[完結]婚約破棄されたけど、わたし、あきらめきれません

朝日みらい

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10 舞踏会の仕掛け

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 それから二週間後に、カリストル男爵が、侯爵になる王令が発布されたのと、ほぼ同じくして、クリフトフ第三王太子と、リリアナ嬢との婚約が発表された。

 エミエルは、使者から届けられた通知を、唖然と眺めていた。

 ……なんなのよ、それ――!

 アンドレの言いつけ通り、それから六日後の舞踏会の準備に追われていた矢先に、この最後通告である。

「あ、アンドレを呼んできて。今すぐによ」

 すぐさま、女中を隣のファイナス家に使いに行かせたが、まだ、学園から戻っていないということだった。

 ……まただわ。最近、アンドレったら。リリアナ嬢とばかり話をしたり、放課後はどこかに連れだっまて遊びに出かけたりしているもの。わたしにばかり、舞踏会の準備をさせておきながら……。

 挙げ句は、このパーティーの趣旨が、『婚約、おめでとう』なんて! なんて、屈辱なのよっ。

 怒りに顔色を曇らせていると、執事がおそるおそる近づいてきて、

「お嬢様、ご招待のお客様のリストでございます」

と、差し出された名簿を広げながら、はたと、エミエルの頭にある良からぬ考えが浮かんだ。

「追加してほしい方々がいるんだけど」

 執事に指示を出して、エミエルはほくそ笑んでから、次の準備に取りかかった。


 夕方になってやっと、アンドレがやってくると、エミエルは自室に招き入れ、

「どう? リリアナ嬢との関係は?」

「良好だよ。彼女は、すっかりぼくを信用してくれているよ」

と、肘掛けの椅子に腰かける。

「遅いようー!」

 いつものように、エミエルが赤ちゃんモードになり、アンドレの膝の上にチョコンと乗る。

「……お、重いよ」

「わたしの、沈んだハートを存分にあじわいなさい!」

「今は……そんな気持ちなんですね」

「そうだよう……。あのさあ、アンドレ、これでも、うまくいってるわけ?」

 エミエルは、先ほどの通知を彼に突きつける。

 それでも、アンドレの眉は動かない。

「まあ、予想以上に早くなったけどね。あの、頼みがあるんだけど、シシ島の空き家って、まだあるのかな?」

 シシ島は、王都から馬車で二日と、船で半日はかかる。別荘地というより、穴場の観光地として知られている。

 数年前に一度、フェレス、ファイナス両家で遊びに出かけた時に、格安だったので購入して以来、島人に管理させている。

「あると思うわよ。でも、もう十年はつかってないけど……」

「だったら、君のお父様に頼んで、ぼくに譲ってもらえるか、頼んでもらえない?」

「そんなこと、お安い御用だけど、あんなところをもらって、何する気?」

「……計画があるんだ」

 エミエルは、彼の膝から立ち上がると、

「ふーん。何しろ、早くしてよね。わたしにだって、クリストフ王子をぜったいに、手に入れたいの。わたしのプライドにかけてね!」

 アンドレは、急に真顔になって、彼女を見返した。

「ねえ、エミエルにとって、クリストフ王子との結婚はプライドなのかい?」

「なによ。急に改まって。結婚は誇りをかけた、家と家との結びつきなのよ。個人の好き嫌いは二の次よ。特に、王家との婚姻はね」

「ぼくはそうは思わないよ。王子との結婚を、リリアナは真剣に悩んでいる。最後は本人の意思次第なんだから」

「……だったら、わたしができなくしてあげるだけね。わたしの理屈が正しいこと、教えてあげる」

「え? なにをするの?」

 エミエルは、彼の問い掛けには答えずに、そのまま、部屋を出て行った。
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