【完結】おばあちゃんのうちに

朝日みらい

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第3話

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 改札で、切符をだそうとしたときだ。ポケットにいれたはずのサイフがなくなっている。なさぐってみて、ハッとした。気づかないうちに、ポケットのそこに穴があいていたんだ。

「ボク、どうかしたの?」

 マスクをつけた駅員のおねえさんがかがんで、ぼくの顔をまっすぐ見つめている。

 わけを話すと、駅員さんはすぐに時刻表をしらべてくれた。

「ボクの乗ってきた電車に、サイフがまだあるかもしれないわね。みつかったら、電話してあげるね」

 ぼくはケータイの番号をおしえた。そして、落とし物の届け出の紙になまえと住んでいる場所をかいた。

「おうちのひとをよぼうか? お父さんとかお母さんとか電話してみる?」

 ぼくは、くびをふった。 

「ぼく、ひとりでおばあちゃんちに行くんだ」

「でも、どうしてひとりでいかなきゃならないのかな?」

「おばあちゃんは足がわるいの。それに、今、病気がこわくて、外にもなかなか出れなくて。それでも、おばあちゃん、ひとりぼっちでがんばってる。だからぼくだって……」

 これいじょう、何もいえなくなって、下をむいた。

 駅員さんは、しばらくだまっていた。それから、そっと、ぼくの肩をたたいた。

「きょうの切符はいらないです。改札のわきをそのまま出ていいから。ボクががんばったら、おばあちゃんだって、げんき出るよ」

 ぼくは「ありがとう」となんどもうなずいた。それから、おじぎしながら改札口をぬけた。
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