[完結]ゆり子と不思議なコピー機

朝日みらい

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「ゆり子、おい。ゆり子」 

 まぶたを開けると、お父さんとお母さんがぼんやり見えた。店の椅子にもたれて眠っていたらしい。

「わたし、にんげん?」
「何、寝ぼけたこと言ってるの。家中さがしたのよ」

 いつものお母さんの怒った顔。でも、こんなにうれしい。

「う、うん。あの、ミルキーは?」

 お父さんがすまなさそうに、

「もう、部屋に入れたよ。庭じゃ寒いと思って、こっそりミルキーを店に連れ込んだんだな。ゆり子、お父さん、やりすぎてごめんな」 
「いいんだよ、お父さん。わたしね、お父さんとお母さんのこと、大好きだよ。勉強だってがんばる。もちろん、じぶんのためにね」
「ゆり子、あなた、ちょっと変ね。だれかと入れ替わったりしてる?」

 お母さんは、ふざけてまゆをひそめる。ゆり子はおかしくなって、笑い出した。すると、急にユリのことが気になり出した。

 立体コピー機の前に立つと、小声で、

「ユリちゃん、おはよう」

と言った。すると、えきしょう画面に文字が出てきた。

「おはよう、ゆり子ちゃん」 

 それを後ろから見ていたお父さんが、びっくりして、

「えっ、X―300が勝手にしゃべった」
と言った。ゆり子は首をよこに振った。

「ちがうよ。ユリちゃんだよ」

 また白い画面から文字がうきだした。

「ほしいもの、言ってみてね」
「えーと、リボンがほしいな」
「ブオー」という機械音がして、穴から出てきたには黄色いハート型のリボンだった。
 お父さんはたまげて、

「自分で考えてコピーまでできる」

と言った。

 ゆり子はコピー機をなでた。

「あたりまえだよ、お父さん。ユリちゃんをしんじてあげて」

それから、そっとほおをよせて、

「大好きよ、ユリちゃん」

とつぶやいた。すると、

「わたしもよ、ゆり子ちゃん」

という文字とともに、ピンク色のハートが飛び出してきた。
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