とまどう気球

朝日みらい

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 駅は、馬車で一時間くらいかかる。ラーラとお父さんは荷台のイスに並んで腰かけた。

「ラーラは、さびしいかったかい。僕がいなくても」 
「慣れっこよ、私」

 ラーラは嘘をついた。

「つよいな、ラーラは」
「うん、お父さんの娘だもん」

 お父さんはラーラの頭をグリグリした。

 大きな駅に着いた。煙をはきながら、真っ黒の蒸気機関車が停まっている。そこにはたくさんの人たちでごった返している。

 ラーラは、まいごにならないように、お父さんのコートのはしをにぎっていた。

 東の方にある改札口を出て、大通りを歩いていくと、りっぱな本屋があった。その店先には、長だの列ができている。その人たちはみんな、お父さんの冒険体験記の本を持っていた。

 お父さんが手をふると、みんなが歓声をあげた。お父さんはカウンターの横に設けられた机で、一人一人ていねいにサインをして手を握っている。

 その背中を、ラーラはポケットに手を入れて、小石をまさぐった。まるでお父さんが他人の背中に見えてくる。

 お父さんであるはずなのに、あまりに大きくて、ラーラには手のとどかないところに行ってしまったみたいだ。

 小石が、手の中でカラカラ鳴った。
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