【完結】薔薇の仮面 ~演劇大好き少女は公爵様に溺愛されて~

朝日みらい

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第39章 王と女優の誓い

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「……はぁ?」  

宮廷中に響き渡ったのは、重苦しい沈黙と――驚愕のどよめき。  

そしてその中心に、堂々とした姿勢で立つのは、私の最愛の人――ヴァルター。  

「今、なんと仰いました、陛下……?」  

「何度も言わせるな。」  

ヴァルターは鋭い眼光を持ったまま、宮廷の重臣たちを見渡した。  

「俺はマリアと結婚する。」  

「っ!!」  

再び、どよめきが広がった。  

「お待ちください、陛下! その娘は――」  

「役者です!!」  

「前例がありません!!」  

「貴族でさえない女を王妃にするなど、王国の威信に関わります!!」  

重臣たちの声が重なり、反対意見の嵐が巻き起こる。  

「……ふ、ふふ……」  

私は思わず苦笑いを漏らした。  

いや、まぁ、当然だよね……。  
宮廷の重臣たちから見れば、私は「王に愛された平民の役者」。  

こんな私が王妃になるなんて、前代未聞だし、到底受け入れられないだろう。  

だけど――  

「ふざけるな!!」  

ヴァルターが、怒声とともに拳を玉座の横にある机に叩きつけた。  

「マリアは俺の妻になる女だ。前例がない? なら、俺が新たな歴史を作るまでだ!!」  

「っ!!」  

宮廷の空気が凍りつく。  

「王族が平民と結婚するなど、前代未聞でございます!!」  

「そうだ! 王妃は国の象徴!! 血筋や格式を無視しては、国の未来に関わるのですぞ!!」  

「マリアが平民だと? 格式がないと?」  

ヴァルターは鋭く言い返す。  

「ならば問うが――お前たちはマリアの何を知っている?」  

「……は?」  

「彼女がどれだけ強く、どれだけ人を愛し、どれだけ俺を救ってくれたか……。お前らは何も知らない。」  

「陛下……!!」  

「俺は、王だ。」  

ヴァルターの声は低く、重く響く。  

「王である以上、俺の選んだ女を王妃にするのに、誰の許しもいらん。お前らの意見など関係ない。」  

「し、しかし……っ!!」  

「逆に聞くが、俺よりマリアを王妃に相応しくする女が他にいるのか?」  

誰も、何も言えなかった。  

「彼女は俺の命だ。俺の心だ。」  

そう言って、ヴァルターは堂々と私の手を握りしめた。  

「誰が何を言おうと、俺の隣に立つのはマリア以外にありえねぇ。」  

「……っ!!」  

涙が……溢れそうになる。  

「そんな……役者風情を王妃にするなど、前代未聞……」  

「――なら、俺が新たな歴史を作るまでだ!!」  

ヴァルターの叫びは、王宮全体に響き渡った。  

「お前ら、覚えておけ。」  

ヴァルターは重臣たちを一瞥する。  

「マリアを受け入れられない者は、ここから去れ。俺の王妃を侮辱するなら、この国に仕える資格はない。」  

「な……!!」  

「俺に忠誠を誓うのなら、マリアを王妃として敬え。それができねぇ奴は、今すぐ王宮から出ていけ!!」  

重臣たちは色を失った。  

「……陛下……」  

「もう一度言う。俺の隣に立つのは、マリア以外にありえねぇ。」  

もう……だめ。  

涙が……止まらない。  

「ヴァルター……っ!!」  

「お前を離すもんか……!!」  

私の腕を強く抱きしめながら、彼は私の耳元で囁いた。  

「こんな宮廷の連中なんて関係ねぇ。お前だけいれば、俺は王として立っていられる。」  

「私……っ」  

「マリア。覚悟しとけよ。」  

「え?」  

「これから先、俺はお前を甘やかしまくるからな。」  

「な、なにそれ……っ!?」  

「王妃だろ? 当たり前だろ。」  

「もうっ……!!」  

恥ずかしすぎる……!!  



数日後――  

最初は反発の声が強かったものの、ヴァルターの断固たる姿勢と、私の人柄を知ることで、徐々に宮廷の人々も私を受け入れ始めた。  

「……マリア様、今朝の装い、とてもお美しゅうございます。」  

「え、えっ……!? あ、ありがとう……!!」  

「さすがは陛下が選ばれたお方……。」  

「王妃としての素質は十分かと。」  

「ちょ、ちょっと待って!? なんか昨日と態度が違くない!?」  

「ははは! 当然だろ。」  

ヴァルターが腕を絡ませてきた。  

「王妃様なんだから、もはや全ての人間が跪くしかないんだよ。」  

「そ、そんな……!!」  

「いいから、俺だけ見てろ。マリア。」  

「う……うん……っ!!」  

そして、私たちの未来は――  

新しい歴史とともに、確かな愛に満ちたものになっていくのだった。  
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