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第10章:毒と冷血の、永遠の誓い
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王宮での舞踏会の夜。
わたくしは、自作の毒草ブーケを胸元に飾り、深い黒のドレスに身を包んでいました。周囲がさざめき、わたくしを見つめる視線には明らかな不安と恐れが混じっておりました。
ええ、それも当然ですわ。毒令嬢が、冷血公を伴って王宮に現れるのですもの。
でも、もう何も怖くありません。
わたくしの隣には、どんな仮面も不要な関係を築いてくださった方がいるのですから。
ダリウス様の腕を取って、会場を歩きました。
氷のような視線が降り注ぐなか、彼はわたくしの手をしっかりと握ってくださっておりました。
言葉など要りませんでした。ただその手の温度だけで、十分でした。
舞踏会が終盤を迎えたころ、わたくしとダリウス様は静かな庭園にふたりきりとなりました。
夜空には雪が舞い始め、銀の光がふたりの影をやさしく包み込みます。
わたくしは、彼の背にある傷跡へそっと口づけを落としました。
かつてわたくしを守るために戦い、流した血。
そのすべてが、今のわたくしにとっては、宝石よりも尊いものなのです。
「……旦那様」
静かに呼ぶと、彼はわたくしの手をとり、指輪をゆっくりと差し出されました。
「偽りも仮面も、もういらない。
お前が、笑えば――それだけで、俺は十分だ」
その言葉に、わたくしの目から一筋の涙がこぼれました。
かつて、笑うことで自分を守ってきたわたくしが、今では自分の意思で笑っている。
それを受け止めてくださる人が、隣にいる。
「……わたくしも、もう逃げません。
毒も冷血も、わたくしたちの愛に必要な成分ですもの」
わたくしたちは、互いに指輪をはめ合いました。
誓いの言葉は必要ありません。
目を見れば、すべて伝わっておりましたから。
その夜、王宮の庭園に降る雪は、まるで祝福のように静かで美しかったのです。
毒と冷血――誰よりも不器用なふたりが、ついに永遠を誓い合った瞬間。
その愛は、常識を超えた場所で、確かに花開いたのでした。
わたくしは、自作の毒草ブーケを胸元に飾り、深い黒のドレスに身を包んでいました。周囲がさざめき、わたくしを見つめる視線には明らかな不安と恐れが混じっておりました。
ええ、それも当然ですわ。毒令嬢が、冷血公を伴って王宮に現れるのですもの。
でも、もう何も怖くありません。
わたくしの隣には、どんな仮面も不要な関係を築いてくださった方がいるのですから。
ダリウス様の腕を取って、会場を歩きました。
氷のような視線が降り注ぐなか、彼はわたくしの手をしっかりと握ってくださっておりました。
言葉など要りませんでした。ただその手の温度だけで、十分でした。
舞踏会が終盤を迎えたころ、わたくしとダリウス様は静かな庭園にふたりきりとなりました。
夜空には雪が舞い始め、銀の光がふたりの影をやさしく包み込みます。
わたくしは、彼の背にある傷跡へそっと口づけを落としました。
かつてわたくしを守るために戦い、流した血。
そのすべてが、今のわたくしにとっては、宝石よりも尊いものなのです。
「……旦那様」
静かに呼ぶと、彼はわたくしの手をとり、指輪をゆっくりと差し出されました。
「偽りも仮面も、もういらない。
お前が、笑えば――それだけで、俺は十分だ」
その言葉に、わたくしの目から一筋の涙がこぼれました。
かつて、笑うことで自分を守ってきたわたくしが、今では自分の意思で笑っている。
それを受け止めてくださる人が、隣にいる。
「……わたくしも、もう逃げません。
毒も冷血も、わたくしたちの愛に必要な成分ですもの」
わたくしたちは、互いに指輪をはめ合いました。
誓いの言葉は必要ありません。
目を見れば、すべて伝わっておりましたから。
その夜、王宮の庭園に降る雪は、まるで祝福のように静かで美しかったのです。
毒と冷血――誰よりも不器用なふたりが、ついに永遠を誓い合った瞬間。
その愛は、常識を超えた場所で、確かに花開いたのでした。
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