【完結】婚約破棄されたので家宝のティーセットを粉々にして追い出されましたが、元婚約者と押しかけ新婚旅行始めます

朝日みらい

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第7章 突然の嵐

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 アルセイン様がわたしの手を強く握りしめてくれた時、もうどんな困難も怖くない、そう心から思いました。

「リナリア、もう俺から離れないでくれ。お前がいないと、俺は……」

 彼の言葉は、どれほど彼に必要とされているのかを教えてくれたのです。

それから、わたしたちの新生活は、順調に、そして、とても穏やかに過ぎていきました。

 アルセイン様は、ザック様から紹介された仕事で、商隊護衛として働き始めました。故郷では騎士だったアルセイン様にとって、剣を握ることは誰よりも得意なことでした。

「リナリア、今日の夕食は何がいい?」

 仕事から帰ってきたアルセイン様は、いつもそう言って、わたしに優しく微笑みかけてくれました。

「んー……そうですね。今日は、焼きたてパンと、ハーブスープはいかがですか?」

 わたしの提案に、彼はとても嬉しそうに頷きました。彼の好物を知っているのは、なんだか、わたしだけみたいで、胸がときめきました。

わたしも、街の人々に、少しずつ手芸品を売ることができるようになっていました。

「リナリアちゃん、これ、すごく可愛いわね!うちの娘に、一つ作ってくれないかい?」

「はい!喜んで!」

 そう言って、にっこりと微笑みました。

 毎日、アルセイン様の仕事を見送り、わたしは手芸に励み、夕方には、彼が帰ってくるのを宿の窓から眺めていました。

そんな、当たり前の、でも、とても幸せな日々が、いつまでも続くのだと信じていました。


 ですが、その日は、突然、やってきたのです。

 その日も、わたしはいつものように、アルセイン様を仕事へと送り出し、一人、宿で手芸に励んでいました。

すると、部屋の扉が、コンコン、とノックされました。

「はい」

 そう言って、扉を開けました。

そこに立っていたのは、見慣れない、背の高い男でした。

「お嬢さん、少しいいですか?」

 男は、そう言って、にこりと微笑みました。

「何か、御用でしょうか?」

「いえ、少し、お嬢さんにお話ししたいことがありまして」

 男はそう言って、一歩、近づきました。

 わたしは、何かおかしい、そう直感的に思いました。

男の目が、笑っていない。

「あの……」

 わたそう言いかけた、その時。

 男は、わたしの口を塞ぎ、無理やり部屋の外へと連れ出しました。

「や、やめてください!」

 声をあげようとしましたが、男は、口をしっかりと押さえ、どこかへと連れ去ろうとしました。

 アルセイン様……!

 わたしは、心の中で、彼の名前を何度も叫びました。
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