坂の上の帰り道

朝日みらい

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「なら、オレ、取りに行ってやる」

 ケイスケは、ガレージの自転車を指さしたが、ミチルは首を横に振った。だって、ツルッパゲのことを知っているのは、ミチルだけなのだ。他の人にうまく説明できそうにない。

「なら、歩くぞ。ほら、ランドセル、オレに貸せ」

 ケイスケが両手をさしだしたので、おそるおそる手渡すと、玄関先においてきてくれた。
 それからミチルの横をすり抜けて、団地の方へ向かって歩き出した。ミチルも後を追いかける。

 小学校の前の通りを歩く。ケイスケはクマみたいにのっしのっしと歩く。
 それでいて、けっこう大またなので、小柄のミチルは小走りでないと追いつけない。
 ケイスケは前しか見てないから、遅れると取り残されそうだ。

 十分程で、白い長方形の、団地の建物の群れが見えてきた。
 みんな同じ形で、五階建てで、それぞれに番号がふられている。子どもたちが、自転車で通り過ぎていく。ワイワイ、ガヤガヤ、さわがしい声がこだまする。

 ふたりは同じような建物の横を、何度も通り過ぎていった。

「着いた」

 はじめてケイスケがこちらをむいた時、ミチルの息はだいぶ上がっていた。
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