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「算数で満点取れるはずない」
帰り道、ゆり子はため息混じりにサエコに言った。
「満点だったら。お母さん、映画館のチケットくれるんでしょ?」
サエコが口元に手をあてて言った。
「うん。でもありえない。あーあ、もういやだ。塾に行きたくない。空気みたいに消えていなくなりたいよう」
ゆり子は固くなった肩をほぐした。サエコは、同情するようにうなづいた。
「でも、みんなの成績を上げるのが塾だもの。そうしないと月謝をはらってる親が、だまってないよ」
「そうだけど。でも、サエコちゃんはいいわ。頭いいもの」
サエコは首をふった。
「ごかいよ。じゃあ、これから家に帰ってどうするつもり?」
「もちろん、ご飯食べて、あつあつのお風呂に入って寝ちゃう」
サエコはため息をついた。
「わたしは寝れないよ。授業の復習が終わるまでは。庭のプレハブ小屋で勉強よ」
「プレハブで? 何で家でやらないの」
「遅くまで勉強してるから、家族に悪いでしょ。おかげで、いつも寝不足」
「でも、どうしてそこまでするのよ?」
「お姉ちゃんが有名な私立中学に入ったの。だから、わたしもだって。親がうるさいの」
「そうなんだ。うちのお母さんもさ。お父さんみたいに苦労してほしくないって。だから有名な中学に行きなさいって」
「それ、どういうこと?」
帰り道、ゆり子はため息混じりにサエコに言った。
「満点だったら。お母さん、映画館のチケットくれるんでしょ?」
サエコが口元に手をあてて言った。
「うん。でもありえない。あーあ、もういやだ。塾に行きたくない。空気みたいに消えていなくなりたいよう」
ゆり子は固くなった肩をほぐした。サエコは、同情するようにうなづいた。
「でも、みんなの成績を上げるのが塾だもの。そうしないと月謝をはらってる親が、だまってないよ」
「そうだけど。でも、サエコちゃんはいいわ。頭いいもの」
サエコは首をふった。
「ごかいよ。じゃあ、これから家に帰ってどうするつもり?」
「もちろん、ご飯食べて、あつあつのお風呂に入って寝ちゃう」
サエコはため息をついた。
「わたしは寝れないよ。授業の復習が終わるまでは。庭のプレハブ小屋で勉強よ」
「プレハブで? 何で家でやらないの」
「遅くまで勉強してるから、家族に悪いでしょ。おかげで、いつも寝不足」
「でも、どうしてそこまでするのよ?」
「お姉ちゃんが有名な私立中学に入ったの。だから、わたしもだって。親がうるさいの」
「そうなんだ。うちのお母さんもさ。お父さんみたいに苦労してほしくないって。だから有名な中学に行きなさいって」
「それ、どういうこと?」
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