【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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その日はとても晴れた日で、宮廷の庭園はいつも以上に色とりどりの花が咲き誇っていた。

風が気持ちよく吹いて、木々の葉っぱがサラサラと音を立てて揺れている。

そんな日には、誰でも自然と心が軽くなるもんだよな、なんて思いながら歩いていたんだけど。

ふと、足元で何か小さな音が聞こえた気がして、そちらを見ると、一羽の小鳥が地面に倒れていた。

見たところ、羽が少し痛んでいるようで、どうやら飛べなくなっているみたいだ。

「あら…」  

思わず声を漏らす。

どうしようか、と思ったけれど、傷ついた小鳥を見ると放っておけなかった。

すぐに膝をついて、小鳥に手を伸ばすと、しばらくその小さな体が震えていたけれど、私の手に気づいたのか、やっと安心したのか、じっとしている。

「大丈夫よ、すぐに治してあげるからね。」  

そう言いながら、小鳥をそっと優しく包み込んで、傷の具合を見た。

軽く羽を触れてみると、どうやら羽の先が少し折れてしまっているみたいだ。

でも、これなら手当てすれば回復するだろうと判断した。

その時、後ろから足音が聞こえてきた。

振り向くと、レオニードがゆっくりと歩いてきて、私の姿を見て立ち止まった。

「何してるんだ?」  

彼の低い声が、穏やかな庭の空気に混じって響いた。

私は少し驚きながらも、視線を戻して小鳥に声をかけ続けた。  

「見て、傷ついた小鳥がいるの。今、治療してあげてるのよ。」  

そう言うと、レオニードは少しだけ眉をひそめて、私のそばに歩み寄った。

「こんなところで?」  

「うん、でも、ほら、もう少しで元気になるわ。」  

私がそう言いながら、そっと小鳥の羽を包み込むと、レオニードは黙ってそれを見守っていた。

彼の表情には、いつもの冷徹さはなく、むしろ少し驚いたような、でもどこか温かみのある顔をしている。

「お前って、いつもそうだな。」   

突然、レオニードが言った言葉に、私は少し驚いて顔を上げる。  

「え?」  

「他の人のことを気にしすぎる。」  

「それが悪いの?」  

「いや…そういうところが、少し…な。」  

その言葉に、私は思わず笑ってしまう。

「なに、それ、褒めてるの?」  

「まあ、そういうところが嫌いじゃない。」  

レオニードの顔に、少しだけ微笑みが浮かんだ。

あれ?

今、彼が笑った?もしかして…私をからかってる?

「…どうしても傷ついているものが気になるのよ。」  

私は少し照れくさそうに言うと、小鳥を再び両手で包んで、羽を治療し続けた。

その間、レオニードはじっと黙って私を見守っている。

「お前がそうやって無償で優しくできるのって、すごいな。」  

「それが普通でしょ?」  

「いや、俺にはできない。」  

レオニードが少し俯きながら言ったその言葉には、何か少し寂しさが感じられたけれど、私はあえて何も言わず、ただ小鳥の傷を治すことに集中した。


しばらくして、小鳥の羽は元通りに近く回復し、もう飛べるようになった。

私はその小さな体を優しく空へと放した。

「元気で負けないで生きるのよ!」  

そうつぶやくと、小鳥は少し戸惑ったように見えたが、すぐに羽を広げて空に向かって飛び立った。

その光景を、レオニードはじっと見守っていた。

「お前が優しいのって、やっぱりすごいよな。」  

レオニードの声が、少しだけ優しく響いた。

私はその言葉に、なんだか胸が熱くなるのを感じた。

「ありがとう、殿下。」  

私は小さな声で言った。

その瞬間、レオニードが軽く振り返り、少し照れくさそうに言った。  

「別に…気にするな。」  

でも、彼の言葉とその表情に、確かに何かが変わり始めていることを感じた。

「じゃあ、次は私が傷ついた殿下を治してあげなきゃね。」  

私は冗談っぽく言ったけど、その後ろでレオニードが少し顔を赤らめて、驚いたように言った。  

「…お前、そういうことを言うなよ。」  

「あ、もしかして照れてるの?」  

私は彼の顔をじっと見て、からかうように言うと、レオニードは顔をそむけて歩き始めた。

「もう、何だよ、まったく。」  

その姿を見て、私は心の中でほくそ笑んだ。

レオニードがこんなに照れているなんて、初めて見た気がする。

やっぱり、ちょっとずつだけど、彼の心の中に温かいものが育ち始めているんだなと思った。
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