【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

(17)

　その頃、国王は隣国との友好関係を強化するために、自分の側近や護衛や使節などを連れて、馬車で隣国へ向かっていた。そこには宰相のエドワーズも同行していた。

　翌朝に隣国の首都に到着して、隣国の王様に出迎えられた。

　隣国の王様は国王に、

「ようこそ、友よ。私はあなたを心から歓迎する」

と言って、笑顔で握手した。

　国王も、

「私も楽しい時間を過ごしたいと思っている」

と言って、宮殿へと案内した。

　宮殿は壮麗で美しい建物で、豪華な調度品や絵画や宝石が飾られていた。

　宮殿に入って、国王と隣国の王様は、友好的な会話を交わした。

　「友好関係を築きたいと思っている｣

　「協力して、平和や繁栄や幸福をもたらしていきましょう」

　一連のやりとりが終わって、昼食の時間になったとき、隣国の国王の手招きでブルームとオカリナが舞台袖から現れ、頭を垂れた。

｢ブルーム騎士団長。それに伯爵令嬢のオカリナ……｣

　驚く王様の前に立って、ブルームは調書を手にした。

　オカリナの体にある傷や痣や抜け毛などの暴行の痕跡を記録したものだ。

　ブルームは王様に頭を下げながら、

「王様殿下、私たちはここに、オカリナがエドワーズに暴行された証拠を持ってきました。この調書をご覧ください」

と言って、調書を差し出した。

　オカリナも王様に、

「王様殿下、私はエドワーズの婚約者でしたが、彼は私に対して理不尽な要求をしたり、罵倒したり、暴力をふるったりしていました。私は彼から逃れるために、ブルーム様に助けてもらい、隣国に逃れたのです」

と涙を流した。

　王様は調書を受け取って、中身を確認した。調書に書かれたオカリナの傷や痣や抜け毛などの暴行の痕跡を見た。

「これは本当なのか。エドワーズがこんなことをしたのか」

「はい。これは真実です」と、ブルームは答えた。

　そのとき、宰相であるエドワーズが現れた。

　会談室近くの個室に控えていたエドワーズは、ブルームとオカリナが王様に直訴していることに気づき、慌てて広間に駆けつけてきたのだ。

「王様殿下、この二人は嘘つきです。逆に彼らは私に反逆した罪で処刑されるべき、罪人です」

　エドワーズは言った。

　王様はエドワーズの言葉を聞いて、困惑した。

「エドワーズ、お前は宰相の立場で、本当にオカリナに暴行したのか｣

「いいえ。私はオカリナに暴行などしていません。私はオカリナを愛していました。しかし、彼女は浮気者で、ブルームをたぶらかし、私を裏切ってブルームと逃げたのです」

　王様はエドワーズの言葉と調書の内容とが矛盾していることに気づいて言った。　　

「本当にオカリナに暴行しなかったのなら、この調書はどう説明するつもりだ？」

「この調書は偽物です。ブルームがオカリナに傷をつけて、私の罪をでっち上げたのです」

　だが、王様はエドワーズの言葉に納得しなかった。

「王を馬鹿にするなよ。この調書は本物だぞ。この調書は騎士団の記録係が、法律に基づき、正式に作成したものだぞ。エドワーズ、オカリナ嬢に暴行したことを認めなさい」

　エドワーズは王様の足下に跪いた。

「いえ、違います。私は嘘をついていません。この調書は偽物です。調書はブルームと共謀して、私を陥れようとしたのです」となおも抵抗した。