【完結】辺境騎士団長は恋に鈍感! 元王都魔導士見習いの私、初恋成就作戦が今日も空回りしてます!

朝日みらい

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第1章 : 帰郷と決意

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王都魔導学院を辞め、私、リリア・モルゲンライトは、小さな荷馬車に揺られて故郷のフェルシュ村へと戻ってまいりました。

学院を辞めたことについて、後悔は少しもありません。

だって、目的はただ一つ。幼馴染のカイル・ヴァルシュタインと結ばれること───ただ、それだけなのですから。

王都を発つ日、両親は「村に戻ってきてくれるのは嬉しいけれど、学院を辞めるなんて……」と口には出しませんでしたが、その表情は寂しそうでした。

私が魔法使いとして大成し、立派な魔導士となることを誰よりも願っていたのは知っています。

それでも、私は学院に馴染めませんでした。

王都の華やかな暮らしにも、貴族のご令嬢方とのお茶会にも、優秀な魔法使いたちがひしめく授業にも、いまいち心が弾まなかったのです。

いつも頭の中には、カイルのことがありました。

今はどうしているかな、元気でいるかな、怪我をしていないかなと、そればかり考えていました。

手紙は時々やりとりをしていましたが、忙しい彼への返信はいつも短く、少し寂しい気持ちで読み返していました。

だから、もうこれ以上離れて暮らすのは嫌だと、そう思ったのです。

王都を出て数日、懐かしい村の景色が見えてきたとき、私の胸は高鳴り、期待と不安でいっぱいになりました。

久しぶりに会うカイルは、きっと私のことを少しだけ、忘れかけているかもしれません。

でも、大丈夫。

私には『初恋成就計画ノート』があるのですから。ノートの1ページ目には、すでにたくさんの作戦が書き込まれていました。

計画通りに進めば、きっとうまくいくはず!

 私は固く心に誓い、村の門をくぐりました。

村は相変わらず穏やかで、人々もあたたかく迎えてくれました。

「リリアちゃん、おかえりなさい!」

「大きくなったねぇ。王都の生活は楽しかったかい?」

行き交う村人たちが皆、笑顔で声をかけてくれます。

私も笑顔で応えながら、心の中ではカイルの姿を探していました。

そして、ついにその時が来ました。

村の広場で、鍛錬に励む騎士団員たちの中に、ひときわ大きく成長した人影を見つけたのです。

「カイル……」

私が小さく呟くと、その人物が振り返りました。

数年ぶりに再会したカイルは、私の記憶の中の彼とは別人のようでした。

背はぐっと高くなり、肩幅も広くなって、少年だった面影は消え、立派な男性へと成長していました。

声も昔よりずっと低く、落ち着いた響きになっていました。

村に戻って、最初に耳にしたのが、カイルが辺境警備騎士団長になっているという話でした。

騎士団長───その響きは、私が思い描いていた『幼馴染』という言葉から、あまりにも遠く、彼のことを少し置いていかれたような、そんな気持ちになりました。

村の女性たちは、カイルと話すたびに頬を染め、商人はこぞって彼に挨拶をしています。

人気ぶりも昔とは比べ物になりません。

私は、そんな人気者のカイルに、果たして昔と同じように話しかけられるだろうかと、少し不安になりました。

でも、大丈夫。私には『初恋成就計画ノート』があります。

「よし、これで絶対うまくいく……はず!」

私は胸の中でそうつぶやき、カイルに声をかけるタイミングを見計らいました。

すると、カイルが私のほうへ向かって歩いてくるのが見えました。

どうしよう、何を話そう───。

私の頭の中は真っ白になり、心臓がバクバクと音を立てて鳴り響きます。

「リリア、おかえり」

カイルは、優しい笑顔で私の頭を撫でてくれました。

その感触は、昔と変わらなくて、私はホッとしたと同時に、やっぱり彼が好きだと、改めて実感しました。

「ただいま、カイル」

私も笑顔で答えました。

これから始まる『初恋成就計画』に、私の胸は期待でいっぱいになりました。
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