ソママさんを押してみて

朝日みらい

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 スッと五階に着くと、ゆっくりとドアが開いた。

 ぼくがおりた時、後ろから、

「ご利用、ありがとう・・・ございます」と、女の子の声がした。
「ぼく、ケンタロウだよ」

 ぼくが言うと、

「わたし、ソママです」

と、はずかしそうにふるえながら、ドアは閉まった。

 それからボタンを押せば、そろそろっと、ソママ号はやってくる。
 毎日乗ってみれば、だんだんソママ号のことがわかってくる。

 カメラでぼくの顔色を見て、スピーカーからぼくの好きな音楽を流してくれる。ぼくのヘッドホンを見て、音楽好きってわかってくれたみたい。

 ぼくがウキウキしている時はアップテンポな音楽、落ちこんでいたら、しずかな川のせせらぎや小鳥たちの鳴き声がひびいて、ぼくの気持ちをなごませてくれる。

 ソママ号はあまり器用じゃない。しゃべるのも得意じゃないけど、ぼくの気持ちをいつも気にかけていた。
 ある寒い夜、一階でソママ号にのったら、ベビーカーをおしたお母さんがやってきた。ふつうなら、ドアはしまるはずなのに、ソママ号はじっと待っている。

「ケンタロウさん、そのまま待ってくれますか」

 ぼくは、うなずいた。

 お母さんが乗りこんでから、そっとドアをしめた。

「いつも待ってくれてありがとう、ソママちゃん」

 お母さんは、頭をさげた。赤ちゃんはベビーカーで、すやすやねむっている。

 ソママ号は、ぜんぜんゆれない。赤ちゃんをおこさないよう、いつもより、ゆっくりしずかに上がっているんだ。

 お母さんは、買い物の袋で両手がふさがっている。ソママ号はお母さんの住んでいる三階で、そっと止まった。

「カナイさま、いつも、ありがとう・・・ございます。ターくん、元気でね」

 ソママ号はそう言うと、そっととびらを閉めた。
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