[完結]婚約破棄されたけど、わたし、あきらめきれません

朝日みらい

文字の大きさ
4 / 15

4 成り上がり令嬢

しおりを挟む
 リリアナは、王立学園の二年で、『平民組』の魔法学科に所属している。

 そもそも、リリアナは五歳で縁あってカリストル男爵家の養子となり、優秀な成績で国内トップクラスのこの学園に入学した。

 カリストル男爵は、金貸しで財を成した成り上がりの貴族である。遠い親戚で農家の娘に過ぎなかったリリアナの賢さと美貌に目を付け、将来は王家に嫁がせようと画策したのだ。
 
 男爵の計画通りに、積極的にクリストフ王子に近づき、顔を覚えてもらうよう、何かと出会う機会を持つように意識してもらう。

 早朝の花壇の手入れもその一環で、正門前の円形花壇を率先して、登校してきたクリストフ王子に、健気で純真さをアピールするためだった。

 もちろん花好きという、義父からの情報を仕入れてからの行動だ。

 でも、数日前のクリストフ王子とエミエル公爵令嬢との破談が明るみになると、二人を破談においやった張本人というレッテルで、友人のほとんどが去って行った。

 (けれど)

 リリアナは、草いじりをしながら、ほくそ笑む。いじめなれ、罵られればするほど、クリストフが自分を守ろうとするだろう。

 エミエルがクリストフに手紙を返信してから、一週間後のことだった。

「あらあら、けなげに朝っぱらから、手入れですか?」
 
 計画通りに、エミエルの取り巻き連中が、リリアナを取り囲む。
 
 しめしめ、マリア、アン、シュリの、三人組である。


「ここで、また王子様とイチャイチャするんだよね?」
「おめでたいわね」
「男爵家の成り上がりのくせに。どうせ、結婚なんてできないわよ」

 口々に罵声を浴びせられて、リリアナはわざと口惜しいとばかりに唇を噛みしめる。

「ふん。だったら、あたしたちも手伝ってあげるわ。土いじり」
 
 シュリから、パラパラと砂をかけられたが、リリアナは耐えた。

 今度はアリを手にしたアンが、リリアナの制服の襟元から入れたので、さすがに、
「キャッ」と小さな叫び声を上げて、飛び上がった。

「そら、水やりもしなきゃね」

 さらに、マリアが置いてあった水差しを取り上げて、リリアナに引っかけようとする。

「やめなさい、君たち」

 鋭い、男性の声がした。

「ありがとう、クリストフ様……?」

 振り返り、リリアナは意外な人物に眉をひそめる。

 アンドレ・ファイナス男爵。学年一位、ニ位を、リリアナと競い合っている仲だ。

 同じく、ファイナス商会の成り上がり貴族の三男坊だと、すぐに見当がつく。怖いほどの魅力的な美男子だ。
 もし、公爵家の長男だったら、モテモテだったはずなのに。惜しい男だ。

「な、なによ? 男爵家のくせに」

「はやく、カリストルさんから離れろ」

 アンドレは、アンナから水差しを取り上げて、三人組をにらみつけると、慌てて、「貴族」校舎へと走りさっていった。

「ありがとう、アンドレ・ファイナスさん」

 リリアナは、何とか自力で立ち上がろうとするが、思った以上のイジメに、すっかり血の気が引いていた。いったんは立ちあがったものの、足取りはおぼつかない。

「保健室まで連れて行っても、構わない?」

「だ、だいじょうぶよ……?」

「申し訳なかったね」

 (ここまでされるなんて。指示した計画よりエスカレートしているだろう。かわいそうに、こんなに震えて……)

 アンドレは、返事を待たずに、リリアナを抱き上げると、健脚でスタスタと、一階の保健室まで彼女を送り届けていく。

 そのふたりを、王家の馬車の車窓から、クリストフ王太子が目撃していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...