[完結]ゆり子と不思議なコピー機

朝日みらい

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 お母さんはイスに腰かけて一息ついた。壁の時計は四時を回っている。お父さんは、お盆にふたつお茶を入れて持ってきた。お父さんがすわると、ゆり子はイスの後ろに立った。

 お母さんは茶碗で冷えた手を温めながら、

「お父さん、ゆり子のことなんだけど」

と言った。

 お父さんはお茶を飲みながらうなづいた。

「あの子の笑顔を最近見ないよね。ミルキーとあそんでいる時いがい」
「そうだな。食事中もだまってるよね」
「あの子、本当は受験なんてしたくないのかも。なんだか、わたし。じぶんの気持ち、押しつけている気がして」
「そんなことない。ゆり子だって、ちゃんとわかってるさ」

 お父さんは、お母さんの肩をトントンたたいた。

「塾の学費のために、お母さんがパートしていること。ぼくがリストラで苦労したことぜんぶ。ゆり子はわかってるよ」

 お父さんは、ほこらしげにピカピカのコピー機を見た。

「これにはね。僕が考えた、最高の人工ちのうが入れてある。ただコピーするだけじゃない。自分でも学習していくようになってるんだ」
「もう、またお父さんたら、また機械の話ばかり」

 お母さんはあきれたように言った。お父さんは立ち上がった。

「いいかい。これからどう変わるかは、コピー機しだいなんだ。塾を続けるのかだって、ゆり子しだいなんだ。お母さん、ゆり子をしんじてあげようよ」
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