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4 成り上がり令嬢
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リリアナは、王立学園の二年で、『平民組』の魔法学科に所属している。
そもそも、リリアナは五歳で縁あってカリストル男爵家の養子となり、優秀な成績で国内トップクラスのこの学園に入学した。
カリストル男爵は、金貸しで財を成した成り上がりの貴族である。遠い親戚で農家の娘に過ぎなかったリリアナの賢さと美貌に目を付け、将来は王家に嫁がせようと画策したのだ。
男爵の計画通りに、積極的にクリストフ王子に近づき、顔を覚えてもらうよう、何かと出会う機会を持つように意識してもらう。
早朝の花壇の手入れもその一環で、正門前の円形花壇を率先して、登校してきたクリストフ王子に、健気で純真さをアピールするためだった。
もちろん花好きという、義父からの情報を仕入れてからの行動だ。
でも、数日前のクリストフ王子とエミエル公爵令嬢との破談が明るみになると、二人を破談においやった張本人というレッテルで、友人のほとんどが去って行った。
(けれど)
リリアナは、草いじりをしながら、ほくそ笑む。いじめなれ、罵られればするほど、クリストフが自分を守ろうとするだろう。
エミエルがクリストフに手紙を返信してから、一週間後のことだった。
「あらあら、けなげに朝っぱらから、手入れですか?」
計画通りに、エミエルの取り巻き連中が、リリアナを取り囲む。
しめしめ、マリア、アン、シュリの、三人組である。
「ここで、また王子様とイチャイチャするんだよね?」
「おめでたいわね」
「男爵家の成り上がりのくせに。どうせ、結婚なんてできないわよ」
口々に罵声を浴びせられて、リリアナはわざと口惜しいとばかりに唇を噛みしめる。
「ふん。だったら、あたしたちも手伝ってあげるわ。土いじり」
シュリから、パラパラと砂をかけられたが、リリアナは耐えた。
今度はアリを手にしたアンが、リリアナの制服の襟元から入れたので、さすがに、
「キャッ」と小さな叫び声を上げて、飛び上がった。
「そら、水やりもしなきゃね」
さらに、マリアが置いてあった水差しを取り上げて、リリアナに引っかけようとする。
「やめなさい、君たち」
鋭い、男性の声がした。
「ありがとう、クリストフ様……?」
振り返り、リリアナは意外な人物に眉をひそめる。
アンドレ・ファイナス男爵。学年一位、ニ位を、リリアナと競い合っている仲だ。
同じく、ファイナス商会の成り上がり貴族の三男坊だと、すぐに見当がつく。怖いほどの魅力的な美男子だ。
もし、公爵家の長男だったら、モテモテだったはずなのに。惜しい男だ。
「な、なによ? 男爵家のくせに」
「はやく、カリストルさんから離れろ」
アンドレは、アンナから水差しを取り上げて、三人組をにらみつけると、慌てて、「貴族」校舎へと走りさっていった。
「ありがとう、アンドレ・ファイナスさん」
リリアナは、何とか自力で立ち上がろうとするが、思った以上のイジメに、すっかり血の気が引いていた。いったんは立ちあがったものの、足取りはおぼつかない。
「保健室まで連れて行っても、構わない?」
「だ、だいじょうぶよ……?」
「申し訳なかったね」
(ここまでされるなんて。指示した計画よりエスカレートしているだろう。かわいそうに、こんなに震えて……)
アンドレは、返事を待たずに、リリアナを抱き上げると、健脚でスタスタと、一階の保健室まで彼女を送り届けていく。
そのふたりを、王家の馬車の車窓から、クリストフ王太子が目撃していた。
そもそも、リリアナは五歳で縁あってカリストル男爵家の養子となり、優秀な成績で国内トップクラスのこの学園に入学した。
カリストル男爵は、金貸しで財を成した成り上がりの貴族である。遠い親戚で農家の娘に過ぎなかったリリアナの賢さと美貌に目を付け、将来は王家に嫁がせようと画策したのだ。
男爵の計画通りに、積極的にクリストフ王子に近づき、顔を覚えてもらうよう、何かと出会う機会を持つように意識してもらう。
早朝の花壇の手入れもその一環で、正門前の円形花壇を率先して、登校してきたクリストフ王子に、健気で純真さをアピールするためだった。
もちろん花好きという、義父からの情報を仕入れてからの行動だ。
でも、数日前のクリストフ王子とエミエル公爵令嬢との破談が明るみになると、二人を破談においやった張本人というレッテルで、友人のほとんどが去って行った。
(けれど)
リリアナは、草いじりをしながら、ほくそ笑む。いじめなれ、罵られればするほど、クリストフが自分を守ろうとするだろう。
エミエルがクリストフに手紙を返信してから、一週間後のことだった。
「あらあら、けなげに朝っぱらから、手入れですか?」
計画通りに、エミエルの取り巻き連中が、リリアナを取り囲む。
しめしめ、マリア、アン、シュリの、三人組である。
「ここで、また王子様とイチャイチャするんだよね?」
「おめでたいわね」
「男爵家の成り上がりのくせに。どうせ、結婚なんてできないわよ」
口々に罵声を浴びせられて、リリアナはわざと口惜しいとばかりに唇を噛みしめる。
「ふん。だったら、あたしたちも手伝ってあげるわ。土いじり」
シュリから、パラパラと砂をかけられたが、リリアナは耐えた。
今度はアリを手にしたアンが、リリアナの制服の襟元から入れたので、さすがに、
「キャッ」と小さな叫び声を上げて、飛び上がった。
「そら、水やりもしなきゃね」
さらに、マリアが置いてあった水差しを取り上げて、リリアナに引っかけようとする。
「やめなさい、君たち」
鋭い、男性の声がした。
「ありがとう、クリストフ様……?」
振り返り、リリアナは意外な人物に眉をひそめる。
アンドレ・ファイナス男爵。学年一位、ニ位を、リリアナと競い合っている仲だ。
同じく、ファイナス商会の成り上がり貴族の三男坊だと、すぐに見当がつく。怖いほどの魅力的な美男子だ。
もし、公爵家の長男だったら、モテモテだったはずなのに。惜しい男だ。
「な、なによ? 男爵家のくせに」
「はやく、カリストルさんから離れろ」
アンドレは、アンナから水差しを取り上げて、三人組をにらみつけると、慌てて、「貴族」校舎へと走りさっていった。
「ありがとう、アンドレ・ファイナスさん」
リリアナは、何とか自力で立ち上がろうとするが、思った以上のイジメに、すっかり血の気が引いていた。いったんは立ちあがったものの、足取りはおぼつかない。
「保健室まで連れて行っても、構わない?」
「だ、だいじょうぶよ……?」
「申し訳なかったね」
(ここまでされるなんて。指示した計画よりエスカレートしているだろう。かわいそうに、こんなに震えて……)
アンドレは、返事を待たずに、リリアナを抱き上げると、健脚でスタスタと、一階の保健室まで彼女を送り届けていく。
そのふたりを、王家の馬車の車窓から、クリストフ王太子が目撃していた。
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