【完結】公爵家の養女、実娘発見で即追放……でも辺境の冷徹伯爵に拾われて、なぜか溺愛されてます ~

朝日みらい

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第5章 婚約破棄の宣告

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 舞踏会での一件以来、わたしは社交界から遠ざけられていました。

義母イザベラ様は、わたしが公爵家の名誉を傷つけた、と公言し、わたしを公の場に出すことを禁じたのです。わたしは、部屋に閉じこもる日々が続いていました。

窓の外を眺めても、そこにあるのは、わたしのことを忘れてしまったかのように、ただ静かに流れていく時間だけ。

 セリーヌ嬢は、そんなわたしを、時折、にこやかな笑顔で見舞いに来ては、「お姉様、わたしが早く戻ってきてよかったわね。これからは、わたしが公爵家の役に立つから」と、皮肉を込めた言葉を囁いていきました。

 アラン様からも、連絡はありませんでした。

 舞踏会でわたしに浴びせられた、あの冷たい視線と、「場をわきまえろ」という言葉が、心に深く刺さったままでした。

政略での婚約だったとはいえ、わたしは彼にかすかな希望を抱いていたのです。けれど、彼は、わたしを信じてくれることはありませんでした。

その事実が、わたしをさらに深く、絶望の淵へと突き落としていったのです。

そんな、どうしようもない孤独と絶望の中で、ついに、その日がやってきました。

 豪奢な夜会の真ん中で、アラン様から呼び出されたわたしは、凍えるような寒さの中、彼のもとへ向かいました。

隣にはセリーヌ嬢。勝ち誇り、楽しげに笑うその姿が、刃のように胸を切り裂きます。

「僕はセリーヌ嬢と結婚する。君との婚約は、ここで終わりだ」

 冷たく響くその声。人々がざわつき、視線と嘲笑が突き刺さります。

「……わかりました」

 震える声で答えたとき、胸の奥で、かすかな望みが静かに砕け、崩れ落ちるのを感じました。

 その時でした。

 わたしの足元に、白い薔薇がそっと差し出されました。

 驚いて顔を上げると、会場を抜けた先の回廊に、黒い外套をまとった人物が立っていました。

人波に迷わぬよう、そっと導かれるように外へ出ると、月明かりの下で、彼が小さく頷きました。

「あなたは……誰、なのですか?」

 震える声で問いかけても、彼は微笑んだように見えるだけで、名を明かそうとはしません。

ただ封筒を渡し、低く穏やかに続けました。

すぐに後方から人の気配が近づき、彼は踵を返して去ろうとします。

「待って……!」

 必死に手を伸ばしましたが、触れることはできませんでした。

 白薔薇を胸に抱きしめたまま、わたしは立ち尽くしました。

ただ、彼が乗り込んだ馬車が月明かりが鮮明に照らしていました。

「ありがとう……」

 呟いたわたしの胸には、白薔薇と彼の言葉が、確かな温もりとして残っていました。

 いつか、名も知らぬ“白薔薇の騎士”が、必ず自分を――。

絶望の淵に沈んでいたわたしの心を、わずかに救い出す光となったのです。
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