[完結]ゆり子と不思議なコピー機

朝日みらい

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「ユリちゃん。ちょっと待って!」

 ゆり子は、ミルキーの口に手をそえた。
ミルキーはおとなしくなった。
 ゆり子は窓ガラスをすり抜けた。

「お願いだから。やめてちょうだい」
「じゃましないで。どうせ何もできないくせに」

 ユリは口をこわばらせて言い放った。

「家族も友達もできたのよ。手ばなすわけないでしょう?」
「ユリちゃん……」
「機械だからって、こころがないと思ってたでしょう? 電気プラグにつながれて、ずっと動けない。その気持ち、わかる?」
「わかるよ。だって、空気みたいなわたしがそうだもの。何もできない気持ち、すごくわかる」

 ゆり子は胸に手を当てた。

「誰にも見向きもされないの。さびしくてつらい。ユリちゃんの気持ちすごくわかる。わたしだってそうだもん」

 ガチャガチャと、入口のドアノブが回る。それから、ドンドンとノックする音がした。窓ごしに肩で息をしているサエコが見える。

「ゆり子ちゃん。開けてちょうだい」

 ユリはゆり子をにらんだ。

「時間をかせいだのね」
「そんなつもりは……」

 ゆり子は必死に首をふった。

「ふん。ずるいわね、にんげんって!」

 ユリは金づちをコピー機のすぐ横の床に置き、ドアを開けた。
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