【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(47)「頼りにしていい?」

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カイゼルに抱きしめられたまま、アリシアは自分の心があまりに満たされていることに気づいた。

これまで、誰にも本当に頼れることなんてなかった。

家族に裏切られ、国で冷遇されてきた彼女には、誰かに頼ることなんて恐ろしいことだった。

だって、誰も彼女を守ってくれなかったから。

でも、カイゼルだけは違った。

「カイゼル様…」

アリシアはそっと顔を上げ、彼の胸に顔を寄せながら言った。

「あなたがいると…本当に安心する。」

カイゼルは優しく彼女の髪を撫でる。

「それは嬉しいな。でも、アリシアが安心してくれるのが一番だ。」

その言葉に、アリシアはくすっと笑って、彼の胸に顔をうずめたまま言った。

「でも、こんなに優しくされて、逆にドキドキしちゃいますよ。ほんとに、カイゼル様ってば…」

「ドキドキ?」

カイゼルは少し困ったように首をかしげて、でもどこか嬉しそうに言った。

「そんなに驚かせてどうするんだ。俺がドキドキさせるなんて、全く意識してなかったが?」

「ええっ、そんな…」

アリシアは顔を赤くしながら、少しだけ顔を離してカイゼルを見上げた。

「カイゼル様は普段からすごく優しいから、私、心臓がバクバクしてるんです。」

「バクバク?」

カイゼルは少し意地悪く微笑んだ。

「なら、もっとドキドキさせてやろうか?」

アリシアは一瞬驚いて目を見開いたけれど、カイゼルの真剣な表情に胸が高鳴る。

彼の顔が少し近づいてきて、アリシアは思わず目を閉じてしまった。

そして、カイゼルの唇が軽く、でも確かにアリシアの額に触れた。

「…なんて、言うと思ったか?」

カイゼルはそのまま、アリシアの顔を見つめてくすくす笑った。

「まだまだだな、アリシア。」

「え?」

アリシアは顔を赤くしながら、カイゼルを睨んだ。

「そんな、ちょっとひどいじゃないですか!」

「ごめんごめん、冗談だよ。」

カイゼルはニヤニヤしながら言いながら、アリシアを引き寄せてくれる。胸の中で「大好きだ」って言いそうに

なって、でもどうしても言えなかったその言葉を胸にしまい込んで。

「でも、アリシア、ほんとにお前がドキドキしてるのはわかってるよ。」

カイゼルはもう一度彼女の髪を撫でながら、真剣に言った。

「俺もお前が大切で、大好きだから。」

その言葉に、アリシアの心は温かくなり、同時に何だかキュンとした。

「カイゼル様…」

アリシアは思わず小さな声で答え、再び彼に顔をうずめた。

「こんなに幸せで、こんなに頼れる人がいるなんて…」

アリシアは少し涙がこみ上げるのを感じながらも、幸せそうに微笑んだ。

「本当に…ありがとうございます。」

カイゼルはそんな彼女を見て、少し驚いた顔をしてから、すぐにその目を柔らかくした。

「アリシア…お前が泣くのは、ちょっと見ていられないな。」

彼は優しく彼女の頬を撫で、続けて言った。

「でも、これからは泣かせないようにする。お前が笑っている顔が、一番素敵だから。」

「本当に、カイゼル様は…」

アリシアは再び照れくさそうに笑いながら、彼の胸に顔を埋めた。

「こんなに優しいのに、意地悪よ。」

「そうだろう?」カイゼルは目を細めながら、アリシアをそっと抱きしめる。「でも、こんなに可愛いアリシアを見てると、つい意地悪したくなるんだ。」

アリシアはその言葉にもう一度顔を赤くし、「可愛いなんて…」と、またも言葉が詰まってしまった。

「カイゼル様、もう、なんだか…」

そのまま彼の腕の中で心地よい静けさに包まれながら、アリシアはふと気づく。

「あの、カイゼル様…」

アリシアは少し真面目な顔をして言った。

「今、私…すごく大切にされているって思ってます。本当に、ありがとう。」

カイゼルはアリシアの言葉に微笑みながら、もう一度彼女を強く抱きしめた。

「お前が幸せでいるなら、それが俺の一番の望みだ。」

そして、二人はそのまま静かに寄り添い合った。
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