【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

朝日みらい

文字の大きさ
15 / 40

第15章:幼少期の記憶 

しおりを挟む
舞踏会の夜が終わり、私たちはやっと静かな部屋に戻った。

エドアルドはちょっと疲れた様子で椅子に腰を下ろすと、何か考え込むように視線を遠くに向けた。

その顔が少し寂しげで、どこか遠いところを見ているような気がした。

そんな彼の姿が、なんだか気になってしまって、私は静かにその隣に座った。

「エドアルド…?」

私はそっと声をかける。

エドアルドが顔を向けて、少しだけ驚いたように笑う。

「あぁ、すまない、ちょっと昔のことを思い出してた。」

「昔?」

私は少し興味を持ち、エドアルドの方をじっと見つめた。

彼があんな風に昔のことを思い出しているのを見るのは、なんだか珍しい気がする。

「うん、リリスが病気で寝込んでいた頃…あの時のことを。」

病弱だった私のことを思い出してくれたんだ…。

そんな風に言ってもらえるなんて、ちょっと嬉しい。

でも、その記憶がどんなものだったのか、少しだけ不安にもなってしまう。

「覚えてるか?」

エドアルドが私に話しかけてくる。

「お前がまだ小さかった頃、すごく具合が悪くて、病室に閉じ込められていたんだろう?」

「うん…覚えてるわ。」

私は少し照れくさそうに答える。

「あの時、どうしても病室から出られなくて、ずっと退屈していたんだよね。」

その時、エドアルドはちょっと苦笑いをして、私に手紙を渡してくれたのを思い出す。

その手紙は、当時病弱だった私を励まし、少しでも元気づけようとしてくれるものだった。

「君が寝てる間に、俺が見舞いに来たんだ。小さな手紙を持って。そうしたら、君が目を覚まして…。」

エドアルドの目が少し遠くを見て、まるで当時の私と一緒にいるかのように語り始める。

「お前が見てくれたのを覚えてる。」

あぁ、あの時のことだ。

エドアルドは私のためにわざわざ手紙を書いてくれた。

それも、病気で寝込んでいた私を励ますために。

私はその手紙を何度も読み返して、毎日少しでも元気を出すように努力していた。

エドアルドが来てくれた日には、顔に少しでも笑顔を浮かべたかったから。

「お前はいつも笑っていて、俺に『大丈夫』って言ってくれた。」

エドアルドの声が優しくて、ちょっと切なげ。

「でも、俺はその笑顔がすごく辛そうに見えたんだ。」

その言葉が私の胸にしんと響いて、ちょっと涙が出そうになる。

でも、何だか嬉しいような、心が温かくなるような、不思議な気持ちが湧き上がる。

「その時から、俺はお前に特別な気持ちを抱いていたのかもしれない。」

エドアルドが突然、少し真剣な顔で言った。

私もその言葉に驚いて、思わず目を大きく見開いてしまう。

「え…特別な気持ち?」

私はちょっとドキッとしてしまった。

まさか、あの頃からそんなふうに思っていてくれたなんて、全然知らなかった。

エドアルドは少し照れたように笑って、「そうだな。お前があんなに一生懸命に笑ってくれて、俺もその笑顔を守りたくなったんだ。」

その笑顔が私に向けられた瞬間、私の心がほんの少しだけ軽くなった気がした。

「でも、気づくのが遅かったんだ。ずっとお前のことを大切に思っていたけれど、どうしていいかわからなくて…冷たくしてしまった。」

エドアルドは目を閉じて、少しだけ息を吐く。

私は思わずその手を握りたくなった。

エドアルドがそんな風に思っていたなんて、知らなかった。

でも、その言葉が私の心に深く響いて、何だかとても温かい気持ちになった。

「私も…エドアルドに助けられたんだよ。」

私は少し顔を赤くしながら、彼を見つめた。

「あの時、病気で辛かったけど、エドアルドの手紙をもらってから、すごく頑張れた。笑顔を見せようって、元気を出そうって思えたんだよ。」

エドアルドはその言葉を聞いて、少し驚いた顔をしていたけれど、すぐににっこりと笑った。

「そうか、俺がそんな風にお前に力を与えられたなら、嬉しいよ。」

その言葉に、私はさらに心が温かくなる。

でも、なんだか恥ずかしくて、少し顔をそむけたくなったけど、エドアルドはそんな私を見逃さなかった。

「顔を赤くして、可愛いな。」

エドアルドがニヤッと笑いながら言う。

「もぉ、そんなこと言わないでよ。」

私は恥ずかしそうにふくれてみせる。

でも、心の中では、すごく幸せな気持ちが広がっていた。

その後、エドアルドは私の手をぎゅっと握りしめて、「これからもずっと、お前を守るから。」と、優しく囁いてくれた。

その言葉に、私は思わず頷く。

今、こうして隣にいてくれる彼が、私にとってどれほど大切な存在になっているか、改めて感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

婚約者を奪われ魔物討伐部隊に入れられた私ですが、騎士団長に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のクレアは、婚約者の侯爵令息サミュエルとの結婚を間近に控え、幸せいっぱいの日々を過ごしていた。そんなある日、この国の第三王女でもあるエミリアとサミュエルが恋仲である事が発覚する。 第三王女の強い希望により、サミュエルとの婚約は一方的に解消させられてしまった。さらに第三王女から、魔王討伐部隊に入る様命じられてしまう。 王女命令に逆らう事が出来ず、仕方なく魔王討伐部隊に参加する事になったクレア。そんなクレアを待ち構えていたのは、容姿は物凄く美しいが、物凄く恐ろしい騎士団長、ウィリアムだった。 毎日ウィリアムに怒鳴られまくるクレア。それでも必死に努力するクレアを見てウィリアムは… どん底から必死に這い上がろうとする伯爵令嬢クレアと、大の女嫌いウィリアムの恋のお話です。

妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。

光子
恋愛
  お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。 お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。 本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。 ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。 「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」 義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。   「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」 家同士が決めた、愛のない結婚。 貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。 だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。 「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」 お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの? そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる! リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌! 私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。 「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」 でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。 「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」 この日から、私の立場は全く違うものになった。 私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました

er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。 宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。 絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。 近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。

処理中です...