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朝日みらい

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第10章:揺れる心

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 舞踏会の華やぎが嘘のように静まり返った王城の回廊を、ふたりはゆっくりと歩いておりました。

足音さえもが、この静寂に溶けていくようです。

窓から差し込む月明かりが、ステンドグラスの模様を床に描き出し、まるで遠い昔の夢の残骸のように儚く揺らめいています。

――今夜は、まるで自分だけが違う時を生きているかのように、胸の奥がざわついておりました。

ゼノ殿下と過ごしたバルコニーでのひととき。

頬を撫でる夜風が、彼の言葉を、その熱を帯びた視線を、そして、わたくしの手を包み込んだあの温もりを鮮明に蘇らせます。

「君の未来は、僕が守る」

その声が、力強く、そして優しく、何度も何度も心の壁を叩きます。

凍りついていたはずのわたくしの胸に、一筋の温かい光が差し込んだような気がしました。

「リシェル」

その声は、静かでありながらも揺るぎない意志に満ちていました。


わたくしは、隣のゼノ殿下の横顔を見つめました。

月明かりに照らされたその瞳には、冷静な理知と、そしてわたくしへの深い想いが宿っているように感じられました。

「ありがとう……いつもわたしを見守ってくださって」

「当然のことだ。君は、僕の大切な人だから」

その言葉に、冷えていた胸が静かに、しかし確かに震えました。

冷たい夜の空気の中に、彼がもたらしてくれた確かな温もりがありました。

――わたくしは、もう振り返らない。

過去ではなく、この温かい“今”を、この手の中に抱きしめよう。

そう、心に誓いました。

ゼノ殿下の手が、そっとわたくしの手に触れました。

その指先から伝わる彼の体温は、わたくしの心の奥深くにまでじんわりと広がり、張りつめていた心を解きほぐしていくようです。

その瞬間、わたくしの心は、まるで陽だまりの中にいるかのように、安らぎに包まれました。

「リシェル。君が望むなら、僕はずっと隣にいるから」

「それ……甘すぎます」

そう言いながらも、わたくしの唇は自然と弧を描いていました。

「甘くても、君には必要だと思うよ」

その言葉に、わたくしは堪えきれずに微笑んでしまいました。

「キスしていいか」

「だめです。ふふっ…!」

「悪戯が好きだな」

こんなふうに、誰かと心から笑い合うのは――いったい、いつ以来のことだったでしょうか。

そして、生まれて初めて、愛する人に唇を奪われました。
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