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月乃視点

最終話 理想の夫とは

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 二度目の挿入は、初め程痛くはなかった。ただ、何かが入っているなと思うだけだった。

「痛くありませんか?」

 征士くんが心配そうに尋ねてきた。私は首を振った。

「痛くはないわ。何か、入っていると思うだけ」

 私がそう答えると、安心したのか、征士くんは腰の運動を始めた。征士くんの均整のとれた身体から、綺麗な汗が滴り落ちてきた。

「月乃さんが綺麗すぎて……。また、持ちそうにありません」

 私の両足を抱え上げ、のしかかってきた。
 口付けながらの行為。彼は私の片足を離して、更に深く己を埋めてきた。

「こうすると、月乃さんをたくさん感じられますね……」

 征士くんは、私の離していない片足を肩に担ぎあげた。後で聞いたが「松葉くずし」という体位のようだ。
 しばらくその体位でした後、正常位に戻った。
 征士くんの整った顔を見つめる。彼は快感に染まった表情を浮かべていた。

「月乃さんの中、吸い付いてきます……。自分でするのと比べものになりません」

 また征士くんは低く呻いた。液体が膣内に注ぎこまれた。
 征士くんが抜いて、また軽くティッシュで拭う。それでも精子が中から溢れて止まらない。
 征士くんはきつく私を抱きしめ、バードキスをした。

「征士くんでも自慰なんてするのね……。想像もつかないわ」

 彼は苦笑した。

「それは何回だってしています。何回も頭の中で、月乃さんをけがしました。軽蔑、しますか?」

 私は驚いた。私を頭の中で汚す……?

「汚すって、何かしら?」
「嫌だなあ。カマトトぶらないでください。月乃さんの妄想でしか、抜けませんよ。……ねえ、月乃さん」

 色っぽい流し目を送ってきた。

「もう一回、いいですか?」
「……なっ……!」

 私は絶句した。
 そうして、今宵三度目の行為が始まった。

 ♦ ♦ ♦

 コペンハーゲンからノルウェーに行く船の中でも、征士くんは行為を求めてきた。

「シングルベッドなのに……」
「シングルで、僕は嬉しいです。月乃さんとくっつけますから」

 その夜も彼はしつこかった。正常位の後、後背位にされた。どれだけ征士くんは研究してきたのだろう。私は段々感じるようになってきた。
 隣の船室に、喘ぎ声が聞こえたらどうしようかしら。

「バックの方が妊娠しやすいらしいですよ。でも、妊娠したらあまりSEX出来ないですね。僕はずっと、月乃さんと繋がっていたいです」

 事後の私を背中から抱きしめて、囁いた。
 船の中でも、きっちり三回行為は行われた。


 新婚旅行中、毎晩三回行為をされた。
 私はすっかり征士くんの身体に馴染み、感度を高められた。
 征士くんは「Gスポット」という場所をいつも擦ってくる。そうすると、気持ち良すぎて、勝手に私の身体から蜜が溢れてくるのだ。
 私は「イク」という言葉と体験を覚えた。征士くんはいつも私をイカせようと熱心だ。
 ノルウェー語で「Jeg elsker deg」、スウェーデン語で「Jag älskar dig」、フィンランド語で「Mina rakastan sinua」と囁かれた。「愛している」ばかり言ってどうするのだろう。少し、愛が重い。

 ♦ ♦ ♦

 実家の虹川家へ帰ってきた。
 私達の部屋には、クィーンサイズのベッドが運び込まれている。特注の真っ白なベッド。マットレスはラベンダー色だ。
 私が仕事から帰ってくるのを、征士くんは待ち構えている。毎日一緒に、お風呂に入るのだ。

「月乃さんの肌は綺麗ですね……」

 私よりよっぽど綺麗な肌の征士くんは私の身体を全て洗う。長い髪の毛まで洗ってくれる。丁寧にコンディショナーで手入れしてくれる。
 一緒に浴槽へ入ると、いつも私の胸を弄んでくる。私は身体の感度が高まっているので、先端を指が掠っただけで興奮してしまうのだ。
 真っ赤になっていると、いつも通り澄ました顔で征士くんは言ってくる。

「じゃあ、さっさとシャワーを浴びて出ましょう。髪の毛を乾かした後、良いことしましょうね」

 髪の毛を乾かした後、ラベンダー色のマットレスの上に二人で横になる。
 征士くんは横になるや否や、私の服を脱がせにかかった。

「今日は月乃さんを、全部食べちゃいましょうか」

 全裸になった私の、足の爪先に口付けた。そのまま宣言通りに身体中を舐め回してきた。首筋を舐められたとき、反応してしまった。

「んんっ!」
「あれ、月乃さんは、首筋弱いですか? いいところ見つけました。ラッキーですね」

 しつこく首筋を舐められ、胸や秘所も触られ、また濡れてしまった。

「今日は月乃さんが、僕の上に乗ってください」

 横たわった征士くんの上に、真正面に座り込まされた。彼は強引に、自身を私の中に入れてきた。

「月乃さん。膝で体重を支えて、上下に動いてください」
「そ、そんなこと、言われても……」

 彼の物を深く咥えこんでいる。征士くんは下から突き上げてきた。

「うんんっ!」
「月乃さんも、動いて。僕、とっても気持ちが良いです」

 仕方なく、彼の言う通り、膝で体重を支えて上下に動いてみた。深い。征士くんはどんどん突き上げてくる。

「ほら、月乃さんだって気持ちが良いでしょう。僕のを美味しそうに、飲み込んでいます」
「あ、ぁあっ! 気持ち、良いけれど……!」

 年下夫に、主導権を取られっぱなしだ。
 征士くんはそのままの姿勢で、白濁液を放出した。

 ♦ ♦ ♦

 そんな新婚生活が続いて一か月と少し経った頃。私は妊娠した。
 ……早い。呆然とする。征士くんがしつこかったせいだ。
 妊娠したばかりの為、性行為は行えない。征士くんは美しい笑顔で囁いた。

「僕に、その可愛いお口でご奉仕してください」

 口で奉仕? 意味がわからない。
 征士くんは下着を下ろして、男性自身を私の口に突っ込んだ。

「んんっ!」
「いつも僕、月乃さんのこと舐めていますよね。僕の言う通りに舐めてください」

 征士くんが言う通り、彼のものの裏を先端に向かって舐め上げた。手も使って、と言うので、手で扱いて、先端には吸い付いた。口を窄めて歯が当たらないようにする。しばらくそうしていると、突然征士くんは口から自身を引っこ抜いた。

「…………!!」

 白濁液を顔にぶっかけられた。髪にもついた気がする。

「な、何、するのよ……」

 顔がべたべたする。変な匂いもする。

「すみません、月乃さん。月乃さんの綺麗な顔にかけてみたかったんです」

 美形だからといって、何をしても許されるのか。私はさすがに怒った。

「もう、こんなことしないわ! シャワー浴びてくる」
「ええっ! またお願いします! ごめんなさい」

 謝られたけれど、私は二度と「口で奉仕」はしなかった。
 征士くんは何度も頼んできた。仕方がないので、手でだけ、彼を慰めてあげた。


 十月十日流れて、生まれてきたのは女の子だった。
 虹川にじかわ知乃ちのと名付けた。ちーちゃんと呼ぶことになった。
 ちーちゃんには、顔にかけたりする夫とは、結婚しないで欲しいと思った。
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