが八百屋で買ってきたのか……。
そういうゲテモノ類はビルド用に残して、僕達は山菜や白身魚を揚げていく。リーシャが手伝ってくれるので作業は早い。
天ぷらが揚がるにつれて、リーシャは僕の口の中に沢山の天ぷらを押し込んで来ようとする。ふざけてやっているので彼女は楽しそうだ。
が、僕はやられたら反撃をするタイプだ。僕も彼女の口の中に無理矢理天ぷらを入れていく。嫌がるかと思ったが、彼女は笑っている。
しばらく二人でそんなやり取りをしていたが、リーシャは僕に尋ねてきた。
「一つ質問していいでしょうか?」
何だろう? 別にそんな畏まって質問するような事があるのだろうか?
「ああ、いいよ。何かな?」
彼女は真剣な表情をしている。
「その……、マサキさんは先日の温泉に入りたかったりするのでしょうか?」
うっ、やべぇ……。リーシャからこんな質問が来るとは思わなかった。
「いや、僕は全然興味が無いよ」
表情を変えることなく、返答しなければいけないだろう。
正直、セリサに突っ込まれ罵倒されるのは構わない。
というか、あのキャラに刺すような目で見てもらえるのは、一部の人にとっては、むしろご褒美とも云えるだろう。
が、リーシャに冷たい目で見られるのは、ただの苦痛でしかない。
僕はリーシャの前では聖人でありたい。
「そうなんですか? でもセリサと一緒に――」
「違う!! 誤解だ!! 僕はそんな人間じゃない!!」
真面目な顔をして彼女に僕の気持ちを伝えていく。
リーシャはこちらをジッと見ている。
「マサキさんはもしかして胸の大きい――」
「だああああああ、天ぷらの油が飛び散ってきた!! 熱い!! 僕はもう死ぬかもしれない!!」
「この前、溶岩の中を楽しそうに走っていたような……」
「錯覚だ!! あれも死ぬかと思った!! だが、僕はリーシャを背覆っていたからそんなことは言えなかった!!」
そう言ってリーシャを見る。すると胡散臭そうな顔をした後、彼女は喋りかけてきた。
「あの、マサキんさんは私とも一緒に――」
「だああああああああ、天ぷらが揚がった!! 今のうちに食べた方がいいよ!! サクサクのうちに食べた方がいい!!」
必死になって、リーシャをキッチンから追い出していく。ここが男の見せ所、踏ん張り所だ!!
リーシャは怪訝そうな表情をしていたが、僕から渡された天ぷらを持って居間の方へ向かっていく。
皆にも天ぷらを食べさせなければいけない。
皆に揚がったばかりの天ぷらをどんどんと食べて行ってもらうことにした。
もちろん、僕は揚げ続ける。
やる以上は熱々のサクサクで食べてもらいたいので、ドンピシャのタイミングを狙って天ぷらを揚げていった。
そして、例のマンドラゴラも揚げていく。
マンドラゴラを包丁で食べやすいようにカットしようとしたが、包丁を入れる度にマンドラゴラはのたうち回った。
もう最悪だと思う。
リーシャも気味悪がっていた。ただ、ビルドとセリサは絶対に食べたいと言うので、しょうがないので調理していった。
皆の分をある程度揚げていくと、リーシャが僕の代わりに天ぷらを揚げてくれて、僕もダイニングへ行って食べることになった。
今日釣れた魚の天ぷらを食べてみる。
サクッと何とも言えない触感があった後、口の中に吸収されていくのが分かる。
天ぷら用に、天つゆだけでなく粗塩や抹茶塩も準備したが、ガルレーンさん達はソースの方がいいらしい。
まぁ、自由に食べればいいよね。
ビルドとセリサのために白ご飯も準備してあげて、天丼用のタレも掛けてやった。二人とも美味しいということだ。
それから皆に訊いてみた。
「ところで、マンドラゴラはどうだった?」
「え? マサキは食ってないの?」
ビルドは意外そうな顔をしている。
「いや、ちょっと食べる気がしなくてね……」
そういうと皆が不思議そうな顔をしている。
「じゃあ、お前の分も食べちまうぞ? いいんだな?」
「ああ、好きにしてくれ」
そう言うと、ビルド、セリサ、ガルレーンさんとファードスさんでジャンケン大会になった。カルディさんも食べたいようだが、我慢しているようだ。
結局、ファードスさんが勝ち残ったので僕の分を食べている。
「なんだよ、またファードスさんが勝ちか」
そう言いながら、ビルドが指を咥えている。
「〝また〟ってどういう事?」
「リーシャも〝いらない〟って言うから皆でジャンケン大会したんだよ。で、その時もファードスさんが勝った」
ああ、リーシャもやっぱり食べないのね。あれを見ちゃってるとねぇ……。
リーシャが足りなくなる度に天ぷらの追加を持ってきてくれるので、ついつい僕も食べてしまった。最後の方は肉を天ぷらにしてもらったが、それらも美味しかった。鳥系の肉が一番美味しかったと思う。
そして、皆で、リビングで食後の休憩をしている時だった。急にセリサがトロ~ンとした目になった。
「ああ、私、なんか眠い……」
そう言うと、ソファーにもたれ掛かって寝てしまった。隣を見ると、ビルドも眠そうな顔をしている。ファードスさんに至っては、座ったまま熟睡している。やがて、ガルレーンさんやカルディさんも眠ってしまった。
リーシャが皆のお茶を持ってきてくれたが、その様子を見て驚いている。
「皆さんどうしたんですか?」
「いや、急に皆が眠そうにしたと思ったら、寝ちゃったんだよ」
「……もしかしてマンドラゴラですか?」
「うん。多分そうだろうね。僕とリーシャは眠くないわけだから」
「大丈夫でしょうか?」
「カルディさんが許可を出している以上、大丈夫でしょ。それに……」
そう言って、二人で眠った皆の顔を見る。全員、幸せそうな顔をしていた。
特に貴重なのはカルディさんの寝顔だろう。あの人がここまで無防備になっている姿は珍しいと思う。
そこで、リーシャにお願いして、セリサのバッグから水晶体を持ってきてもらうことにした。
皆の顔を撮影しておいた方がいいだろう。
一人ずつの顔を撮っていく。
ファードスさんはいつも厳つい顔をしているが、こういうニヤけた表情を見せるとは思わなかった。
セリサの顔も、もちろん撮っていく。多分、写真を買い取る所へ持ち込めば、それなりの値段で売れるはずだ。
ガルレーンさんの顔も撮影するが、いつも酒を飲んだ時と同じ表情だ。ダメな大人かもしれない。
そして、カルディさんの貴重な一枚を撮影してから、しょうがないのでビルドの顔も撮影してやった。
「ふう」
僕は満足気だ。リーシャはその様子を見て苦笑していたが、僕の撮影が終わると話し掛けてきた。
「勉強を教えてもらえませんか?」
**********
リーシャに勉強を教えていく。そろそろ数学の正弦や余弦を教えていくことにした。
こういうものを勉強する時に〝なんでこんなことを勉強しなきゃいけないんですか?〟という言葉が出てきた時は、その人の限界を示している。
数学と言うのは、どんな天才もどこかで挫折する学問と言われているが、僕の考えでは〝なんでこんなことを〟という考えがよぎった時点で、その人の限界値に達していると思う。
この段階に至ったら数学はもう勉強する意味がない。やっても伸びないし、やる必要も無い。
が、リーシャはそれを言わない。〝正弦は何に使うんですか?〟と訊いてきた。
正弦余弦は、ゲームアプリ上で弾が弧の軌道を描くときなどの数値の計算・プログラミングをする場合に、正弦や余弦を使うと便利だ。
ただ、そう言っても彼女には分からないだろうと思ったので、測量をする際に便利だと答えておいた。それくらいでいいだろう。
微分や積分も高校時代には何に使うのか分からないが、大学へ行って自分の専門分野へ関わるようになるとやはり必要なのが分かる。特に、積分は面積、体積を計算できるし、概算値でも分かるのは価値が大きい。が、この辺は勉強を始めたばかりでは面白さが分からないところだろう。
まぁ、そのうちリーシャにも教えてあげようと思う。
そんな感じで勉強を教えていくと、一区切りつくことが出来た。
するとリーシャがこちらを見ている。何だろう?
「マサキさんは元の世界にいた時、誰かと付き合っていたのですか?」
「……いや、誰とも付き合っていなかった」
「そうですか」
リーシャは無表情だ。なんだ? 幻滅されたのか??
そりゃそうかもなぁ。セリサに胸を見せられたくらいで、ヒョイヒョイ付いて行こうとしたわけだし。まぁ仕方ないか。
リーシャにはちゃんとした人と付き合ってもらいたいと僕は思う。
************
マサキと一緒に天ぷらを揚げることになった。この街に最初に泊まった宿の天ぷらが美味しかったので、自分でも作れるようになってみたかった。けれど作り方が分からない。
宿の方に訊けば教えてもらえたのかもしれないが、失礼かと思って躊躇ってしまった。
ただ、それでもマサキがその作り方を知っているのには驚いた。
マサキの元の世界はどんな文化があるのだろう?
この世界と類似点があるように思える。これまでの旅でマサキは各地を訪れた際、私たちが知らないような事でも知っていることがあった。
マサキはいつか元の世界に帰ってしまうのだろうか?
天ぷらを二人で揚げていると面白かった。私はマサキにいたずらをしてみたくなって、天ぷらを食べさせてあげたが、まさかあんなに頬張るとは思わなかった。面白くなったので、ついついやり過ぎたが、マサキは楽しそうだった。
――いや、それよりも。
マサキはあの風呂屋に興味があるのだろうか? ないのだろうか?
セリサとのやり取りを見ていると、興味が無いようにも見えるが、セリサに色目を使われると一瞬で陥落していった。ただ、今日私が尋ねるとマサキは否定していた。
うーん。どういうことなんだろう? マサキの好みがいまいち分からない……。
マサキから正弦や余弦を教えてもらった。何に使うのかよく分からないが、私は人族の国へ行ったら、医療について学びたいと思う。マサキからすると数学や化学は勉強しておいた方がいいと言われているので、それについて少しずつ学んでいる。
勉強を教わりながら、マサキの横顔を見る。
真剣な表情をしている。
教わっているのだから、私も頑張らないと……。
*********
結局、エドの街にも二週間以上滞在してしまった。
途中、僕とガルレーンさんはギルドの依頼で五重の塔にチャレンジすることにもなった。
どうやら、過去にいた武芸者が自らが触媒になることで五重の塔の守護者になり、ずっと武芸の腕を磨き続けていたそうだ。
それぞれ戦ってみたが、いい勉強になった。最後は五重塔の守護者と飲み明かしてから別れることになった。いい出会いだったと思う。
氷魔法で良く冷やしたボールに卵や小麦粉を混ぜていく。衣には塩やお酢を入れるのがミソだ。僕は野草よりも魚や肉の方がいいので、適当にアレンジした天ぷらを作ることにする。戦闘メンバー四人もそういう物の方が好みだろう。
二人で揚がった天ぷらを少しずつ味見していく。
が、時々ヒドイ食材がある。マンドラゴラだけじゃなくて、ヒトデの形をした草があった。セリサが八百屋で買ってきたのか……。
そういうゲテモノ類はビルド用に残して、僕達は山菜や白身魚を揚げていく。リーシャが手伝ってくれるので作業は早い。
天ぷらが揚がるにつれて、リーシャは僕の口の中に沢山の天ぷらを押し込んで来ようとする。ふざけてやっているので彼女は楽しそうだ。
が、僕はやられたら反撃をするタイプだ。僕も彼女の口の中に無理矢理天ぷらを入れていく。嫌がるかと思ったが、彼女は笑っている。
しばらく二人でそんなやり取りをしていたが、リーシャは僕に尋ねてきた。
「一つ質問していいでしょうか?」
何だろう? 別にそんな畏まって質問するような事があるのだろうか?
「ああ、いいよ。何かな?」
彼女は真剣な表情をしている。
「その……、マサキさんは先日の温泉に入りたかったりするのでしょうか?」
うっ、やべぇ……。リーシャからこんな質問が来るとは思わなかった。
「いや、僕は全然興味が無いよ」
表情を変えることなく、返答しなければいけないだろう。
正直、セリサに突っ込まれ罵倒されるのは構わない。
というか、あのキャラに刺すような目で見てもらえるのは、一部の人にとっては、むしろご褒美とも云えるだろう。
が、リーシャに冷たい目で見られるのは、ただの苦痛でしかない。
僕はリーシャの前では聖人でありたい。
「そうなんですか? でもセリサと一緒に――」
「違う!! 誤解だ!! 僕はそんな人間じゃない!!」
真面目な顔をして彼女に僕の気持ちを伝えていく。
リーシャはこちらをジッと見ている。
「マサキさんはもしかして胸の大きい――」
「だああああああ、天ぷらの油が飛び散ってきた!! 熱い!! 僕はもう死ぬかもしれない!!」
「この前、溶岩の中を楽しそうに走っていたような……」
「錯覚だ!! あれも死ぬかと思った!! だが、僕はリーシャを背覆っていたからそんなことは言えなかった!!」
そう言ってリーシャを見る。すると胡散臭そうな顔をした後、彼女は喋りかけてきた。
「あの、マサキんさんは私とも一緒に――」
「だああああああああ、天ぷらが揚がった!! 今のうちに食べた方がいいよ!! サクサクのうちに食べた方がいい!!」
必死になって、リーシャをキッチンから追い出していく。ここが男の見せ所、踏ん張り所だ!!
リーシャは怪訝そうな表情をしていたが、僕から渡された天ぷらを持って居間の方へ向かっていく。
皆にも天ぷらを食べさせなければいけない。
皆に揚がったばかりの天ぷらをどんどんと食べて行ってもらうことにした。
もちろん、僕は揚げ続ける。
やる以上は熱々のサクサクで食べてもらいたいので、ドンピシャのタイミングを狙って天ぷらを揚げていった。
そして、例のマンドラゴラも揚げていく。
マンドラゴラを包丁で食べやすいようにカットしようとしたが、包丁を入れる度にマンドラゴラはのたうち回った。
もう最悪だと思う。
リーシャも気味悪がっていた。ただ、ビルドとセリサは絶対に食べたいと言うので、しょうがないので調理していった。
皆の分をある程度揚げていくと、リーシャが僕の代わりに天ぷらを揚げてくれて、僕もダイニングへ行って食べることになった。
今日釣れた魚の天ぷらを食べてみる。
サクッと何とも言えない触感があった後、口の中に吸収されていくのが分かる。
天ぷら用に、天つゆだけでなく粗塩や抹茶塩も準備したが、ガルレーンさん達はソースの方がいいらしい。
まぁ、自由に食べればいいよね。
ビルドとセリサのために白ご飯も準備してあげて、天丼用のタレも掛けてやった。二人とも美味しいということだ。
それから皆に訊いてみた。
「ところで、マンドラゴラはどうだった?」
「え? マサキは食ってないの?」
ビルドは意外そうな顔をしている。
「いや、ちょっと食べる気がしなくてね……」
そういうと皆が不思議そうな顔をしている。
「じゃあ、お前の分も食べちまうぞ? いいんだな?」
「ああ、好きにしてくれ」
そう言うと、ビルド、セリサ、ガルレーンさんとファードスさんでジャンケン大会になった。カルディさんも食べたいようだが、我慢しているようだ。
結局、ファードスさんが勝ち残ったので僕の分を食べている。
「なんだよ、またファードスさんが勝ちか」
そう言いながら、ビルドが指を咥えている。
「〝また〟ってどういう事?」
「リーシャも〝いらない〟って言うから皆でジャンケン大会したんだよ。で、その時もファードスさんが勝った」
ああ、リーシャもやっぱり食べないのね。あれを見ちゃってるとねぇ……。
リーシャが足りなくなる度に天ぷらの追加を持ってきてくれるので、ついつい僕も食べてしまった。最後の方は肉を天ぷらにしてもらったが、それらも美味しかった。鳥系の肉が一番美味しかったと思う。
そして、皆で、リビングで食後の休憩をしている時だった。急にセリサがトロ~ンとした目になった。
「ああ、私、なんか眠い……」
そう言うと、ソファーにもたれ掛かって寝てしまった。隣を見ると、ビルドも眠そうな顔をしている。ファードスさんに至っては、座ったまま熟睡している。やがて、ガルレーンさんやカルディさんも眠ってしまった。
リーシャが皆のお茶を持ってきてくれたが、その様子を見て驚いている。
「皆さんどうしたんですか?」
「いや、急に皆が眠そうにしたと思ったら、寝ちゃったんだよ」
「……もしかしてマンドラゴラですか?」
「うん。多分そうだろうね。僕とリーシャは眠くないわけだから」
「大丈夫でしょうか?」
「カルディさんが許可を出している以上、大丈夫でしょ。それに……」
そう言って、二人で眠った皆の顔を見る。全員、幸せそうな顔をしていた。
特に貴重なのはカルディさんの寝顔だろう。あの人がここまで無防備になっている姿は珍しいと思う。
そこで、リーシャにお願いして、セリサのバッグから水晶体を持ってきてもらうことにした。
皆の顔を撮影しておいた方がいいだろう。
一人ずつの顔を撮っていく。
ファードスさんはいつも厳つい顔をしているが、こういうニヤけた表情を見せるとは思わなかった。
セリサの顔も、もちろん撮っていく。多分、写真を買い取る所へ持ち込めば、それなりの値段で売れるはずだ。
ガルレーンさんの顔も撮影するが、いつも酒を飲んだ時と同じ表情だ。ダメな大人かもしれない。
そして、カルディさんの貴重な一枚を撮影してから、しょうがないのでビルドの顔も撮影してやった。
「ふう」
僕は満足気だ。リーシャはその様子を見て苦笑していたが、僕の撮影が終わると話し掛けてきた。
「勉強を教えてもらえませんか?」
**********
リーシャに勉強を教えていく。そろそろ数学の正弦や余弦を教えていくことにした。
こういうものを勉強する時に〝なんでこんなことを勉強しなきゃいけないんですか?〟という言葉が出てきた時は、その人の限界を示している。
数学と言うのは、どんな天才もどこかで挫折する学問と言われているが、僕の考えでは〝なんでこんなことを〟という考えがよぎった時点で、その人の限界値に達していると思う。
この段階に至ったら数学はもう勉強する意味がない。やっても伸びないし、やる必要も無い。
が、リーシャはそれを言わない。〝正弦は何に使うんですか?〟と訊いてきた。
正弦余弦は、ゲームアプリ上で弾が弧の軌道を描くときなどの数値の計算・プログラミングをする場合に、正弦や余弦を使うと便利だ。
ただ、そう言っても彼女には分からないだろうと思ったので、測量をする際に便利だと答えておいた。それくらいでいいだろう。
微分や積分も高校時代には何に使うのか分からないが、大学へ行って自分の専門分野へ関わるようになるとやはり必要なのが分かる。特に、積分は面積、体積を計算できるし、概算値でも分かるのは価値が大きい。が、この辺は勉強を始めたばかりでは面白さが分からないところだろう。
まぁ、そのうちリーシャにも教えてあげようと思う。
そんな感じで勉強を教えていくと、一区切りつくことが出来た。
するとリーシャがこちらを見ている。何だろう?
「マサキさんは元の世界にいた時、誰かと付き合っていたのですか?」
「……いや、誰とも付き合っていなかった」
「そうですか」
リーシャは無表情だ。なんだ? 幻滅されたのか??
そりゃそうかもなぁ。セリサに胸を見せられたくらいで、ヒョイヒョイ付いて行こうとしたわけだし。まぁ仕方ないか。
リーシャにはちゃんとした人と付き合ってもらいたいと僕は思う。
************
マサキと一緒に天ぷらを揚げることになった。この街に最初に泊まった宿の天ぷらが美味しかったので、自分でも作れるようになってみたかった。けれど作り方が分からない。
宿の方に訊けば教えてもらえたのかもしれないが、失礼かと思って躊躇ってしまった。
ただ、それでもマサキがその作り方を知っているのには驚いた。
マサキの元の世界はどんな文化があるのだろう?
この世界と類似点があるように思える。これまでの旅でマサキは各地を訪れた際、私たちが知らないような事でも知っていることがあった。
マサキはいつか元の世界に帰ってしまうのだろうか?
天ぷらを二人で揚げていると面白かった。私はマサキにいたずらをしてみたくなって、天ぷらを食べさせてあげたが、まさかあんなに頬張るとは思わなかった。面白くなったので、ついついやり過ぎたが、マサキは楽しそうだった。
――いや、それよりも。
マサキはあの風呂屋に興味があるのだろうか? ないのだろうか?
セリサとのやり取りを見ていると、興味が無いようにも見えるが、セリサに色目を使われると一瞬で陥落していった。ただ、今日私が尋ねるとマサキは否定していた。
うーん。どういうことなんだろう? マサキの好みがいまいち分からない……。
マサキから正弦や余弦を教えてもらった。何に使うのかよく分からないが、私は人族の国へ行ったら、医療について学びたいと思う。マサキからすると数学や化学は勉強しておいた方がいいと言われているので、それについて少しずつ学んでいる。
勉強を教わりながら、マサキの横顔を見る。
真剣な表情をしている。
教わっているのだから、私も頑張らないと……。
*********
結局、エドの街にも二週間以上滞在してしまった。
途中、僕とガルレーンさんはギルドの依頼で五重の塔にチャレンジすることにもなった。
どうやら、過去にいた武芸者が自らが触媒になることで五重の塔の守護者になり、ずっと武芸の腕を磨き続けていたそうだ。
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