【完結】辺境騎士団長は恋に鈍感! 元王都魔導士見習いの私、初恋成就作戦が今日も空回りしてます!

朝日みらい

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第6章:幻獣の影

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 神官エリオットの登場で、私の『初恋成就計画ノート』は少しだけ賑やかになったものの、カイルとの関係は相変わらず平行線のままでした。

そんな平穏な日々は、ある事件によって終わりを告げました。

その日の夜、村の外れにある家畜小屋が何者かに襲われ、家畜が何頭も殺されてしまったのです。

村には、不穏な空気が漂い始めました。

翌朝、カイルは騎士団員たちと共に現場の調査に向かいました。

私も心配になって、こっそり後を追いました。

現場に広がるのは、無残な光景。家畜小屋は見るも無残に壊され、地面には血が滲んでいました。

その光景に、私は思わず息をのみました。

「これは……」

カイルは、地面に残された足跡をじっと見つめていました。

その足跡は、狼のそれよりもずっと大きく、鋭い爪の痕が深く刻まれています。

その表情は、かつて私が見たことのないほど、険しいものでした。

「カイル、この足跡は……」

「銀牙のフェルン」

私の問いに、カイルは低い声で答えました。

その声は、静かでありながら、確固たる決意を秘めているようでした。

「銀牙のフェルン……?」

私は、初めて聞くその名前に首を傾げました。

「この辺りに住む、幻獣の一種だ。体毛は銀色で、鋭い牙を持っている。通常は人里に降りてくることはないはずだが……」

カイルは、さらに険しい表情で続けます。

「村に降りてきたということは、このまま放っておけば、さらに大きな被害が出るかもしれない。村人を守るためにも、討伐するしかない」

カイルのその言葉に、私の心は燃え上がりました。

幻獣の討伐───それは、とても危険な任務です。

でも、もし、ここで私がカイルの役に立つことができれば、きっと彼も私を、ただの幼馴染としてではなく、一人の女性として見てくれるはず。

「ここで彼を守れば、きっと惚れ直される!」

私は、心の中でそう叫び、家に帰るとすぐに『初恋成就計画ノート』を開きました。

ノートの新しいページに、私は赤字でこう書き込みました。

『第三弾:幻獣討伐作戦! カイルを命がけで守り、惚れ直させる!』

ですが、カイルは当然、私のことを心配してくれます。

討伐計画を立てる際、カイルは私にそう釘を刺しました。

「リリア、これは危険だ。絶対に村から出るな」

「わ、わかってるよ!」

私は、そう言って、その場を後にしました。

カイルの言葉は、私への優しい気遣いと、確かな信頼が感じられ、私の胸は高鳴りました。

そして、魔法の練習にも熱が入ります。今度こそ、失敗するわけにはいきません。

カイルに、私の成長した姿を見せたい。

そして、彼の役に立ちたい。その一心で、私は必死に魔力を練り上げました。

村の空気は、少しずつ張り詰めていきます。

そして、やがて二人の関係を変える事件が、すぐそこまで迫っていたのです。
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