【完結】婚約解消だったので、嫌われ者の侯爵に嫁ぐことにしました。

朝日みらい

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第11章: 過去の婚約者との再会

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あの日、まさかこんな形で再会するとは思わなかった。

セシリアとしては心の中で「何でこんなタイミングで?」と叫びたくなるほど驚いていたのだ。

庭で静かに花を手入れしていると、背後から知らない声がした。

「セシリア、君だったのか。」

思わず手が止まる。

「セシリア、こんなところで会うとは思わなかった。」

彼の声が、あまりにも懐かしくて。

私は思わず振り返ってしまった。

彼の姿は以前とは少し違って、すっかり大人になったけれど、相変わらずの王太子らしいオーラを放っている。

「レオナルド…どうしてここに?」

言葉がつっかえてしまう。

私の心の中は、彼との再会で混乱している。

思い出したくない記憶もあるけれど、やっぱり彼のことが心のどこかに残っているのも事実だ。

「君がここで花を育てているなんて、不思議だと思ってね。」

レオナルドは少し微笑みながら言うけれど、その目はまるで何かを探すように私を見つめている。

「花を育てるくらい、誰にでもできますよ。」

私はできるだけ軽く答えたつもりだったけれど、内心ではドキドキしていた。

だって、レオナルドは私の婚約者だった男。

あの頃は、確かに未来を共に過ごすつもりでいた。

でも今は…今は、もう全然違う世界にいる。

「そうかもしれないな。」

レオナルドが少しだけふっと笑った。

その笑顔が、あの頃と変わらない優しさを感じさせるから、余計に胸が苦しくなる。

「君が幸せなら、それでいいんだ。」

その言葉に、私の胸はますます痛くなる。

だって、あの時の私と今の私、全然違う。

アレクシスと結婚して幸せを少しずつ感じている。

楽しかったこと、歯がゆかったこと。いろんな出来事が頭の中で弾けて、ちょっとだけ苦笑いを浮かべる。

「ありがとう。でも、幸せとかって、そんな簡単に言えることじゃないのよ。」

私の言葉には、少しだけ厳しさが滲んでいた。

それは、レオナルドが私に向けた優しさを受け入れることができないから。

だって、私はもうアレクシスと一緒にいるんだもの。

レオナルドはその言葉に少しだけ黙り込む。

そして、遠くを見つめるようにして静かに言った。

「君にとって、僕はもう過去の人なんだな。」

その言葉に、私は少し驚いた。

そんなふうに言われるなんて思ってもいなかったから。

けれど、心の中で、確かに彼とはもう過去のことだと思う自分もいる。

もう何もできないんだと思うから。

「違うわ、レオナルド。あなたのことを嫌いになったわけじゃない。ただ…私の中で、もう終わったことなの。」

そう言うと、少しだけ気持ちが軽くなる気がした。

レオナルドは少しだけ私を見つめてから、ゆっくりと歩き出した。

「君の気持ちがわかるよ、セシリア。僕も、君が幸せであればそれでいい。」

その言葉には、なんとも言えない哀しみが込められていて、私は胸が痛くなった。

「ありがとう。」

私は素直にその言葉を受け入れた。

でも、どこか心がザワザワしているのも確かだった。 

レオナルドが去った後、私はしばらくその場で立ち尽くしていた。

突然、背後から「セシリア。」と、アレクシスの声が聞こえる。

私は思わず振り返ると、彼がちょっと険しい顔をして立っていた。

「アレクシス…」

私は少し驚いて声をかけたけれど、アレクシスは私をじっと見つめた。

彼の目には、少しの不安と、何か強い感情が浮かんでいるのがわかる。

「レオナルドと話していたのか?」

アレクシスが低い声で言った。

その声に、私の心はどきっとする。

どうしてアレクシスがこんなに気にするのか、私にはよくわからない。

「うん、少しだけ。」

私は少しだけため息をつきながら答えた。

何だか、レオナルドとの会話があまりにも重すぎて、アレクシスに対して気まずさを感じてしまう。

「それで、何か感じたのか?」

アレクシスはまだ私をじっと見ている。

彼の視線はどこか鋭くて、まるで私の心の中を見透かしているかのようだった。

「感じたって…別に、ただの過去の話よ。」

私はなるべく軽く答えたけれど、その時、アレクシスが少しだけ近づいてきて、私の目を見つめた。

「君が僕に言うべきことがあるんじゃないか? 好きだったんだろ?」

アレクシスがそう言うと、私は一瞬だけ動揺してしまった。

「アレクシス…」

私はその言葉を呑み込みながら、心の中で何かが弾けるような感覚を覚えた。

「…ごめん。確かに王太子殿下に惹かれた時もあったけど、今は…。」

「ほう、やはり殿下が好きだったんだな」

アレクシスはそう言って背を向けると、足早に立ち去ってしまった。
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