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第六章
第46話
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調薬師ロリーネは、手際よく薬を混ぜて、青い錠剤にした。
それを紙片に包むと、ケースからペンダントを取り出して、首飾りのロケットの容器に仕舞った。
ロリーネは、ペンダントを差し出しながら言った。
「これは解薬剤です。これで元に戻れますから」
「ありがとう」
セリストは頭を下げると、自身の首にかけた。
ロリーネは、手際よくケースに調剤箱をしまうと、立ち上がり、部屋のドア前で振り返った。
「セリスト様……?」
「どうした?」
ロリーネは、恥じらいがちに目を伏せた。
「あなたをここまで本気にした彼女は、きっと、とても素敵な方なのでしょうね。ご武運を」
そう言うと目を伏せ、足早に部屋を出て行った。
それからのセリストは、名前をセリスと名乗るようになった。
屋敷でも、これまでの客室に住むのをやめて、敷地の離れにある、20人程が寝泊まりする使用人たちの住居へ転居した。
使用人たちの部屋は、飾り気のない小屋みたいな所で、食事も寝所も一緒だった。
しかし、こうすることで、セリストは使用人たちの粗野な言葉遣いや仕草、癖などを身につけることができた。
だんだんと、軍人のセリストは、飲んだくれの、口が悪い、不真面目な従者、セリスになったのである。
それから、三ヶ月あまり経った。
オルトランから、神官庁からクララの派遣が決まったことを知らされた。
オルトランは、神官庁の役人に神官の補佐役として、セリスを推薦し、何度も根回しをして採用してもらうことができた。
イードに出発する朝、セリスは大聖堂前の鉄扉の前で、馬車を停めて、クララを待っていた。
それを紙片に包むと、ケースからペンダントを取り出して、首飾りのロケットの容器に仕舞った。
ロリーネは、ペンダントを差し出しながら言った。
「これは解薬剤です。これで元に戻れますから」
「ありがとう」
セリストは頭を下げると、自身の首にかけた。
ロリーネは、手際よくケースに調剤箱をしまうと、立ち上がり、部屋のドア前で振り返った。
「セリスト様……?」
「どうした?」
ロリーネは、恥じらいがちに目を伏せた。
「あなたをここまで本気にした彼女は、きっと、とても素敵な方なのでしょうね。ご武運を」
そう言うと目を伏せ、足早に部屋を出て行った。
それからのセリストは、名前をセリスと名乗るようになった。
屋敷でも、これまでの客室に住むのをやめて、敷地の離れにある、20人程が寝泊まりする使用人たちの住居へ転居した。
使用人たちの部屋は、飾り気のない小屋みたいな所で、食事も寝所も一緒だった。
しかし、こうすることで、セリストは使用人たちの粗野な言葉遣いや仕草、癖などを身につけることができた。
だんだんと、軍人のセリストは、飲んだくれの、口が悪い、不真面目な従者、セリスになったのである。
それから、三ヶ月あまり経った。
オルトランから、神官庁からクララの派遣が決まったことを知らされた。
オルトランは、神官庁の役人に神官の補佐役として、セリスを推薦し、何度も根回しをして採用してもらうことができた。
イードに出発する朝、セリスは大聖堂前の鉄扉の前で、馬車を停めて、クララを待っていた。
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