【完結】婚約破棄された絵描き令嬢ですが、公爵様が破られた絵を直して溺愛してきます

朝日みらい

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第7章:私の居場所

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 穏やかな日々が流れる中、わたしは少しずつ、あることを考えるようになっていました。

 わたしは、グランヴェル公爵様とリリィちゃんに、もう十分に、それ以上のお世話になってしまっているのではないか、と。

 温かく迎えてくださった公爵様、無邪気に懐いてくれたリリィちゃん。

そして、わたしに再び絵を描く喜びを思い出させてくれた、この美しいアトリエ。

すべてが、わたしにとっては勿体ないほどの贈り物でした。

 ですが、わたしは、所詮は婚約を破棄された、ローウェンシュタイン男爵家の娘。

いつまでも、このような素晴らしい公爵邸に甘えているわけにはいきません。

これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかない。

 わたしは、公爵様にお礼を述べ、自分の屋敷に戻る決意をしました。

「公爵様。もう十分、お世話になりました。感謝してもしきれません。そろそろ、わたくしの屋敷に……」

 わたしがそう切り出すと、リリィちゃんが、わたしの言葉を聞いて、不安そうに顔を曇らせました。

「おねえちゃん、帰っちゃうの?」

 その声を聞いた瞬間、わたしの胸が、またチクリと痛みます。

リリィちゃんの、寂しそうな表情。

わたしは、そんな彼女を置いていくのが、とても辛かったのです。

 ですが、わたしは、毅然とした態度で、リリィちゃんに微笑みかけました。

「リリィちゃん。また、いつでも遊びに来ますから。だから、泣かないで……」

 そんなわたしとリリィちゃんのやり取りを見ていた公爵様は、静かに、そして、ゆっくりと首を横に振ってくださいました。

「セシリア嬢。あなたは、何を言っているのですか」

 公爵様の、少しだけ冷たさを帯びた声に、わたしは思わず身をすくめてしまいました。

「ですが、公爵様。わたくしが、いつまでもここにいるわけには……」

「あなたの絵が、この家に光を運んでくれたんです」

 公爵様の言葉は、わたしの言葉を遮るように、まっすぐにわたしの心に届きました。

 それは、わたしにとって、生まれて初めて「ここにいてほしい」と言ってくれる人の言葉でした。

 自分の屋敷に帰れば、待っているのは、冷たい家族と、絵を描くことすら許されない、無言の居場所。

 それに比べ、ここには、わたしの絵を「光」だと称賛してくれる人がいる。

わたしという人間を、大切に思ってくれる人がいる。

 わたしの瞳からは、大粒の涙が、止めどなく溢れ出てきました。

「……ここに、いても、いいのでしょうか」

 震える声で尋ねるわたしの問いに、公爵様は、そっと微笑んでくださいました。

「君の居場所は、君が決めればいい」

 そうして、わたしは初めて、自分の意思で“居場所”を選んだのでした。

 もう、誰にも振り回されない。わたしは、わたし自身の力で、幸せを掴んでみせる。

 わたしは、公爵様の言葉に、力強く頷いたのでした。
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