【完結】辺境騎士団長は恋に鈍感! 元王都魔導士見習いの私、初恋成就作戦が今日も空回りしてます!

朝日みらい

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第4章:おせっかい包囲網

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魔法アピール作戦の惨劇から、私は意気消沈して村の自宅へと戻りました。

心の中は、カイルを吹っ飛ばしてしまった罪悪感と、恋の矢が届かなかった虚しさでいっぱいでした。

「カイルには、やっぱりまだ私を幼馴染としてしか見てくれていないのかな……」

しょんぼりと肩を落としながら歩いていると、雑貨屋のマルタおばさんが、店の軒先から手招きをしています。

「リリアちゃん、ちょっとおいで」

そう言われて、私は言われるがままに店先へと向かいました。

するとマルタおばさんは、ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべ、私の耳元でこっそりと囁きます。

「あんたたち、昔から仲良しだったものねぇ。カイルちゃんも、あんたが帰ってきてから、なんだか楽しそうだよ」

「え? そ、そうですか……?」

マルタおばさんの言葉に、私は思わず顔が赤くなってしまいます。

自分の勘違いではなかったのかと、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じました。

「ああ、そうさ! カイルちゃんは口下手だからね。あんたがリードしてあげなきゃ」

「り、リードなんて、そんな……」

私の言葉を遮るように、マルタおばさんは、さらにたたみかけてきました。

「そろそろ婚約かい? いつもカイルちゃんと、あんたのこと話してるんだからねぇ」

婚約───その言葉に、私の心臓はバクバクと音を立てて鳴り響きます。

それは、私が一番望んでいること。

けれど、それをカイルに伝える勇気は、まだ私にはありませんでした。

私が言葉を失っていると、近くの井戸端で話していた農婦たちも、私のほうを向いてニヤニヤと笑い始めました。

「まあ、マルタさんったら、いい加減なこと言って。でも、リリアちゃんが帰ってきて、カイルちゃんも嬉しそうだよねぇ」

「そりゃあ、そうでしょ。昔から二人は両想いだったんだから」

農婦たちの言葉に、私の頬は、さらに熱くなりました。

まるで、村人たちが私たちの背中を押してくれているようでした。

「そ、そんなことないです!」

私は必死に否定しましたが、誰も私の言葉を信じてくれません。

むしろ、さらに面白がって、私のことをからかってきます。

「昔から、カイルちゃんはリリアちゃんのこと、大切にしていたものねぇ」

「そうそう! ほら、この前も……」

おせっかいな村人たちの言葉に、私の心は少しずつ揺さぶられ、やがて確信へと変わっていきました。

もしかしたら、カイルも私と同じ気持ちなのかもしれない。

ただ、不器用だから伝えられないだけなのかも。

「もしかしたら、既成事実を作れば……」

そう思いついた私は、再び勇気を振り絞り、カイルを探しに行きました。

村の入り口で、巡回中のカイルを見つけました。

彼の騎士服が、夕日に照らされて輝いています。

「カイル!」

私が声をかけると、カイルは振り返り、私に優しい笑顔を向けてくれました。

その笑顔に、私はさらに勇気をもらって、思い切って冗談めかして提案しました。

「ねぇ、カイル。村の人が勘違いしちゃって、おせっかいなんだから。だから、いっそのこと、婚約者のふりをして、既成事実を作っちゃおうか!」

私の言葉に、カイルの笑顔が消えました。

空気が一瞬で冷たくなったように感じました。

「……そんな冗談は、誤解を招く」

真顔で言われたカイルの言葉は、わたしの胸に鋭い矢となって突き刺さりました。

ああ、やっぱり、彼は私を幼馴染としてしか見ていないのだと。

私の早とちりだったのだと、痛いほど思い知らされました。

「ご、ごめん……」

私は、それ以上何も言えませんでした。

恋愛戦線、依然として前進なし。

どころか、後退してしまったような気さえします。

私は、トボトボと自宅に戻り、また『初恋成就計画ノート』を開きました。

『既成事実案』の横には、小さく「保留」と書き記されるのでした。

この恋の道のりは、どうやら私が想像していたよりも、ずっとずっと遠いようです。
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