[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

おかしな同級生

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「2週間前に、娘さんと名乗る人物から電話がありまして。会社で預かっていた1億という大金を紛失してしまったというのです。

　ご夫妻は心配するあまり、玄関に来たバイクの男に金を手渡してしまったそうです。

　彼女はその犯人を探して欲しいと、昨日、依頼してきました」

　それから間を置いて、探偵は話を続けた。

「こんな夜分にいらっしゃたのは、旦那様が今朝自宅で首をつったという報告をしにきたからなんです。あまりにもショックだったでしょう…」
「何で酷い…」

　光子は絶句した。

「どうして騙されたのかしらね。わたしなら、絶対やられないなあ。と、いうか、1億無いから」

　類子は生意気にふんと鼻をならしたが、探偵はいやいやと首を振る。

「金額は別にしてだよ。犯人はちゃんと自分の名前を名乗ったんだ。

　それに代わる代わる、彼の恋人やら会社の同僚、それに上司まで登場したそうだ。

　それが余りに真に迫っていたものだから信じてしまったんだろう。

　要求した1億円だって、ちょうど自宅の金庫にしまってあったものだったんだ」

「まあね。かなり用意周到かも」
　類子も納得した。

　光子はジュースを飲んでから、塩崎の待つ車に戻った。
　
　すでに11時を過ぎていた。今日１度も薬を飲んでいなかったことに、光子は気づいた。

「素敵なお友達ですね」

　塩崎がバックミラー越しに言うと、光子は微笑み返した。

　そして、ゆるやかに塩崎は、アクセルを踏んだ。