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第五章
第36話
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馬車は南の城壁を抜け、外堀の橋を渡り、のどかな田園地帯を走っていく。
ベニースの湖畔は、皇国の首都中心部から馬車で1時間ほどの距離にある。
近場の保養地として、首都に住む貴族たちは、週末になると、こぞって馬車を走らせ、湖畔で各々の休日を楽しむ。
平日のなふたりが湖畔に着いた昼過ぎには、数台の馬車が、停車場にとめてあるだけだった。
使用人は、馬車を停めると、湖近くの芝生の大樹の木陰に、小形の折りたたみの座椅子と小さな丸いテーブルの準備を始める。
太陽で照らされた水面は、キラキラと輝き、恋人たちを乗せたボートがぷかぷかと浮いていた。
先にセリストが馬車から降りると、日傘に丸い帽子を被ったクララは、白い手袋をはめた手を、セリストに差し伸べた。
ほんのりと、ほほを赤らめている。
「セリスト様、手を取って?」
「はっ?」
セリストは、だらりと手を下げたまま、クララを見あげていた。
クララはあじらいで、頬を赤くして、俯きながら、
「くずぐすしないでよ。最後の1日くらい、本当の恋人みたいに接してほしいの。嘘でいいから」
セリストは戸惑いながら、少女の手を取った。
「俺でよければ」
ベニースの湖畔は、皇国の首都中心部から馬車で1時間ほどの距離にある。
近場の保養地として、首都に住む貴族たちは、週末になると、こぞって馬車を走らせ、湖畔で各々の休日を楽しむ。
平日のなふたりが湖畔に着いた昼過ぎには、数台の馬車が、停車場にとめてあるだけだった。
使用人は、馬車を停めると、湖近くの芝生の大樹の木陰に、小形の折りたたみの座椅子と小さな丸いテーブルの準備を始める。
太陽で照らされた水面は、キラキラと輝き、恋人たちを乗せたボートがぷかぷかと浮いていた。
先にセリストが馬車から降りると、日傘に丸い帽子を被ったクララは、白い手袋をはめた手を、セリストに差し伸べた。
ほんのりと、ほほを赤らめている。
「セリスト様、手を取って?」
「はっ?」
セリストは、だらりと手を下げたまま、クララを見あげていた。
クララはあじらいで、頬を赤くして、俯きながら、
「くずぐすしないでよ。最後の1日くらい、本当の恋人みたいに接してほしいの。嘘でいいから」
セリストは戸惑いながら、少女の手を取った。
「俺でよければ」
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