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ユリは、ギョッとして立ち止まった。サエコには、もちろんゆり子は見えない。
「ゆり子ちゃん、どうしたの。なにかあるの」
「ううん。なんでもない」
ユリはギュッとくちびるをかんで、ゆり子の体を通り抜けた。それでも、ゆり子はしつこく、いくども目の前に立つ。両手をふりながら、
「ドロボウコピー機。まねっこコピー機!」
とはやし立てた。いくらゆり子が空気だとはいえ、ユリには姿が見えるし、声だってはっきり聞こえる。サエコの声さえかき消されてしまうほどの大声だ。
とうとうユリはうつむいてしまった。
「ゆり子ちゃん。どこかわるいの? もしかして、本当のゆり子ちゃん?」
サエコはけげんな顔で言った。
「えっ、どういうこと?」
ユリは目をほそめながら聞き返した。
「だって、今日のゆり子ちゃん。いつもとはぜんぜんちがうから。先生の質問に何でも答えられるし」
「それは、寝ないで教科書読めば、かんたんよ」
「寝ないで勉強? 何回読んだ?」
「一回」
サエコは立ち止まった。まじまじとユリを見る。
「ねえ、さっきのイボ見せてくれる?」
「なんで?」
「昨日ボールペンをコピーした時、コピーしたほうに赤いイボが付いたよね。目印なんだよ、コピーしたっていう。まさか、ゆり子ちゃん、ほんとうに自分をコピーしたんじゃない?」
「じょうだん、いわないで」
「だったら、みせて」
「わたし、もう帰る」
ユリはきびすを返すと、かけ出した。ゆり子は追いかけた。ユリは公園のベンチに腰かけると、顔をおおった。そっと、ゆり子も座った。
「ゆり子ちゃん、どうしたの。なにかあるの」
「ううん。なんでもない」
ユリはギュッとくちびるをかんで、ゆり子の体を通り抜けた。それでも、ゆり子はしつこく、いくども目の前に立つ。両手をふりながら、
「ドロボウコピー機。まねっこコピー機!」
とはやし立てた。いくらゆり子が空気だとはいえ、ユリには姿が見えるし、声だってはっきり聞こえる。サエコの声さえかき消されてしまうほどの大声だ。
とうとうユリはうつむいてしまった。
「ゆり子ちゃん。どこかわるいの? もしかして、本当のゆり子ちゃん?」
サエコはけげんな顔で言った。
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