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それから、ドアごしから、声がひびきわたった。
「すみません。そこのお客さま、サウナをひとりじめするのは、やめてください。それから、アヒルのビニール人形はぜんぶ弁償してもらいますからね」
「なんだと、客に向かって、なんだ、この口のきき方は!」
男の太くて暗い怒鳴り声がした。
そして、『ガシャン!』と、投げた水桶がタイルに当たる物音がした。
「乱暴はおやめください」
「オレをおこらせやがったのはおまえだ。おしおきしてやる。この秘伝のプロレス技を受けてみるがいい」
「キャー! 何をするの。痛いわ。手を離して。離してください」
ユカリさんがマジにあぶない。
ぼくはキョロキョロあたりを見渡した。すぐ助けたいけど、このままのぼくが行ったら、鉄腕キッドだってバレてしまう。
すると、カウンターの後ろの壁に、赤いふんどしが、古びた額に入れられて、かざってあるのに気づいた。『初代店主、安藤ヒコ左衛門』とか、かいてある。
「痛い! 腕がもげそう。あっ、く、くうっ」
ユカリさんの苦しそうな声がもれてくる。
時間がない。ぼくは、いそいで、椅子に上って額からふんどしをうばうと、服をぬいだ。
「すみません。そこのお客さま、サウナをひとりじめするのは、やめてください。それから、アヒルのビニール人形はぜんぶ弁償してもらいますからね」
「なんだと、客に向かって、なんだ、この口のきき方は!」
男の太くて暗い怒鳴り声がした。
そして、『ガシャン!』と、投げた水桶がタイルに当たる物音がした。
「乱暴はおやめください」
「オレをおこらせやがったのはおまえだ。おしおきしてやる。この秘伝のプロレス技を受けてみるがいい」
「キャー! 何をするの。痛いわ。手を離して。離してください」
ユカリさんがマジにあぶない。
ぼくはキョロキョロあたりを見渡した。すぐ助けたいけど、このままのぼくが行ったら、鉄腕キッドだってバレてしまう。
すると、カウンターの後ろの壁に、赤いふんどしが、古びた額に入れられて、かざってあるのに気づいた。『初代店主、安藤ヒコ左衛門』とか、かいてある。
「痛い! 腕がもげそう。あっ、く、くうっ」
ユカリさんの苦しそうな声がもれてくる。
時間がない。ぼくは、いそいで、椅子に上って額からふんどしをうばうと、服をぬいだ。
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