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赤い記憶が戻る時
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「それで、仮面の女が出てきたわけだよね。それで?」
中年の刑事が助け舟を出した。
「それで、仮面の女は私にナイフを持って近づいてきました。そして、ナイフの柄を私に差し出すと、胸に突き刺せと言ってきたのです。出来ないと言うと、こうやるんだって女が自分で刺したんです。血が…血が噴き出してきて…目の前が真っ暗になりました」
「つまり、仮面の女が刺したっていいたいわけか?金持ちのバカ野郎」
若い刑事が、彼女の頬に顔を近づけ、鼻で匂いを嗅いだ。
中年の刑事がゆっくりと身を乗り出した。
「つまり、幻覚が起きてから気絶。気が付いたら死んでいたという訳か。でも、幻覚というのは実在しないわけだし。君が殺したということになると思うんだけど。つまりはだよ。麗子さんをあなたは仮面の女と勘違いしてしまったわけだ。錯乱した君はナイフで刺してしまった。麗子さんは必死で助けてもらおうと受話器を握った。そうこう解釈なら、我々も納得できる。それでいいかな?」
「…わかりません」
「分からないじゃ困るんだよ、お嬢ちゃん!」
若い刑事がどやしつけた。
中年の刑事は笑った。
「そんなに難しい問題じゃないと思うんだ。そうだったのか、そうじゃなかったのか。それだけの単純な問題だよ。どこかの小学生のガキでも分かる話でね。部屋は密室だったんだし、事件当時は二人しかいなかったわけだしさ。君の言っているのはただの責任逃れの言い訳にしか聞こえないんだ。殺したのなら素直に言ってしまえばいいんだ。そうすれば取り調べも終わるよ。さあ、イエスと言ってしまえばいい。そうなんでしょう?」
光子はぼんやりと2人の男を見た。
イエスと言ってしまえば、すぐこんな狭い部屋から出してもらえる。
刑事もこの案件から解放されて、定時でうちに帰ることが出来る。
そう思って、口を開こうとした時だった。
刑事たちの背後で突然、仮面の女が立ち上がった。
薄気味悪い笑みを浮かべながら。しかし刑事たちは何事もなく、腕を組んだまま自供を待っている。
女はゆっくりと刑事たちの横を通り、光子の顔をまじまじとのぞき込んだ。
仮面の切り取られた赤い瞳と目が合う。
恐怖のあまり、頭がヒリヒリと痛む。
気が遠くなって、視界があやふやになる。
でも、光子は逃げまいと膝をつねった。
どうせ、私は犯罪者なのだ。
これから刑務所に送られる。
中年の刑事が助け舟を出した。
「それで、仮面の女は私にナイフを持って近づいてきました。そして、ナイフの柄を私に差し出すと、胸に突き刺せと言ってきたのです。出来ないと言うと、こうやるんだって女が自分で刺したんです。血が…血が噴き出してきて…目の前が真っ暗になりました」
「つまり、仮面の女が刺したっていいたいわけか?金持ちのバカ野郎」
若い刑事が、彼女の頬に顔を近づけ、鼻で匂いを嗅いだ。
中年の刑事がゆっくりと身を乗り出した。
「つまり、幻覚が起きてから気絶。気が付いたら死んでいたという訳か。でも、幻覚というのは実在しないわけだし。君が殺したということになると思うんだけど。つまりはだよ。麗子さんをあなたは仮面の女と勘違いしてしまったわけだ。錯乱した君はナイフで刺してしまった。麗子さんは必死で助けてもらおうと受話器を握った。そうこう解釈なら、我々も納得できる。それでいいかな?」
「…わかりません」
「分からないじゃ困るんだよ、お嬢ちゃん!」
若い刑事がどやしつけた。
中年の刑事は笑った。
「そんなに難しい問題じゃないと思うんだ。そうだったのか、そうじゃなかったのか。それだけの単純な問題だよ。どこかの小学生のガキでも分かる話でね。部屋は密室だったんだし、事件当時は二人しかいなかったわけだしさ。君の言っているのはただの責任逃れの言い訳にしか聞こえないんだ。殺したのなら素直に言ってしまえばいいんだ。そうすれば取り調べも終わるよ。さあ、イエスと言ってしまえばいい。そうなんでしょう?」
光子はぼんやりと2人の男を見た。
イエスと言ってしまえば、すぐこんな狭い部屋から出してもらえる。
刑事もこの案件から解放されて、定時でうちに帰ることが出来る。
そう思って、口を開こうとした時だった。
刑事たちの背後で突然、仮面の女が立ち上がった。
薄気味悪い笑みを浮かべながら。しかし刑事たちは何事もなく、腕を組んだまま自供を待っている。
女はゆっくりと刑事たちの横を通り、光子の顔をまじまじとのぞき込んだ。
仮面の切り取られた赤い瞳と目が合う。
恐怖のあまり、頭がヒリヒリと痛む。
気が遠くなって、視界があやふやになる。
でも、光子は逃げまいと膝をつねった。
どうせ、私は犯罪者なのだ。
これから刑務所に送られる。
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