[完結]癒し系魔術師のわたしは冒険者パーティーから追放されたので、諸事情により魔王様と結婚してみることにします

朝日みらい

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6 迎えの準備

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 深い森を抜けた先に、魔王の城はそびえ立っていた。
 
 五階建ての、灰色の石壁には幾層にも蔦が張り付き、三本の尖った塔は空高く突き上げている。

 手前の池は苔で深い緑色に染まり、芝生はぼうぼうと草が生いしげっている。

 フローラルは、眉をよせながら、

「アーゴイルさん。ここの手入れはなさっているんですか?」

「手入れ? 何だ、それ」

「お城とか、お庭とかは、定期的に掃除しないと汚いし、来賓の皆様にも失礼になりますよ」

「そうなのか? もう百年だれも客人なんて来たことないからな」

「では、百年、何もしてない?」

「まったく、手ずかずだ」

「ちなみに、その百年前にはいったい、どんなことがあったんですか?」

 興味本位で聞いたが、アーゴイルはなぜか答えず、

「それで、どうやってもてなしたらいいんだ?」

 フローラルは口元に指をあてて、思案しながら、

「まずは、ぼうぼうの草を綺麗に切りそろえる。池の水は一旦抜いて掃除して、綺麗な水を入れなおす。それから、蔦を除去して壁は綺麗に洗って本来の壁の白を出します。でも、半日でできますか?」

 一気にやるべきことを行ってみたものの、果たしてできるか、首を傾げていると、

「できるんじゃないか」

と、アーゴイルはいとも簡単に言い放つ。

 そして、パチンと指を鳴らし、カラスを一匹呼び寄せ、

「メーギュ五匹に、ウサガエルを八匹、それにノミホスを三匹をよんでこい」

と、命じた。

 すると、五分も経たないうちに、次々と奇妙な怪物たちが現れる。

 最初にやってきたのは、頭がヒツジなのに、胴体が牛の姿のメーギュ。
 眠そうな顔をしながら、黙々と草を食んでいく。

 次にぴょんぴょん跳んできたウサギ。と思ったら、足裏はカエルの吸盤で、思い切り城の壁にジャンプすると、四本でぺたりと張り付く、ウサガエル。

 もぐもぐと蔦を食べ、歩くごとに、壁の汚れが吸盤に張り付き、歩くごとに壁が白くなっていく。

 最後に来たのは、体はのそのそと巨大なトカゲなのだが、顔は象の鼻の、ノミホス。池に鼻を突っ込むと、ホースのように水を飲み込んで、たちまち池の水を抜いていく。
 
 ぞろぞろと、オークやゴブリンたちもやってきて、池の溜まった泥を掻き出してくれる。

 フローラルも、フリルの袖をまくり上げ、ブーツを脱ぎすて、泥水に入り、
「ようし。わたしも、やるかな」

 何だか嬉しくなってきて、泥だらけの池に生えた藻などを取り除き始める。

 アーゴイルは、呆れた顔で腕を組みながら、

「やれやれ。俺は泥が嫌いだ」
 
とつぶやいて、城内へと入っていった。


 △ △ △
 

 フローラルは、ふと、故郷の畑仕事のことを思い出す。

 父は仕事がない時は、実家の田んぼや畑で泥だらけになって、働いた。

 そんな時は、いつも幼いフローラルも近くでいっしょに作業をしたり、泥遊びをしていたものだ。

 フローラルは父の魔獣との戦いの話をしながら、

「本当は、殺したくないんだよ」

と、さびしそうにつぶやいたのを、フローラルはまだ、脳裏にこびりついている。


 □ □ □
 

 夢中になって泥いじりをしているフローラルの横で、

「こんなに泥だらけになっても、気にしないんだね」

と、聞き覚えのある男の声がした。

「……魔王様?」
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