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ぼくの住むマンションに、セヤキ号、ソママ号、二台のエレベーターがある。それには、最新型の人工知能っていうものが搭載されている。
上に上がりたいと思って、ボタンを押さなくても、かまわない。セヤキ号は勝手におりてくる。すぐに監視カメラでぼくに気づいて、じぶんで動いてくれるんだ。
「ケンタロウ様、おかえりなさい。学校、お疲れ様でした」
ヘッドホンをはずして乗りこむと、スピーカーから男の子の声がした。そして、ぼくが何も押さなくても、ちゃんと家のある五階までおぼえていて、すぐに上がってくれる。
あっという間に、セヤキ号は五階についた。
「きみ、すごいな」
ぼくが言うと、セヤキ号は、
「ありがとうございます」と、明るい声でかえしてくれる。
それにくらべて、ソママ号はというと・・・。
ぼくは、となりで止まったままのソママ号を横目でジロっと見た。
ソママ号はボタンを押さないかぎり、じぶんから動こうとはしない。ボタンを押さなくても、セヤキ号はこれに気づいてくれるのに。乗りたい人をどんどん乗せてあげようと、がんばってくれる。
だから、セヤキ号ばかりがすごく動いて、ソママ号はたいてい、どこかの階でねむったように止まったままだった。
ぼくと同じように、ほかの人たちも、ボタンを押さなくても動いてくれるセヤキ号が便利だし好きになった。
その一方で、何も気にしないで休んだままのソママ号のことが、ちょっとうとましくさえ思えてきた。
上に上がりたいと思って、ボタンを押さなくても、かまわない。セヤキ号は勝手におりてくる。すぐに監視カメラでぼくに気づいて、じぶんで動いてくれるんだ。
「ケンタロウ様、おかえりなさい。学校、お疲れ様でした」
ヘッドホンをはずして乗りこむと、スピーカーから男の子の声がした。そして、ぼくが何も押さなくても、ちゃんと家のある五階までおぼえていて、すぐに上がってくれる。
あっという間に、セヤキ号は五階についた。
「きみ、すごいな」
ぼくが言うと、セヤキ号は、
「ありがとうございます」と、明るい声でかえしてくれる。
それにくらべて、ソママ号はというと・・・。
ぼくは、となりで止まったままのソママ号を横目でジロっと見た。
ソママ号はボタンを押さないかぎり、じぶんから動こうとはしない。ボタンを押さなくても、セヤキ号はこれに気づいてくれるのに。乗りたい人をどんどん乗せてあげようと、がんばってくれる。
だから、セヤキ号ばかりがすごく動いて、ソママ号はたいてい、どこかの階でねむったように止まったままだった。
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その一方で、何も気にしないで休んだままのソママ号のことが、ちょっとうとましくさえ思えてきた。
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