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第9章:再びの対峙
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王妃様の快復を讃える祝典の日。
王城は昼から貴族たちで賑わい、夜には式典と晩餐が華やかに催されました。わたしも“香りの女官”として香の設営を任され、式典前の大広間で忙しく立ち回っていました。
「これが“暁花”の香……まるで星のように、場を落ち着かせるのね」
貴族たちが小声でささやくのを耳にしながら、心の中には静かな誇りが芽生えていました。
もう、わたしは昔の“無能な香香士”ではない。そう思えていたのです。
けれど――。
「まさか、君が本当にここまでのし上がるとは」
聞き慣れた、でも聞きたくなかった声。
振り向けば、エリオット・グレイヴァルドが、涼しげな顔で立っていました。
以前よりも洗練された装い。社交界に完全復帰した彼は、何もなかったかのようにわたしを見下ろしていました。
「香りで王妃を癒すとは、なかなか。伯爵家にも真似できぬほどの“技”を手に入れたようだ」
「もう、過去のことです。わたしにとって、あなたはただの“香りを知らぬ人”です」
わたしは静かに言いました。
心に波は立っていましたが、それを香のように落ち着かせ、毅然とした声で。
「……君は、僕を恨んでいるか?」
思わぬ問いかけに、わたしは一瞬言葉を失いました。
そして、微笑んで答えました。
「いいえ。あなたのおかげで、香りの“価値”を見つめ直すことができました。だから――感謝しています」
その答えに、エリオットはしばらく無言でした。
そして、グラスの中のワインをゆっくり揺らしながら、苦笑しました。
「惜しいことをした。君の香りは、今や国の宝だ。……王子に渡すには、もったいない」
その瞬間。
リアン王子が、静かにわたしの肩を抱き寄せました。
「彼女は、僕の未来です。もう二度と、傷つけさせません。私と結婚してください」
その手から、香り以上に強く、真っすぐな想いが伝わってきました。
あの日、冷たく破棄された過去が、香りに包まれて溶けてゆく。
過去を否定するのではなく、香りの記憶として受け止めるように。
「はい! 私でよろしければ、喜んでお受けいたします」
*
エリオットは沈黙したまま、わたしたちの様子を見ていました。
そして――わたしを、過去ではなく“今のわたし”として見つめているような、そんな眼差しを残して去ってゆきました。
(香りは、時を超えて、想いを紡ぐことができるんだ)
だからこそ、どんな過去も、香りによって静かに癒されていく。
わたしは王子さまの手を握り返し、そっと微笑みました。
「わたしは、もう迷いません。香りで、あなたの未来を包みたいんです」
*
その晩、暁花が一輪、音もなく咲きました。
わたしの香りと想いが、静かに王城の夜に広がっていったのです。
王城は昼から貴族たちで賑わい、夜には式典と晩餐が華やかに催されました。わたしも“香りの女官”として香の設営を任され、式典前の大広間で忙しく立ち回っていました。
「これが“暁花”の香……まるで星のように、場を落ち着かせるのね」
貴族たちが小声でささやくのを耳にしながら、心の中には静かな誇りが芽生えていました。
もう、わたしは昔の“無能な香香士”ではない。そう思えていたのです。
けれど――。
「まさか、君が本当にここまでのし上がるとは」
聞き慣れた、でも聞きたくなかった声。
振り向けば、エリオット・グレイヴァルドが、涼しげな顔で立っていました。
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わたしは静かに言いました。
心に波は立っていましたが、それを香のように落ち着かせ、毅然とした声で。
「……君は、僕を恨んでいるか?」
思わぬ問いかけに、わたしは一瞬言葉を失いました。
そして、微笑んで答えました。
「いいえ。あなたのおかげで、香りの“価値”を見つめ直すことができました。だから――感謝しています」
その答えに、エリオットはしばらく無言でした。
そして、グラスの中のワインをゆっくり揺らしながら、苦笑しました。
「惜しいことをした。君の香りは、今や国の宝だ。……王子に渡すには、もったいない」
その瞬間。
リアン王子が、静かにわたしの肩を抱き寄せました。
「彼女は、僕の未来です。もう二度と、傷つけさせません。私と結婚してください」
その手から、香り以上に強く、真っすぐな想いが伝わってきました。
あの日、冷たく破棄された過去が、香りに包まれて溶けてゆく。
過去を否定するのではなく、香りの記憶として受け止めるように。
「はい! 私でよろしければ、喜んでお受けいたします」
*
エリオットは沈黙したまま、わたしたちの様子を見ていました。
そして――わたしを、過去ではなく“今のわたし”として見つめているような、そんな眼差しを残して去ってゆきました。
(香りは、時を超えて、想いを紡ぐことができるんだ)
だからこそ、どんな過去も、香りによって静かに癒されていく。
わたしは王子さまの手を握り返し、そっと微笑みました。
「わたしは、もう迷いません。香りで、あなたの未来を包みたいんです」
*
その晩、暁花が一輪、音もなく咲きました。
わたしの香りと想いが、静かに王城の夜に広がっていったのです。
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