【完結】婚約破棄され下級メイドになり、獣人王子(猫)の世話係に抜擢されました。

朝日みらい

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(7)思わぬ絆の芽生え 

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アメリアは王子の柔らかな毛並みを撫でる手を止めることなく、心地よい静寂に包まれていました。

彼の喉から響くゴロゴロという音が、なんとも安心感を与えてくれます。

不意に王子が軽く目を開け、その深い緑色の目でアメリアをじっと見つめます。

「にゃにゃんにゃんにゃ?(君、案外、猫好きなんだな?)」

王子は少しだけ顔を傾け、アメリアの表情を探るように言いました。

普段なら、王子のような存在にこんな風に目を合わせて話すことすら、恐れ多いと思うはずなのに、今はその距離が妙に心地よいのです。

「ええ、実は猫も犬も、どちらも好きなんです。」

アメリアは素直に答えながら、王子の毛並みを指先で優しく撫でました。

すると王子は目を細め、満足そうに鼻を鳴らします。

「ふむ、君とこうして一緒にいると、何だか人間として過ごしているみたいな気分になるな。」

王子がくるりと体を丸めながら、アメリアの膝にしっかりと寄り添います。

彼の体温が伝わってきて、思わずアメリアは少しだけ驚きましたが、すぐにその温もりに包まれる感覚が心地よいものだと気づきました。

「こうして膝に乗るの、好きなんですか?」

アメリアが少し笑いながら尋ねると、王子はわざとらしくふふっと鼻を鳴らしました。

「べ、別に…こうして膝に乗ることは、王子たる身分に相応しい行動ではないのだが、まあ、特別だな。」

王子の尻尾がぷらぷらと揺れる様子が可愛らしくて、思わずアメリアは笑ってしまいます。

「本当に、あなたって意外と可愛らしいところもありますね。」

アメリアが心の中で呟くと、王子は一瞬戸惑ったように目を見開きました。

その顔を見た瞬間、アメリアは思わず笑いがこみ上げてきた。

「な、何だ、その顔は。」

王子は顔を背け、耳をぴくっと動かします。そんな姿も、アメリアにとっては愛おしくてたまりません。

「ごめんなさい。でも、本当に意外でした。王子殿下が、こんなに可愛らしい一面を持っているなんて。」

アメリアは手を止めずに、王子の頭をそっと撫でました。

王子はちょっと目を細め、まるで嬉しそうに見える。

「ふむ…ま、こうして撫でてもらうのも悪くない。」

王子は満足そうに喉をゴロゴロ鳴らしながら、再びアメリアを見上げました。

その目は、どこか甘えたように見えた。

「でも、王子殿下が人間の姿の時も、素敵ですよ。」

アメリアが少し照れくさそうに言うと、王子はふっと顔を赤らめました。

自分の猫の姿を褒められるのは嬉しいけれど、やはり人間の姿に戻った時の自分を思うと、どうしても照れが出てしまうようです。

「そ、そうだな…人間の姿でも、君にきちんと見てもらいたいとは思っている。」

王子は顔を隠すようにふわっと体を丸めました。

それでも、その小さな動きが愛らしくて、アメリアはもう完全に心を奪われてしまっていました。

「ああ、王子殿下…本当に、可愛いところが多すぎます。」

アメリアが思わずつぶやくと、王子は目を細めて、少し照れたように鼻を鳴らしました。

「…君も、かなり素直なところがあるんだな。」

王子は、アメリアの膝にぴったりと寄り添い、もう一度ゴロゴロと喉を鳴らします。

まるでそれが、彼なりの安らぎの証であるかのように。


その後、二人はしばらく黙って、ただ月明かりの中で静かな時を過ごしました。

王子の柔らかな体温が、アメリアの膝に伝わり、心地よいリズムを刻見ます。

その間、アメリアの胸の中で、どんどん王子への思いが強くなっていくのがわかりました。

彼との時間が、ただ単に穏やかで楽しいだけでなく、何か特別な意味を持つものに感じられて、心が温かくなります。

そして、夜が更ける頃。

アメリアはふと思いついて口を開きました。

「王子殿下、もしよろしければ、次の満月の夜も私をお供にしていただけませんか?」

彼女の声は少し恥ずかしそうで、でも心からの願いが込められていた。

王子は目を閉じて考え込むように見せかけたが、すぐにその顔に満足げな笑みを浮かべました。

「良い提案だな。君のように嫌がらずに向き合ってくれる者がいてくれるのは、なかなか心強い。」

王子はにゃあっと鳴き、アメリアの膝から少し体を離して、誇らしげに尻尾をピンと立てました。

その夜、アメリアと王子はしばし月明かりのもとで静かに過ごし、やがて月が昇りきる頃、ふたりの間に新たな絆が深まっていったのでした。
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