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「なんで? どうかしたの?」
「あのね、今、マナーのすごく悪いお客さんが来てるの。アヒルちゃんたちはプロレス技でつぶされちゃった。サウナは、ねころんで、ひとりじめされちゃってる」
「なんだって?」
「だから、サウナはやめて。今、鉄腕キッドがいてくれたら、どんなに助かるかしら」
「キッドなら来てくれるはずさ」
ぼくは言いかけて、ハッとした。
そうだ、ぼく、たった今、コスチュームをランドリーに入れたばかりだったんだ。顔を隠すための仮面はバッグにあるけど、それだけだと、キッドの姿にはなれないし。こまったな。
「鉄腕キッドがいなくてもかんけいないよ。ぼく、サウナにはぜったい入るし」
「えっ? なんで?」
「だって、ぼく、まちがっていることはゆるせないんだ。それが正しいとみとめさせたら、本当の負けになるから」
ユカリさんは、はじかれたように顔をあげた。それから、ゆっくりうなずいた。
「そう。そうなのよね。わたし、まちがえてた。悪いことをゆるしちゃったわたしこそ、いちばん悪かったんだよね」
「あの、ユカリさん?」
ユカリさんは立ち上がると、にぎりこぶしをつくった。
「わたし、まけないわ。ちゃんと注意してくる。君はあぶないから、ここで待っててね」
「えっ、でも、鉄腕じゃないユカリさんは、本当にあぶないよ」
ぼくは止めようと、うでをつかもうとした。
でも、とどかなかった。ユカリさんは、まっすぐ男湯に駆け足で入っていった。
「あのね、今、マナーのすごく悪いお客さんが来てるの。アヒルちゃんたちはプロレス技でつぶされちゃった。サウナは、ねころんで、ひとりじめされちゃってる」
「なんだって?」
「だから、サウナはやめて。今、鉄腕キッドがいてくれたら、どんなに助かるかしら」
「キッドなら来てくれるはずさ」
ぼくは言いかけて、ハッとした。
そうだ、ぼく、たった今、コスチュームをランドリーに入れたばかりだったんだ。顔を隠すための仮面はバッグにあるけど、それだけだと、キッドの姿にはなれないし。こまったな。
「鉄腕キッドがいなくてもかんけいないよ。ぼく、サウナにはぜったい入るし」
「えっ? なんで?」
「だって、ぼく、まちがっていることはゆるせないんだ。それが正しいとみとめさせたら、本当の負けになるから」
ユカリさんは、はじかれたように顔をあげた。それから、ゆっくりうなずいた。
「そう。そうなのよね。わたし、まちがえてた。悪いことをゆるしちゃったわたしこそ、いちばん悪かったんだよね」
「あの、ユカリさん?」
ユカリさんは立ち上がると、にぎりこぶしをつくった。
「わたし、まけないわ。ちゃんと注意してくる。君はあぶないから、ここで待っててね」
「えっ、でも、鉄腕じゃないユカリさんは、本当にあぶないよ」
ぼくは止めようと、うでをつかもうとした。
でも、とどかなかった。ユカリさんは、まっすぐ男湯に駆け足で入っていった。
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