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ある日曜日、マンションに住んでいる人たちが、全員集まる会議をひらいた。ぼくの家ではお父さんが代表で参加した。
その時に、ソママ号のことが話題になったらしい。
「ソママ号は、役に立たない、なまけものだ」
「エレベーターの会社に頼んで、ソママ号をほかの機械と交換してしまえばいいんじゃないの」
くちぐちにそんな意見ばかりの中で、あるおじいさんが手を上げた。
「みなさん、ボタンを押してみたことはあるでしょうか?」
他の人たちは首を横にふった。ぼくとおなじように、みんな、セヤキ号しか乗ったことがなかった。
「一度、ボタンを押してみてください。そうしたら、きっとわかりますよ」
すると、赤ちゃんを抱えたお母さんが、
「わたし、乗ってみようかしら」
と声を上げた。だけど、皆は顔を見合わせていたそうだ。
次の日、ぼくは学校から帰ってすぐ、ためしにエレベーターのボタンを押した。
ボタンを押す前から、セヤキ号がやってきた。
「おかえりなさい。どうぞ、こちらへお乗りください」
いつもならまよわず乗るところだけど、ぼくはソママ号を待ってみた。
少しおくれて、ソママ号も到着した。
「・・・・・・」
何も言わない。だまっている。ふつうのエレベーターみたい。
ソママ号はしずかにとびらを開けた。
ぼくは中に入った。五階のボタンを押すと、ゆっくりとぼくをのせて上がり始めた。でも、何か、ちがう。
セヤキ号ならたくさんの人を乗せたい。だから、ガンガン速度をあげるけど、ソママ号はその逆だ。ゆっくりとしずかに、ぜんぜんゆれない。
その時に、ソママ号のことが話題になったらしい。
「ソママ号は、役に立たない、なまけものだ」
「エレベーターの会社に頼んで、ソママ号をほかの機械と交換してしまえばいいんじゃないの」
くちぐちにそんな意見ばかりの中で、あるおじいさんが手を上げた。
「みなさん、ボタンを押してみたことはあるでしょうか?」
他の人たちは首を横にふった。ぼくとおなじように、みんな、セヤキ号しか乗ったことがなかった。
「一度、ボタンを押してみてください。そうしたら、きっとわかりますよ」
すると、赤ちゃんを抱えたお母さんが、
「わたし、乗ってみようかしら」
と声を上げた。だけど、皆は顔を見合わせていたそうだ。
次の日、ぼくは学校から帰ってすぐ、ためしにエレベーターのボタンを押した。
ボタンを押す前から、セヤキ号がやってきた。
「おかえりなさい。どうぞ、こちらへお乗りください」
いつもならまよわず乗るところだけど、ぼくはソママ号を待ってみた。
少しおくれて、ソママ号も到着した。
「・・・・・・」
何も言わない。だまっている。ふつうのエレベーターみたい。
ソママ号はしずかにとびらを開けた。
ぼくは中に入った。五階のボタンを押すと、ゆっくりとぼくをのせて上がり始めた。でも、何か、ちがう。
セヤキ号ならたくさんの人を乗せたい。だから、ガンガン速度をあげるけど、ソママ号はその逆だ。ゆっくりとしずかに、ぜんぜんゆれない。
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